19.あ~なるほど……
すると、早見さんが俺たちを手招きする。
なんだろうと思って皆で近づくと、連中に聞こえないように小声でこんなことを言いだした。
「いっそ、受けて立った方がいいと思う。実のところ、貴族たちの中には、『勇者召喚反対派』がいるんだ。あの2人は、その派閥に属する者たちだと思う」
え、反対派がいたの?
もしかして、『異世界から勇者を召喚するなんてとんでもない』って人たちがいたわけ?
「言っておくけど、その連中の考えは『どこの馬の骨ともわからない異世界人の勇者なんて信用出来るか!』っていうものだからね」
あ~そっちでしたか……
なんでも、『勇者召喚賛成派』の方が多いけど、『勇者召喚反対派』も決して無視出来ないだけの数いるんだと。
めんどくせぇと思ったのは、どうやら俺だけじゃなかったようで、火村も水谷さんも土屋さんも、ものすごく微妙な顔してる。
「だから、遠慮なく叩き潰してしまったほうがいい。連中の能力値を【鑑定】してみたけど、レベルこそ君たちより上だが、能力値や武器スキルは君たちのほうが上だ。君たちが本気を出せば、圧倒出来る。……君たちが、人間相手に本気で殴り掛かれれば、だけどね」
早見さんが、俺たちの顔を順番に見ながら、言い聞かせるように言う。
……人間相手に、本気で殴り掛かれるか、か……
「でも、どうしてもそれが嫌だというなら、無理には勧めない。ただし、これからのことを考えると、それが出来なければいつか命の危険に直面すると思うよ」
早見さんの言葉に、俺を含めた全員がぎょっとする。
命の危険って……何なの?
「で、どうするんですかねえ、そこでこそこそ顔突き合わせてる勇者たち?」
誰が聞いても嫌味丸出しの声で、バルドア子爵令息がこれ見よがしに言う。
「おう! 受けて立ってやろうじゃねえか!!」
明らかにイラっとした顔で、火村が連中を睨みつける。
それをきっかけに、他の女の子2人と俺も、連中のほうを鋭い目線で見た。
「勇者殿、このような戯言、受ける必要などない」
シャルロッテさんの声がする。
彼女は、挑発に乗ってほしくないようだ。
でも、ここまで来たら、やらなきゃ収まらないって感じになってるんだよな。
で、早見さんに対してやらかして以来、人に対して使ってこなかった【鑑定】を、そこにいる2人に使ってみた。
「フェーヴ・ザイス・グェルデン」
男爵令息(3Lv)
――――――――^
STR(筋力) 63
DEX(敏捷) 66
INT(知力) 58
VIT(体力) 56
MAG(魔力) 50
PER(知覚) 70
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HP 90
MP 77
――――――――
<武器:長剣1Lv>
「ジャン・レーノエ・バルドア」
子爵令息(3Lv)
――――――――^
STR(筋力) 66
DEX(敏捷) 70
INT(知力) 52
VIT(体力) 63
MAG(魔力) 55
PER(知覚) 65
――――――――
HP 85
MP 68
――――――――
<武器:長剣1Lv>
ふむ、なるほど。確かに、俺たちよりレベルは上だけど、能力値や武器スキルは下だな。
ちなみに俺の現在値はこうだ。
「風間 翔太」
異世界の勇者(2Lv)
――――――――^
STR(筋力) 163
DEX(敏捷) 175
INT(知力) 85
VIT(体力) 151
MAG(魔力) 158
PER(知覚) 178
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HP 200
MP 205
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<風の精霊神の加護>
<神聖魔法>
<武器:長剣2Lv>
<風魔法:風の刃1LV>
<武器:短剣1Lv>
でもまあ、この能力値じゃ、俺たちとあまり変わらない能力値だっていう魔族と戦ったら、そりゃ勝てんわな。
ちなみに、早見さんのことは【鑑定】していない。だって、数字が変わってるとしたら身体のほうだけで、本体はやっぱり全部UNKNOWNに決まってるし。
第一、怖いし……




