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勇者として異世界召喚されたんだが、巻き込まれて一緒に召喚された人が実はヤバかった件  作者: 鷹沢綾乃
Act.3 深まる謎

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18.破壊工作するぞ!

 見つけたくなかったけど、見つけちゃった軍事拠点らしい場所。

 早見さんはもう、『攻撃一択』だ。もちろん、正面切って突撃なんかしないだろうけど、何らかのダメージを与えてから去るというのは、確定らしい。

 おまけに、土屋さんに声をかけていた。

 土屋さんの土魔法を使えば、潜入出来るっていうんだ。

 みんなで頭をひねって考えたんだが、思いつかない。


 どうした、俺! これでもゲームやアニメ、漫画なんかずいぶん見てただろうが!

 勇者組全員がうんうんうなっていると、早見さんが静かに言った。


 「堀の周囲は土で、壁は石壁だろう? なら、土魔法でいくらでも変形させられるんじゃないかな? 土で橋をかけたり、積んでいる石に穴をあけたりとかね。前に、土壁に穴を開けたことがあっただろう? あれの応用というか、延長線上の話だよ」

 「「「「あ……」」」」


 そういやそうだった。なんでそんな単純なこと、ピンとこなかったんだろう。

 言われてみりゃ、その通りじゃんか。


 「……あぁ……。忘れてた。確かに、土壁に穴開けたっけ……」


 土屋さんが、遠い目になった。

 それに、占領した陣地を、さんざんいじくった(魔改造した)じゃん。あの時、土魔法使いは土壁を盛り上げたり、その内側に足場を作ったりと、いろいろやりまくったんだ。

 それを何で思い出さなかったというか、現在の状況に結びつかなかったのか、俺たち。

 だから早見さんは、俺たちにずっとくっついているんだろうな。

 どう考えても、早見さんが誘導してくれていたから、俺たちは自分たちが不利な状況に陥らずに済んでるんだろうな。

 だって、ラミラ砦の関係者の中に、俺たちを使い倒そうとしようとしてた人がいたはずなんだ。

 その人の思惑に乗せられることなく旅立てたのも、早見さんがうまく立ち回ってくれたおかげだ。

 ……保護者枠かな、きっと。否定しないと思う。


 とにかく、真昼間に吶喊(とっかん)するほど馬鹿じゃないということで、俺たちは近くの藪の中のちょっとした隙間に陣取り、詳しい作戦を考えることになった。

 こんな狭い藪の中なら、まず見つからないだろうから。

 5人が肩寄せ合って何とか座れるくらいの、狭い空間だけど、土魔法で作った小さなかまどで火をおこし、小さなポットでお湯を沸かしてお茶を入れ、保存食をかじりながらの昼食となる。


 早見さんに、以前土魔法で土を変形させたことを言われ、試しに造ってみたっていうかまどが、結構いい感じ。

 ……土魔法、もっと活用していいかもしれない。俺は反対属性の“風”だから、土魔法は苦手だけど。


 「でも、いくら土魔法で地面や石壁を変形させるって言っても、それで潜入なんて、無謀だと思うわ。ちょっと荒っぽすぎない?」


 水谷さんが、当然な疑問をぶつけてくる。

 確かに、そんなことしたら、結構気付かれるんじゃないかって気がする。

 有角族(ホーンド)って、人族より魔法が得意だそうだから、魔法を使ったことに気付かれるかもしれないって、マジで思う。


 「別に、明るいうちにやる必要などないと思っているし、暗くなってから、二手にわかれて行うのがいいんじゃないかと思う」

 「二手に分かれるって、そうでなくても4人しかいないのに、それを分けるっていうの?」


 水谷さん、さらにかみつく。


 「二手といっても、1対3ぐらいだよ。ひとりが注意を引き、残りがその隙にこっそり入り込んで破壊工作をし、速やかに脱出する、という感じかな」

 「なら、誰が単独行動をして、相手の注意を引くというの?」


 水谷さんの追及に、早見さんはさらっとこう言った。


 「風間くんだな。風は、音も操れるはずだ。音は、風に乗って届くんだから。だから、相手の注意を引く音を出して、自分は隠れればいいんじゃないかな」


 それを聞いた途端、3人の視線が俺に集中する。

 ……確かにそれって理屈だけど……俺がやるの?


 「確かに、それならありだよね。それなら単独行動しても、大丈夫そうだもんね」


 土屋さんが、なるほどという顔で俺にニカッと笑いかける。

 火村も水谷さんも、納得というようにうなずいている。

 ……ってことは、俺が相手の注意を引く音を出して、囮になるのは確定ってこと?

