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番外編:1.ロイドが見つけた『おもしれー女』

当作品の人気キャラ、キャリーのその後に触れています。


俺はロイド。

シュルツ商会の会頭の長男だ。

自分で言うのも何だが、俺は恵まれてると思う。

美人のお袋に似たお陰で、女に困った事は無いし、親父の金で上等な教育を受けられたお陰で、知識では負けた事はない。

だけど俺の興味は『おもしれー事』にあった。


きっかけは子供の時、親父に連れられて行ったサーカスだった。

俺はピエロに夢中になった。

こんな『おもしれーモノ』がこの世にあるなんて、と目から鱗が落ちた気になった。

まあ、子供の目の鱗なんて砂粒より小さいものだったろうけど。

俺はピエロに弟子入りしようとした。

だけど、ピエロに

「馬の鞍の上どころか、土の上ですら逆立ちも出来ないお前じゃ無理だ」

と突っぱねられた。

向いてないものは仕方ない。

俺はきっぱり、ピエロになるのを諦めた。


俺は16才でシュルツ商会に入り、親父の下で1年商売を学んだ。

一人で商談をする許可が出ると、俺は「なるべく遠い街に行かせて欲しい」と親父に頼んだ。

親父は呆れた顔をしたけど、俺の頼みを聞いてくれた。


俺は国中を回って、『おもしれー事』を探した。

世の中にはいくらだって、『おもしれー事』があった。

猿回しや猛獣遣い、漫談や他にも語り尽くせないくらい。

だけど、俺は商売の事も忘れなかった。

俺には金になりそうなモノを嗅ぎ分ける嗅覚と、優れた交渉術があった。

俺はその2つの武器を使って、新規顧客をどんどん開拓していった。


俺が20才になった時、親父は

「これからは次期会頭として王都に腰を落ち着け、嫁を取れ」

と言った。

俺は

「商会は弟に継がせてくれ。

あいつは真面目だし、帳簿つけたり商品管理したりは、あいつの方が優れてる」

と言ったが、親父は

「次期会頭はお前だ」

と譲らなかった。

俺は親父に連れられ、上得意の貴族の御屋敷に次期会頭として、ご挨拶回りする事になった。


ケネス伯爵家はそんな顧客の一つだ。

ケネス伯爵家は変わってる。

何しろ、伯爵様の御伴侶は男性だ。

最初は驚いたけど、御伴侶様のお人柄の良さを知り、納得した。

そして、お会いした事はないが、そんな御伴侶様を選ばれた伯爵様も良い方なのだろうと、俺は思っている。


貴族ってのは面倒くさい事が多くて、貴族の夫人にしか出来ない仕事ってのがあるらしい。

御伴侶様も流石に伯爵夫人の仕事をする事は出来ないので、伯爵夫人としての仕事だけして頂く方を奥方としてお迎えしたそうだ。


奥方様はアンガス前伯爵夫人だった方だ。

アンガス前伯爵ってのが酷い男で、勝手に爵位を売り、その金と一緒に行方を晦ませたらしい。

ケネス伯爵様の御友人の御令息である、エルファス侯爵様の夫人がアンガス伯爵令嬢だった関係で、アンガス前伯爵夫人がケネス伯爵夫人として輿入れされたそうだ。


奥方様は正に貴族の御婦人って感じの方だ。

病的に白い肌と、折れそうな程細い体。

いつも自室でお一人で過ごされているらしい。

「奥様‼

お散歩の時間ですよ‼

メイ様から『もやしみたいな人だから、太陽に当てて豆苗みたいにして頂戴』って言われているんですからね‼」

見ると、若い侍女が奥方様を引き摺って歩いている。

おい、奥方様、泣いてないか?


「あの子はキャリーだよ。

奥方様の御令嬢のエルファス侯爵夫人の学友だった子だ」

急に御伴侶様に話し掛けられて、ビビった。

「メイ様、エルファス侯爵夫人に頼まれて、ああして奥方様を散歩に行かせているんだよ。

そうしないと奥方様は一日中、自室に籠もり切りだから。

キャリーは良い子だよ。

仲良くしてやってね」

「は、はあ」

あまりの衝撃に生返事するしかなかった。

俺はキャリーって娘に引き摺られる奥方様を見ながら、『豆苗みたいにしろって、どういう事だろう?』と今更疑問を抱いた。



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