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イブさんといっしょ! ~乙女ゲー編~  作者: 岡サレオ
乙女ゲー世界編~『剣聖』桃花編
22/26

不知火桃花の復活

 洞窟にパァンと乾いた音が、立て続けに響く。

 その音と共に、【アウッ!】【ヒウゥッ!】と短い悲鳴も聞こえる。

 

 イブがアダムのお尻を叩いている音だ。

 イブを裏切ったアダムは、お仕置きにお尻を叩かれていた。


「どうだ!? わかったか!? 私を裏切ると、どうなるか!」

【ごめんなざーい! もう裏切らないからッ! もうおっぱいなんかに釣られないから許してビッチ!】

「ダメだ! 貴様の尻は百八回叩く! それで煩悩を掻き消すのだ!」

【ぎゃあああッ! もう許してぇえええ!!】


 もちろん、世界最強の暴力系ヒロインがケツを叩くということは、ただ事ではない。

 アダムのケツは約三倍に腫れ上がり、真っ赤になっていた。

 そして、七瀬が時折、塩を塗りつける。

 塩を切らしていたので、わざわざ外から取って来たものだ。


 母なる海から作り出された塩は生命の源であり、海を臨むサンタナ市の特産物だ。

 大抵の怪我なら、塩をかければ治ってしまう。

 この『情熱のサンターナ』においては、塩は回復アイテムに当たるのだ。

 塩をかければ、ケツが三倍に腫れ上がっても大丈夫!


 イブの尻叩きでアダムが失神しそうになると、塩により回復させる。

 失神したくても、『気付け』させられるので、意識を手放せない。 

 そこらへんの見極めは、ヤクザの娘である七瀬の匠の技である。

 回復して縮んだアダムの尻を間髪入れることなく、イブが叩いてすぐに腫れあがる。


「よし、いいタイミングだ! 流石七瀬だ!」

「裏切り者への制裁にしちゃ生易しいくらいだよ! あたいならもっと手ひどく、とっちめてやるよ!」

【アウ!】


 イブが叩き、七瀬が塩でこねる。

 ちょうど餅つきの要領だ。


 そして、それを見ながら、クイナがどんぶり飯を食べていた。

 炊き立てのご飯をかっ食らっていた。


「旨い旨い旨いーッ! メシウマ! おモチも食べたいのね!」

 

 彼女の手には炊き立てツヤツヤのご飯があった。

 最高級米だった。


 イブから強制ダイエットを命じられていたクイナだったが、すっかり綺麗に痩せたので、暴飲暴食が解禁になった。

 しかも、どれだけ太っても、自在に痩せて、しかもエネルギーに変換できるようになった。

 むしろ、暴飲暴食が推奨となったのだ。

 もう誰にもクイナは止められない。

 好きなだけ食べて、寝て、『喰っちゃ寝』ができるのだ。


【おかしいビッチ! なんか前回、最強の敵が登場したような感じだったのに、なんでそこで僕がケツを叩かれるのをおかずにしながら、ご飯を食べているビッチ!?】


「いや、別にあたしはご飯さえ美味しく食べれて、太らなければそれでよいのね。自分の立ち位置にはこだわらないのね。それに今更、伊吹さんには敵対する気なんかサラサラないのね!」


 クイナとしては暴飲暴力の限りを尽くしても、体型を崩さずにチヤホヤされるために、初雪の配下についたのだ。

 アクマの力を自分の物として、自在に使いこなせるようになった今では、初雪に義理立てする必要もない。

 ましてやその背後にいるアクマの真の目的。十万の市民の魂を奪い取るという目的を知った今であっては。


「ふふふ、よくいったぞ、美代子。いや、今はクイナと名乗っているのだったな」

「そうなのね! よろしくなのね!」


 勤勉であることが美徳であるとして、ひたすら自分を成長させてきたイブとクイナとでは真逆の生き方。

 ひたすら怠けて、人間としてダメなラインを遥か下方に限界突破でぶち抜いた末に、一周回って人類の最上位の存在になったクイナという個体は、イブにとっては予想外で実に「……興味深い」のであった。

 そういう意味で彼女は好意的に受け入れられていた。


 イブが叩き、七瀬がこねし、アダム尻。座りしままに食うはクイナといった感じだ。

 正座しながらこの光景を見ていた桃花は呟いた。


「なんなんや、これ……」


 なんなのだろう。


********

 

 百八回尻を叩かれたアダムはようやくイブから許された。

 尻が普段の四倍に腫れ上がったまま、アダムはちゃぶ台の上にうつぶせに放置されている。

 

 そして、イブは勝負に負けた桃花にようやく向き合った。


「さて、桃花よ。貴様の処遇をどうするか」

「……イブ、なんでや!? なんでお前はこんなに強いんや!?」


 桃花は納得がいかなかった。

 この十年間自分は強さの面でイブに追いつくため、そして追い越すために己の全てを賭けてきたのだ。


 一方で、イブはというと、武芸に全てを賭けてきたというわけではない。

 聞こえてくるのは、男を侍らしてチヤホヤさせているという噂ばかりだったのだ 


 それが、蓋を開けてみれば、イブの圧勝だった。

 しかも、悪魔から力を借り、超常的な力をえたにもかかわらずだ。

 これほどまでに力の差を見せつけられてたのだ。

 そのことが桃花には納得いかなかった。

 イブはその気持ちを察し、語りかけた。


「桃花よ。貴様は何のために強くなろうとしている?」

「何のために……、やと?」

「動機を聞きたい。どうして貴様は強くなりたかったのだ?」

「どうしてって。うちはただ強くなりたかっただけや。イブみたいに強く。イブよりもずっと強くなりたかった」

「それがいけないのだ。桃花よ。それが貴様の敗因なのだ」

「なんやって?」

「貴様はただ理由もなく、漫然と力を求めた。強くなるには理由がいるのだ。その理由がただ単に強くなりたいなどという曖昧なものでは、強くなれないのも道理というものだ。必要性がなければ、強い動機付けモチベーションを持つことはできない!」

