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色々やることがありました

「おーい、シエラ。着いたぞー?」


地面にドサッとシエラを下ろすと、コツコツと頭を突いてトーカスはシエラに声をかけた。


「うぅ………」


もぞりとシエラが動いたので、トーカスは相変わらずだなぁ、と小さく呟く。


「門のところまで着いたぞ?ジェルマがフィーヴを連れて、入る手続きやってるとこだ」


もう一度、コツン、とトーカスがシエラを突いたその時だった。


「んんん!?」


突然、シエラの腕がトーカスの嘴に伸びたかと思うと、そのままガシッと嘴を開けないよう、思いきり掴み上げてきた。


「毎度毎度……何べん言わせれば気が済むのかしら?」


嘴を掴んだまま、ゆらり、とシエラは起き上がると、カッと目を開いて、トーカスに説教を始めた。


「いつも言ってるでしょう!?あんな速さで、上下しながら移動されたらたまらないって!酔うし、怖いし、落ちたら死ぬの!!!」


シエラが叫ぶと同時に、トーカスは思いきり体を揺すって、シエラの手から、何とか嘴を開放する。


「はぁ……いや、でも、今回はジェルマが先に行ったし、仕方なかった」


「仕方ないことないわよね?別に遅れて到着してもいいじゃない!」


「いやいや、だって、一応俺らはお前の従魔だろ?離れるわけには」


「ならむしろ、なんでジェルマさんの指示に従って、そっちの速さに合わせるの!その理屈で行くなら、合わせるのはこっちでしょうが!」


「でも、ジェルマはお前の上司なわけだしさぁ……」


「なんで主人の仕事の上下関係に気を遣ってんのよ!」


「えぇ……」


トーカスが、良かれと思ってのことだったのに、と言われて、シエラは天を仰いだ。


(ちょっと……従魔が仕事の上下関係(そんなこと)を考慮して行動するなんて、聞いたことないんだけど。主人第一で動くから、仕事の上下関係(そこ)で問題が起こるっていうのは過去に聞いたことあるけど、ほんとに、トーカスってば一体どうなってんのよ……)


チラリとトーカスを見ると、シュンとした様子で項垂れていた。


「う……」


従魔、というか魔獣らしくない考え方をするトーカスがおかしいという考えは間違っていないと思いつつも、落ち込んでいるかのような様子を見ると、確かに、自分のことを考えてのことだと言われてしまうと、あそこまで怒るのは少々ひどかったのでは、とも思い、シエラは小さくため息をついて、次からはほんとにお願いね?とだけ伝えて、今回のことはもう、忘れることにしようと決めたのだった。


「お、起きてるな?フィーヴの手続き、終わったぞ」


ちょうど話が終わったところで、ジェルマがフィーヴを連れて戻ってきた。

無事に手続きが終わったとのことで、ほっと一安心する。


「それじゃ、さっさとギルドへ戻るか」


そう言ってジェルマが歩き始めたので、シエラも慌ててその後に続く。

が。


「はい。…………はい?」


なぜギルドに戻るのかと、ジェルマの言葉の意味が分からず、シエラは歩きながら首を傾げた。


「ギルドに戻る必要、あります?」


そう言ったところで、ジェルマが戻る前に仕事を片付けるとかなんとか言っていたことを思い出す。


フィーヴ(こいつ)のステイタスボードの発行手続き、人がいないうちにやっといた方がいいだろうが。それに、ついでだ。人の姿で居られるんだし、冒険者登録もしておけば、いちいち身分証明にステイタスボードを提示する必要もなくなる」


「あ………」


ジェルマの言葉に、なるほど、とシエラは頷いた。


ステイタスボードの発行は、教会でなければ対応ができない。ただし、再発行については、教会で行う処理の途中まで、例えば、その人の犯罪歴の確認等々についてを、ギルド等、別の施設で代行することが可能だったりする。確認作業を別の施設で代行した場合、その書類を教会へ提出すれば、後はその書類と、教会でのステイタスボードと本人の紐づけ処理を行ってもらうだけで済むので、早く発行してもらうことができる。

ただし、別施設で代行する場合、その分通常かかる費用より割増しでお金がかかるので、その方法を取りたがる人はあまりいない。時間がなく、急いでいる場合等、特別な理由がなければ、この方法を使う人はいない。


「正直、龍種がどういう風に魔道具で出るのかがわからん部分があるからな。街の中に入るには必要なことだったから、賭けに出たが、今回うまくいったからと言って、教会の方でも問題なく処理がしてもらえるかどうかは、正直わからんからな」


「そうですよね」


こればっかりは仕方がない、とシエラは肩を落とした。


「まぁ、うちの職員はみんな口が堅いから、万が一知られたとしても、それを口外することはないと思うが、ただ、気づいたときにどういう反応をするかわからんし、そのせいで、下手に話が広がっても困るだろ?」


「……ですね」


できるだけ人がいない時にやってしまった方がいい、というジェルマの意見に、シエラは同意する。


「もう、流石にみんな帰ってると思うんで、当直担当者に見つからないよう、こっそりやってしまいます。あ、ジェルマさんの執務室、お借りしていいですか?」


どこでやっても一緒かな、とは思うが、ジェルマの執務室なら、防音諸々の魔法が部屋にかけられているので、何かあっても何とかなりそう、と思って、シエラが聞く。


「あぁ、構わん。俺も仕事がまだ残ってるしな」


ジェルマの言葉に、シエラは無言になる。


「なぁ、その手続きってやつは、どのくらいかかるんだ?」


トーカスが聞いてきたので、シエラは古い記憶を必死で頭の片隅から呼び起こす。


「うーん……冒険者登録の方はそんな時間取らずにできると思うんだけど、ステイタスボード再発行手続きの代行処理に関しては、ちょっと資料探してやらないとだから……わかんない」


「え、マジで?寮には戻れるのか?」


トーカスに聞かれてシエラは少しの沈黙の後、小さな声で、さぁ、とだけ呟いた。

その目にうっすらと、涙が浮かんでいるように見えたトーカスは、何も言わず、ただ、小さな声で、お疲れ、と呟いた。

いつもお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字につきましても、適宜修正いたします。いつもご報告いただきありがとうございます。

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