 俺は思わず早見さんのほうを見、早見さんまでもうなずくのを見た。


 「大丈夫だよ。いざとなったら、それこそ一目散に逃げればいいんだから」


 あっさり言い切ってくれるな、おい。

 ……まあ、いざとなったら、絶対早見さんがフォローしてくれるだろうなとは思うけど。

 それより、俺特訓しなきゃ。

 相手の気を引く音って、どんな音だ? いっそのこと、明後日の方向から(あざけ)ってやろうか。

 でも、音が聞こえてくる方向を偽らないといけないんだから、それが出来るようにちゃんと感覚をつかんでおかなくちゃ。


 これって結局新しい魔法なんだって気づいたのは、実際にそれが使えるようになってからだった。

 新しい魔法<幻音イリュージョン・サウンド>ってことになったんだわ、それ。

 俺が、<幻音イリュージョン・サウンド>を扱えるようになるまで、2~3日かかった。

 でも、早いほうだと思うよ。

 音の発生源を勘違いさせるような要素も、ちゃんと取り込めたしね。


 ……その間、当然のことながら、近くの藪の中でずっと野宿してましたとも。

 狩りとかも出来ないもんだから、空間収納(イベントリ)の中にストックしてある保存食を消費しながら。

 ……乾燥野菜と干し肉をぶっこんだ煮込みもどきは、まずくはないけどすごくおいしいとは言えないものだったな。まあ、食べたけど。


 そして決行当日。

 まず、髪の色を本来の黒に戻し、クリスに顔の上半分を糸で覆ってもらう。もちろん、中からは結構透けて見えるが、はた目には白い仮面をつけているかのように見える。

 これで、素顔も隠せるわけだ。

 そして、暗くなってからいよいよ本番。


 火村と水谷さん、土屋さんは、それぞれ小さなランタンの中に<光珠(ライトボール)>を封じて持ち、光が周辺に漏れないようにシャッターを絞って行動。

 軍事拠点から少し離れたところで、息をひそめて待機。

 俺はそれを見送った後、例のごとく身体(依り代)を抜け出した早見さんとともに、拠点の反対側に移動。

 俺の<幻音イリュージョン・サウンド>を合図にして、作戦行動が開始される。

 あ~緊張するぅ。


 『落ち着いて。さんざん練習しただろう? もちろん、ボリューム最大限でやるのは初めてかもしれないけど、理屈は一緒だ』


 早見さんが、おそらく俺にしか聞こえない声で話しかけてくる。

 まあ、その通りなんだけどさ。

 俺は深呼吸し、自分の魔力の流れを意識する。

 行くぞっ!!


 ズ ッ ド ォ ォ ォ ォ ン !!!


 とにかく聞いたこともない音を、と思ったんで、爆発音を最大ボリュームでぶちかましてみた。

 当然、俺がいる位置から、結構ずれた位置から聞こえるようにして。

 俺たちは、ドラマやアニメで聞いてるから、そこまで耳慣れない音じゃないけど(実際聞いたら、やっぱりびっくりはするだろうけど)火薬が存在しないこの世界では、ほとんど聞いたこともない音のはず。

 爆音の振動で、空気が震えているように感じた。


 当然、拠点の中はいきなりの轟音に騒ぎが始まっている。

 俺は、もう一発爆発音をぶちかます。


 ド ッ ゴ ォ ォ ォ ォ ォ ン !!!


 騒ぎが、音がしたほうに近づいてくるのがわかった。そろそろ逃げたほうがいいな。

 俺が回れ右をして拠点から離れようとしたところで、遠目に見えていた出入り口の門が開き、中から人が出てくる。あれ、あそこが開くか。ちょっと計算ミス。

 ヤバい。見つかるかも。

 その時だった。


 『逃げるぞ! 悪いが、急ぐからね。声を出さないように!』


 早見さんがいうが早いか、いきなり俺の体が浮いた。


 えっ!? えっ!? えぇ~!?


 あっと言う間に、俺の体はどう考えても10メートル以上浮き上がる。

 何が起こったかよくわからないまま、俺は焦ってじたばたと手足を振り回す。


 『おとなしくしなさい。僕が<念動(サイコキネシス)>で持ち上げたんだ。このまま移動するよ』


 早見さん~~持ち上げるなら持ち上げるって言ってよ~!

 俺のすぐ隣に、半透明で本性を現した早見さんが付き、早見さんの<念動(サイコキネシス)>で引っ張られるようにして、空中移動。

 ロープも何にもなしの、ジップラインみたいな感じ。

 こんな時に、空中散歩なんかしたくなかったよ……


 ……おかげで、簡単に追っ手を()くことが出来たけどさ。足跡なんて、絶対に残らないし……

 どう考えても、人間が走るのよりずっと速いスピードで進んでるけど、俺には辺り一帯真っ暗で、どこをどう通ってるのか全然わからないんだけど……早見さん、大丈夫?

 さっきは、拠点の明かりがあったから、少しは周りが見えてたけど、今は全然見えないんだもん。


 『あのね、僕が闇を見通せないとでも?』


 ……デスヨネ……。

 この人に、一般常識が通用するわけないんだよな……

 で、本当にあっさりと、集合場所の野営地へと戻ってきた。

 早見さんは、そこに横たわっている自分の身体(依り代)に戻る……のかと思ったら、俺を地面に下ろした後、さっとその身をひるがえす。


 『メインの3人の様子を見てくるよ。もし、危なくなっていたら、わからないように介入してくるから』


 早見さん、あっと言う間に姿が見えなくなった。俺を運んでる時と違って、秒速2キロで飛ばしてったな?

 そういや俺は、ほぼ安全圏だけど、ほかの3人は今、どうなってるんだろう……?


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