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予定変更により

翌日。

シエラはこの日、中央ギルドに出勤せず、エディと一緒にコーカス達を伴って学園へとやってきていた。


「今頃、中央ギルドは大変なことになってるだろうな」


「……そうかもしれませんねぇ」


エディの言葉に、シエラはまるで他人事のように答える。


「元凶なのに冷たい反応だなぁ」


ケタケタと笑いながら言うトーカスに、シエラは少しムッとした表情になる。


「元凶だなんて人聞きの悪い。そもそも、管理が杜撰だった結果、ああいうことになったってだけじゃない。今回のきっかけは私でも、原因は私じゃない」


ロウと一緒に備品調査をしていたところ、日付がもう変わろうか、というところで、まだ帰っていないことに気付いたミュシカが様子を見にきたのだが、その時点で発覚していたとんでもない数の帳簿と実在庫の差異に備品の劣化等々を知った彼女は、慌ててアオの元へ報告。その結果、今日は総務職員総出で全備品のチェックが行われることが決定し、今日は中央ギルドが大混乱に陥ることが予想されたため、シエラは急遽、数日後に予定していた学園側との打ち合わせを前倒しで行うことになったのだった。


「それにしても、なんで私が一緒にエディ様と登校する羽目になってるんですか……」


今日の打ち合わせの予定は午後からで、午前中はそのための必要書類の最終チェックをゆっくり行ってから、学園へは向かおうと思っていたのだが、どうせ学園に行くのなら、一緒に行って、向こうでチェックすればいいじゃないか、というエディとトーカスの言葉によって、シエラは今、彼らと一緒に学園にやってきていた。


「いいじゃねぇか。そもそも、俺の主人は一応シエラなわけだし、一緒に行動すれば手続きやらに面倒がなくていいだろう?」


「まぁ、それはそうなんだけどね……」


小さくため息をついたところで、学園の門の前に到着する。


「とりあえず、まずは私は学園長のところに挨拶に行かないとなんだけど……学園長室ってどこにあるの?」


シエラが少し遠くに見える、モルトのギルドとは比べ物にならないほど大きくて豪華な建物を、死んだような目で見つめながら聞くと、エディが案内するよ、と苦笑した。


「……エディ様?」


エディの後について校舎へと歩き出した時だった。

後ろから不意に、彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「?」


振り返って声のした方を見ると、そこには綺麗なブロンドヘアが太陽の光で輝いて見える美少女が立っていた。


(わぁ、お人形さんみたい。すっごい綺麗な子だなぁ)


暢気にそんなことをシエラが思っていると、隣に居たエディの体が一瞬強張った。


「やぁルディ。おはよう。今日は早いんだな」


エディはそう言って、すぐになんでもなかったかのように、にこっと微笑みかけながら、彼女にの方へと移動する。


「……彼女はエディの婚約者のルディア嬢だ」


トーカスが小さくシエラに耳打ちする。

シエラは、彼女が例の、と、呟いて二人の方を向いた。

が。

ふと、自分の今の状況が、とてつもなく彼女の誤解を生む可能性があるのではないか、という疑念が、沸き起こった。


(待って、傍から見たら、何だあいつ、公爵家子息(エディ様)と一緒に登校してきやがったぞ、ってなるんじゃ……!?)


エディもそのことに気づいたからなのか、彼女からシエラが見えないように、シエラと彼女の間に位置取っているように見える。


「……わ、私、このまま先に学園長のところに行くから、後はよろしくね、トーカス」


「あ、ちょ、シエラ!?」


エディとシエラの他にも、もちろんハルとニュークも一緒に居た。

なので決して二人きりだとかそういうわけではないのだが。


(誤解を生むような余計な真似は極力しないに限る……!)


シエラはそう思い、慌ててコーカスを連れて、校舎へと移動した。


「……あの、先ほどの方は……?」


ルディアが去っていくシエラに気付いてエディに聞く。


「あぁ、彼女は今度の討伐訓練の件で来た、()()()()()()職員だよ。学園長室がわからないって言ってたから、説明してたところなんだ」


少し前に、ルディアからエディが実はシエラに好意を寄せている、などというあらぬ疑惑をかけられた為、彼女がそのモルトの職員である、ということは絶対に知られてはいけないと肝に銘じながら、エディは顔に笑顔をべったりと張り付けて答えた。


「まぁ、そうでしたの。申し訳ございません、エディ様」


うっかり邪魔をしてしまったのだと思ったルディアは、少し落ち込む。


「いや、気にすることはない。場所の説明は終わっていたから、問題ないよ」


嘘である。

ぶっちゃけ、場所の説明はされていないので、シエラはこれから、学園長室を探してさまようことが確定しているので、問題は大ありだった。


「そうなのですか?それでしたら安心いたしました」


ホッとした表情を浮かべるルディアに、こいつ、すらすらと息をするように嘘つくな、とジト目でエディを見るトーカスと、そんな目で見るなと心の中で思いながらも、ニコニコと笑顔を絶やさないエディ。

そしてその様子が面白くて、必死に笑いをこらえているニュークと、それを窘めるように睨みつけるハル。


「あぁ、そうだ。今日は午後から、さっきのギルド職員と打ち合わせがあるから、すまないが昼食は一緒に取れそうにないんだ」


申し訳なさそうにエディが言うと、ルディアは少し残念そうにしながらも、わかりました、と頷いた。


「また、お時間がある時は、昼食をご一緒できれば嬉しいですわ」


「ああ、そのときはまた、声をかけるよ」


「はい、ありがとうございます」


彼女は少し頬を赤らめながらも小さく頭を下げると、それでは、と言って、校舎の方へと歩いて行った。

少し先にいた彼女の友人が声をかけてきたようで、彼女は挨拶を交わし、楽しそうにお喋りをしながら校舎へと向かって行くのを、エディはほっと胸を撫でおろしながら見送った。


「……気にすることはない。場所の説明は終わっていたから、問題ナイヨ」

「本当に申し訳ないと思ってるからやめてくれ!!!」


トーカスがエディの真似をして揶揄ってくるので、トーカスをガシッと掴んで彼の体をゆっさゆっさと揺らす。


「いやぁ、エディはすごいなぁ、あんなにすらすらと嘘がつけるとは」


ニヤニヤと笑いながら言うトーカスに、エディはぐぅ、と呻く。


「し、しょうがないだろ。ただでさえ変な噂がたってて、ルディがその噂のせいで変な勘違いしてたんだ。これ以上こじれたらややこしくなる」


はぁ、と特大のため息をつくエディに、トーカスはポンポン、と肩を叩いた。


「まぁ、少し不憫だなと思わなくもないから、シエラには今ついた嘘は黙っててやるよ」


「助かる……」


はぁ、と肩を落とすエディに、トーカスは翼でグッとサムズアップしながら続ける。


「俺的には面白かったからな!今後も頑張れ!」


「鬼かよ……」


面白がるトーカスに、エディはがっくりと項垂れたのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字につきましても、適宜修正いたします。いつもご報告いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
シエラは果たして学園長室までたどり着くことができるのでしょうか? また、トラブルを見つけてきそうです笑
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