領主とギルマスの密談
新しい期が始まりましたねー。。
色々やることが多くて、目が回りそうです( ;∀;)
現在、魔道具を使用して防音効果をかけられた部屋で、俺は、モルトの領主であり、友人でもあるクロードに詰め寄られている。
「………もう一度、いいか?」
「もういい加減にしてくれよ。さすがの俺でも、これ以上は限界だ」
俺の言葉に、クロードは特大のため息をつく。
ため息をつきたいのはこっちだってのに、全く。
「ほんとに、シエラ嬢が龍種をテイムしたのか?竜種の方ではなく?」
「そうだと、何回言えば信じるんだよ、お前は。俺がこの手のことで嘘なんかついて何の得になるってんだ。つうか、面倒が増えるだけだろうが、んなことしても」
呆れたように答えると、クロードは思いきり複雑そうな表情を浮かべて椅子にドカッと座り込んだ。
「そもそも、龍種なんてお伽噺だとばかり思ってたんだが」
「それは俺も同意する。つぅか、見た目完璧に人だったぞ。本人の申告がなけりゃ絶対にバレないだろうな」
「……本人の詐称、ということは?」
「シエラのスキルボードを確認させてもらった。しっかりと龍種ってなってたから、間違いない」
「確定かよ……」
「最近、妙に当たりを引いてくるとは思ってたが、まさかこんな大物まで釣り上げてくるとは正直、俺も思ってなかった」
龍種なんてものは少なくとも、この数百年、遭遇した、なんて話はおろか、目撃情報すら上がったことがなかった。まぁ正確には、会ったことがあるだとかなんだって話は、時折、耳にすることはあるのだが、大抵がどれも聞いてすぐに嘘とわかるような、酒場で酔っ払いが話している与太話ばかりだ。
「しかし、ほんとに彼女は凄いな。ギルドの職員にしておくのがもったいないくらいだ」
強力なコッカトリス(しかも何羽かは確実にコッカトリスからの進化を遂げている可能性が高い)にシルバーウルフ(に擬態しているフェンリル)、さらにここへ龍種が加わったとなると、もはやその辺の冒険者を遥かに凌ぐ戦力を保有していることになる。
「彼女がその気になれば、この国を制圧するくらい、簡単にできそうだな」
ジェルマはその言葉を聞いて、冗談じゃない、と肩を竦めた。
「やめてくれ。あいつはそんな気、これっぽっちもねーよ」
「悪い悪い、もちろんわかってるよ」
苦笑するクロードに、ジェルマは小さくため息をついた。
「誰が聞いてるかわからねーんだ。いくら魔道具で防音かけてるって言っても、滅多なことは口にしないでくれよ」
「あぁ、ほんとに悪かったよ」
すまなかった、と謝るクロードに、ジェルマはポリポリと頭を掻きながら、それで、と口を開く。
「本題だ。その龍種の件なんだが、身分証を発行しないと今後に問題が出そうなんで、今、手続き用の資料をシエラが作ってるんだが、種族の部分に関して、お前の力を借りれたらと思ってるんだよ」
「あぁ……なるほど」
普通に手続きをして発行をすれば、ほぼ間違いなく、種族のところに『龍種』と表示がされてしまう。そうなれば、たちまち王都に報告が行き、フィーヴを、下手すればシエラも一緒に、強制的に連れていかれる可能性が高い。そしてその後、どういう扱いを受けるかなんてのは想像に難くない。
さらに困るのが、そうなった際に、フィーヴが王都を、下手すればこの国を滅ぼしてしまう可能性も決して低くないということだ。
「正直、余計な火種を作りたくない」
ジェルマの切実な声に、クロードは少し考えこむ。
もしもこのことを隠していたということがバレてしまった場合。確実に自分の首は(物理的に)飛ぶし、親類縁者の首も(物理的に)飛ぶ可能性が高い。
だが、下手に報告を上げてしまった場合、この国が(物理的に)なくなる可能性が高くなる。
「……仕方がない。こうなったら、彼をこちら側に取り込むか」
はぁ、とため息交じりに呟くクロードに、ジェルマはふいっと顔を背けた。
「俺は一介のギルド職員だからな。お前の決定に従うよ」
「つれないこと言うなよ。俺とお前の仲じゃないか。一蓮托生だろう?」
にやりと笑うクロードに、ジェルマは諦めたような表情を浮かべる。
「まぁ、しょうがねー。正直、それが一番、俺たちにとっても、国にとっても、被害が最小限に抑えられると思うしよ」
苦笑いするジェルマに、クロードはそうだろう?と頷く。
「さっそく、明日にでも王都に行ってくるよ。学園生活が再開したばかりのところ、申し訳ないとは思うんだが、長期休暇に入るのを待ってるわけにもいかないしね」
「まぁ、これもある意味「務め」だからな、しょうがない」
まるで自分たちのこれからの行いに言い訳するように、二人は頷きあいながらも呟く。
「とりあえず、彼に話をしてから発行したほうがいいと思うから、少しだけ待っててくれると助かる。そうだね……種族的には、竜人族あたりでどうだろう?」
「あぁ、良いと思う。数は少ないが、別に珍しい種族ってわけじゃねーし、見た目が人族に近い奴らも結構多いからな」
「よし、ならその方向で話は進めてくるようにするよ」
こくりと頷くクロードに、ジェルマは悪いな、と苦笑した。
「それじゃ申し訳ないが、すぐに動けるよう、必要になりそうなものの準備だけは進めておいてくれるか?」
クロードに言われて、ジェルマはわかってる、と頷いた。
「すでにシエラが急ぎで書類関係を準備してるから、問題ない」
その答えに、クロードは羨ましそうにジェルマを見た。
「いいなぁ、本当に優秀な部下だね。是非、うちの秘書に」
「シエラはやらんぞ」
ジェルマはクロードの言葉を遮って断る。
「最後まで聞いてくれてもいいじゃないか」
呆れたような表情を浮かべるクロードに、ジェルマはジト目で返す。
「お前んとこには優秀は執事様がついてるだろうが。うちの優秀な人材を引き抜こうとしないでくれ。あぁ、どうしてもシエラに声をかけたいって言うなら、まずは第一ギルドの職員、増やしてくれよな」
そう言って、ジェルマは席を立つ。
「人を増やしてくれって言うのは、ずっとこっちからも中央へ依頼は上げてるんだよ」
対応をしてないわけじゃないんだよ、とクロードが肩を竦めると、ジェルマは苦笑しながら、わかってる、と扉に手をかけながら答えた。
「ま、そう言うわけで、これからも声は上げ続けてくれよな。それじゃ、また進捗があったらすぐに連絡くれ」
「あぁ、わかったよ」
そう言って、ジェルマはひらひらと手を振りながら、部屋を出た。
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