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とりあえず、お邪魔虫は帰ります

「おい、シエラ!一体何が……」


コーカスからシエラが保健室で絡まれているらしい、と連絡を受けたとトーカスから聞いたエディは、授業が終わると同時に、慌てて保健室へとやってきていた。


「逃げないで、エディ様……」


目の前に広がる光景を思わず顔を引きつらせて、そっとドアを閉めようとしたところ、シエラがドアをガシッと止めて、物凄い形相でエディに縋ってきたので、彼は小さくため息をつきながら、保健室の中へと入った。


「……それで、これは一体、何がどうなってるんだ」


答案を回収し終えたリオとシエラは、ノア・ベルフォードの様子を見るために保健室へとやってきたところ、彼を治癒するためにと来ていたシシィと彼のイチャイチャ現場を目撃。

シシィとの時間を邪魔されたことに怒った彼が、怪我をさせたことを理由にシエラに謝罪を要求。

シエラはそもそもの原因はノアの行動であることを理由に拒否。

彼がシエラに対してまた、不敬だなんだと怒鳴り喚き散らし始めたところに、エディが登場。

という状況をササっと説明すると、物凄く面倒くさそうな表情を浮かべながら、エディは来るんじゃなかった、と心底後悔した。


「まずは事実確認からだ。ノア・ベルフォード、君はさっきの試験の途中で中座をした、というのは事実か?」


「はい、腹痛のため、中座しました」


「では、中座した時に、自身のロッカーで何をしていた」


「いえ、私はロッカーには行っていませんよ」


「え?」


ノアの言葉に、シエラは思わず反応する。


「だが、ロッカーの前で倒れていた、と聞いているが」


「それは、そこの魔物が突然襲い掛かってきたせいですよ。たまたま、驚いて倒れたのがロッカーの前、というだけで」


「なるほど」


エディはシエラの方を向き、今度はシエラに同じように質問をしてきた。


「ノア・ベルフォードの言っている内容について、何か反論はあるか?」


「……彼は教室を出た後、トイレに行かず、ロッカーを漁っており、その行動を不信に思い、監視役としてついて行ってたコーカスが声をかけたところ、彼が攻撃をしようとしてきた為、威嚇を行い、彼がそのまま失神してしまった、と聞いています」


「……全然違うじゃないか」


「そうですね……」


「ボルトン様!?こんな平民の言うことを信じるんですか!?」


査定内容に納得がいかなかったり、依頼内容・報酬が規定を満たさないという理由で受けてもらえなかったりする際によく言われる台詞ナンバー1だなー、なんてことを思っている時だった。


「あのぉ……」


ここからどう収拾をつけようかと頭を抱えているエディに、シシィがこてんと首を傾げながら声を上げる。


「なんでそんな細かくわかるんですか?普通、実際に見てなきゃわからないですよね?そんな、魔物の考えてることとかがわかるスキルがあるなんて、聞いたことないですし」


シシィの言葉に、ケロッとした表情で、コーカスが答える。


「話せるからだが」


「…………え!?」


コーカスが喋ったことに驚いて、シシィは目を丸くする。


「し、喋れる魔物なんて聞いたことがない!何か怪しいことをお前がしているんじゃないのか!?そもそも、ギルドの職員が、なんで魔物を連れて学園に居るんだ!」


そもそも、コーカス達が喋れるという点についてはシエラは関係がない。

学園に彼女が居るのは仕事のためであり、コーカス達は彼女の従魔なので一緒に連れてきているのはごく普通のことである。

シエラは許可もなく勝手に学園に入り込んでいるわけでもないし、コーカス達も理由もなく連れてきているわけでもない。


「なんで、と言われましても……」


ただ、この手の人間に何を言っても、納得はしてくれないことをこれまでの経験上で嫌というほどシエラは知ってる。


(さて、どうすればこの場が収まるかな……)


なんて、暢気に考えていた時だった。


「シシィ!保健室に居ると聞いたが、体調でも悪いのか!?」


「あれ?マーカス殿下?どうしたんですかー?」


ドアがバン!と勢いよく開く。

そこにはマーカスの姿があった。


混乱したこの状況の中、さらなる珍客の姿に、エディとシエラは『お前は今お呼びでない』と心の中でシンクロして叫び、ノアは、それまでシシィを独り占めしていたところに突然現れた彼女の本命に、心の中で盛大に舌打ちをした。


「シシィ、大丈夫かい!?」


「え?あ、私は大丈夫ですよ、殿下。その、ノア君が倒れたって聞いたから、私が治癒してあげようと思って」


「っ!あぁ、シシィ。本当に君は、優しい子だね。まるで天使のようだ」


「ふふっ……そんな、大袈裟ですよ。お友達が怪我したら、誰だって心配するに決まってるじゃないですか。……あれ、殿下、もしかして私のこと心配して……?」


ポッと頬を赤らめてもじもじしながら聞くシシィに、マーカスはふいっと顔を少し背けながら答える。


「そりゃ……君が保健室に行った、なんて聞いたら、心配になるに決まってるじゃないか」


(一体、何を見せられているんだろうか。)


シエラは死んだ魚のような目で、目の前に広がる光景を眺めていた。

突然のマーカスの登場により、保健室の中にはまるで二人しかいないような世界が広がり、その二人を悔しそうに見つめるノアは、すっかりリオやシエラ達の存在を綺麗に忘れ去っているようだった。


「……取り合えず、彼ももう、体調に問題はないようなので、我々は失礼してもいいですかね、エディ様」


シエラが小さくエディに言うと、そうだな、とエディも頷いた。


「リオ先生、行きましょう」


「え?あ、はい、そうですね」


この場に居ても仕方がないことはリオも察していたので、ノアに向かって、小さく頭を下げた。


「試験の監督官が急に変わってしまったことについては申し訳ないと思います。体調も問題ないようですので、私はこれで失礼しますね」


リオの言葉は彼には全く届いていないようだったが、二人の世界が広がる保健室に彼を残したまま、三人と二匹は後にしたのだった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字につきましても、適宜修正いたします。いつもご報告いただきありがとうございます。

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