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予定変更

何事もなく、無事に一夜が明け、お互いに特に警戒中に問題がなかったことを確認したシエラ達は、昨日と同様に、周囲の探索を開始した。探索は昨日とはそれぞれ違うエリアで行い、昨日の範囲は念のため、サクラとラピにさらっと再確認をさせたが、結局、昨日同様、特にこれといった問題は見当たらなかったので、一行はそのまま街へと戻った。


シエラ以外のメンバーは、そのまま屋敷へと帰ったのだが、シエラは一度、ギルドへと立ち寄った。

ギルドの中は、依頼の報告などに来た人たちや、素材の売買に来た人たちでにぎわっている。


「あれ、シエラさん??」

「あ、ロウさん。お疲れ様です」


なんでギルドに居るの?と不思議そうにシエラを見つめるロウに、シエラは苦笑いしつつ、アオが執務室にいるかどうかを尋ねた。


「あぁ、ギルドマスターならちょうどさっき戻ってきたところだから、たぶん執務室に居ると思うよ」


「ありがとうございます」


お礼を言って、シエラはアオの執務室へと向かう。


「すみません、シエラです。報告に上がりました」


執務室のドアを軽くノックして声をかけると、中から『どうぞ』という返事が聞こえてきたので、シエラはドアを開けて、失礼します、と中に入った。


「……お前、こっちではそれができるのに、なんでウチだとできねーんだよ」


「え……??ジェルマさん??」


小さく頭を下げて中に入ると、そこには見覚えのある人物が、ふてくされたような表情を浮かべながら、腕組みをしてシエラの前に立っていた。


モルト第一ギルド(うち)じゃ何度言ってもノックしない、声をかけない、突然入ってくる、返事を待たないから、てっきりお前はそれができないもんなんだとばっかり思ってたぞ」


「う……一応、気を付けてはいるんですよ、これでも……あ、そんなことよりアオさん、調査報告と今後についてご相談したくて、今お時間大丈夫でしょうか?」


バツの悪そうな表情を浮かべながら、シエラは話題を変えようと、アオに話しかけると、構わないよ、とアオはにっこりと笑って頷いた。


「――――というわけで、結局、バジリスクの痕跡は今日の調査でも確認はできませんでした」


「ここまで全く気配がないとなると、バジリスクが持ち込まれるか、もしくはバジリスクの話をしていた令嬢の勘違いかのどちらかの可能性が高そうだね」


シエラの報告を聞き終えたアオは、ふむ、と腕を組んで呟く。


「結局、やっぱりバジリスクは出ませんでした、であればいいんですが……」


「そうでなかった場合、とっても困ったことになるからね」


「はい……」


思いきり肩を落とすシエラに、アオはパン、と両手を叩いて、にっこりとシエラに向かって微笑みかける。


「そこで、だ。今度の討伐訓練なんだけどね?今回、モルトの方からも、人員をアサインしてもらうことにしたから」


「え?」


きょとんとした表情のシエラを見ながら、アオは満足げに頷く。


「ふふ、驚いたかい?ジェルマがここに居るから、もしかしたらバレちゃったかな、と思ったんだけど」


「えっと……?どういう??」


シエラがジェルマとアオを交互に見やると、ジェルマは小さくため息をつきながら、説明を始めた。


「今回、何やらきな臭い動きもある上に、わけのわからないことを言うご令嬢(やつ)まで出てきてるって話だったからな。シエラの担当冒険者を何人か、監督官としてこっちに派遣することにしたんだよ」


「…………あっ!?」


手紙に書かれてあった内容を思い出す。


「こっちの冒険者をシエラが受付するとなると、()()()面倒があるだろ?だが、お前が元々担当している冒険者ってことなら、問題はない。ついでに、今回のタイミングで、査定もしちまえば、ちったぁ仕事も減るだろ?」


「じぇ、ジェルマさん……!!」


そんな気遣い、絶対できない人だと思ってました、ごめんなさい!と心の中で謝りつつも、シエラはジェルマを拝むように見つめる。


「今のところ、ジェルマから聞いてるメンバーは、『剛腕の稲妻』の3人パーティーと『明けの明星』コンビ、それから、ソロですでにこっちに来ているフィーヴと、ヘネシーの合計7名が追加予定になってるから、そのつもりでよろしくね」


「わかりました!……あれ、でも、間に合います?」


王都とモルトはそれなりに距離があるので、行き来するにはある程度時間がかかる。今からならギリギリ間に合わなくはないが、道中で何かあれば確実に間に合わなくなる。

それに、こちらでの受付処理の時間も考慮すると、かなり怪しいところだ。


「あぁ、そこは問題ない。今回は特例で、訓練日の2日前くらいに、ゲートでこっちに送り込むことになってる」


「え、こんな短時間で申請通ったんですか……?」


今回の状況になって、予定が決定されるまでに、そこまで時間はなかったはず。

冒険者のギルド内設置ゲートの使用となると、入り口・出口両方の領主クラスまで承認をもらう必要が出てくるはずなのに、とシエラが驚いていると、当たり前だろう?とジェルマが何をそんなに驚いているのか、と首を傾げた。


「今回の件にはエディが絡んでんだ。王都側の承認なんざ、ある意味通ってるようなもんだったし、モルト(うち)側だって、クロードに言えばすぐじゃねーか」


「……ソウデスネ」

(普通はその上が捕まらないから時間がかかんだよ!)


シエラは心の中で思いきり唇を噛みしめながらも、にっこりと笑顔を浮かべたまま、何とか答える。


「そういうわけで、また忙しくなるとは思うけど、よろしくね?」


「はい、わかりました」


シエラが答えると、そうそう、とアオが思い出したようにシエラに言う。


「明日なんだけど、元々は調査予定だっただろ?」


「はい、そうですね」


そう言えば、明日はどうしたらいいのか聞くの忘れてたな、とシエラが思っていた時だった。


「解体の方は、明日までその予定で調整をしてあったから、明日は出勤したら、討伐訓練に持って行くもののチェックや、備品の確認をしてもらってもいいかな?」


「え、良いんですか!?」


備品チェックは冒険者や依頼人の対応をしたり、解体作業を行ったりすることに比べれば、はるかに楽な仕事なので、シエラは目を輝かせる。


「構わないよ。ただ、元々予定していたわけではないから、一人でお願いすることになってしまうけど、いいかな?もちろん、できるところまでで大丈夫だから」


「はい、問題ありません!」


嬉しそうに頷くシエラを見て、アオはうんうん、と頷く。


「それじゃ、他に何もなければ、今日はこれで上がっていいよ。お疲れ様」


「お疲れさまでした!」


そう言って、シエラはスキップをしながら、アオの執務室を出て行った。


「あいつはほんとに……」


額に手を当てながら、特大のため息を漏らすジェルマの隣で、アオは小さく声を殺して笑っていた。

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字につきましても、適宜修正いたします。いつもご報告いただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
何故出来ないかってそりゃあ日頃の行いとしか。
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