「じゃあ、イブにはきちんとした理由があるっていうんか」

「ある!」


 イブは立ち上がり、拳を振り上げた。


「私は美少女だ! 世界一の美少女だ!」


「なっ!?」

「どんだけ自信過剰なのね!? とんでもないことを言ってるのね!?」

【あわわ、イブさんがおかしくなったビッチ】

「……姐さんが世界一可愛い顔面の持ち主であることは、あたいは異論はないよ。でも、それが強くなる理由とどういう繋がりがあるんだい?」


 突然のイブの発言に桃花とクイナとアダムは戦慄の表情を浮かべ、七瀬がその大胆発言の真意を問う。

 イブは驚愕の発言を続けた。


「いいか! よく聞け!

 可愛いということはどういうことか!

 それは男から襲われやすくなるという事だ!

 すなわち、私は世界一襲われやすい女であるという事だ!」


【す、すさまじいことをっ!?】

「たしかに、美人に生まれたせいで野盗に村ごと襲撃されたなんて話は、昔からよく聞く話だよ!」


「その通りだ。法による秩序などというものは砂上の楼閣だ。

 核戦争のひとつでも起きれば、たちまちにそんなものは吹き飛び、暴力と略奪が支配する世界となる。

 そんな世界になった時に自分を守るのは、この腕っぷしだけなのだ!」


「な、なんやって? イブはそこまで想定して日々を生きていたんか?」


「男というのは極論から言えば、下半身で生きている。

 どんなに綺麗事で取り繕う男であっても、薄皮一枚はがせば、その内にはケダモノを飼っているのだ。

 ならば、考えなければならない。そして、備えなければならない。

 美少女に生まれた以上、その身を守る暴力を身に着けるのは乙女としてのたしなみなのだ。

 ならば世界一の美少女として生まれてきた私は、世界一強い男よりも強くなければいけなかった!」


 ちなみにイブが想定している世界一強い男とはすなわち合衆国大統領である。

 彼が一声かければ、世界最強の軍隊がどこまでも執拗に命を狙うのだ。

 故に、イブは一人で大国を相手にすべく、肉体も知能も全てを一秒も無駄にすることなく鍛え上げる必要があったのだ。

 イブがその気になれば、すぐさまに合衆国のコンピュータ回線を全てハッキングし、電力供給システムを全てストップさせ、致死性の細菌や有毒ガスをばら撒き、一夜にして、あの人類最強の国を討ち滅ぼすだけの力量を有している。


 今では、イブはホワイトハウス直通の電話回線がある唯一の個人となった。

 合衆国がイブ個人が持つ脅威が国家と同等と認めた瞬間だった。

 最新の殺戮兵器型護送車ルドルフは大統領からイブへの最大限の親愛を示すための贈り物だったのだ。


 イブの発言を聞いた桃花はうな垂れた。


「……。遠い。うちとイブの間ではそこまで強さを希求する気持ちに違いがあったんや……。これでは最初から勝てるわけなかったんや」

「桃花よ。だが、貴様は今、乙女が強くならなければならない理由を知った。貴様はまだまだ強くなる」

「だが、うちはもう乳がない。こんなうちにはもう魅力がないわ。これでは誰よりも強くあらねばならない理由にはならんとちゃうか」

「それがどうしたのだ? 乳がなくなった貴様は、前よりもずっと美しいぞ」

「……イ、イブ」

「何事にも遅すぎるなんてことはない。今から、始めればよいのだ。一から、いや、乳ゼロから始める乙女ゲー生活を!」

「い、イブ!」


 桃花は泣きながら、イブに抱き着いた。

 イブは桃花の頭をよしよしと撫でる。


 それを見ながら七瀬、クイナ、アダムはほっこりとしていた。


「いい話だなぁ」

「そうなのね」

【レムゥ!】

「姐さんも今の桃花には随分と優しいねぇ」

「多分、あのでかすぎるおっぱいがなくなったからなのね!」

「なるほど」


 泣いていた桃花は少し落ち着いた。

 そこにアダムが水を持って来る。


【ささ、桃花さん、これを飲むビッチ】

「……うん、ありがとう」


 受け取った桃花はそれに口を付ける。


「……甘い」

【砂糖をすこし混ぜたビッチ。ささ、遠慮せずに飲むビッチ】

「うん」


 バケツにナミナミとそそがれていた水を桃花はごくごくと飲む。

 異様な光景だった。


「アダムよ。その水は一体……?」

【これは僕特製の14キロの砂糖を溶かした水だビッチ】


 すると、干からびていた桃花の乳がスポンジのように水分を吸収していき、みるみるうちに糖分が脂肪に代わる。

 そして、立派な、プルンとした重力に逆らう見事過ぎるおっぱいが屹立していた。


【復ッ活!!】

【不知火桃花復活ッッ!】

【不知火桃花復活ッッ!】

【不知火桃花復活ッッ!】

【不知火桃花……】

【不知火……】


 そして、イブが鬼のような形相で、具体的には背中の筋肉が鬼の表情のように隆起して、思いっきりアダムの尻をぶっ叩いたのだった。


 

 

色々とごめんなさい。


次章が最終章になります。

多分、あと四話くらいになるかと思いますので、それまでよろしくお願いします。

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