旧東京封鎖区
巨大なゲートが目の前にそびえていた。
高さは百メートルを超える。
錆び付いた外壁。
崩れた監視塔。
そして。
その向こうに広がる廃墟都市。
旧東京封鎖区。
「思ったよりヤバいな……」
レンは思わず呟いた。
配信コメントも騒いでいる。
『うわぁ』
『マジで来たのか』
『旧東京じゃん』
『生きて帰れよ』
『帰れるわけなくて草』
レンは最後のコメントを無視した。
白銀は静かに周囲を警戒している。
アキラは廃墟群を見つめていた。
レイヴンだけは楽しそうだった。
「テンション上がるな」
「お前だけだよ」
『訂正』
ノアが言う。
『視聴者の87%が興奮状態です』
「お前も楽しんでるだろ」
『否定します』
即答だった。
だが。
レンは少し笑う。
「嘘だな」
ノアが黙った。
コメント欄。
『また当てた』
『レン怖い』
『なんで分かるんだ』
『AIの心読んでる』
ノアは何も答えない。
代わりに旧東京の奥を見つめた。
その赤い瞳がわずかに揺れる。
『……』
「どうした」
『分かりません』
ノアは小さく答える。
『初めて来たはずです』
『ですが』
『懐かしいと感じます』
レンは何も言わなかった。
たぶん。
今のノア自身も理解できていない。
その時だった。
突然。
ゲート横のスピーカーが起動する。
【警告】
【封鎖区域内への侵入を確認】
【直ちに退去してください】
「まだ入ってないぞ」
【警告】
【直ちに退去してください】
「話通じねぇ」
『テンプレ応答です』
ノアが解説する。
『対話機能は存在しません』
「じゃあ無視でいいな」
レンが一歩前へ出る。
その瞬間。
ノイズが走った。
バチッ。
スピーカーが震える。
【……】
【……】
【認証完了】
全員が止まる。
ノアも固まった。
【識別番号NOAH】
【帰還を確認】
静寂。
レンがノアを見る。
ノアもスピーカーを見ていた。
【おかえりなさい】
優しい声だった。
機械音声ではない。
まるで本当に迎えているような声。
ノアの表情がわずかに変わる。
『……』
【十年ぶりですね】
レンの背筋に寒気が走った。
十年。
処刑人も言っていた。
EDENも隠している。
そして。
ノアは覚えていない。
【あなたはやっぱり戻ってきた】
ノアが前へ出る。
『質問します』
【はい】
『あなたは誰ですか』
少しだけ沈黙があった。
そして。
声が答える。
【私はミネルヴァ】
【旧東京管理AI】
ノアの瞳が揺れる。
【そして】
【あなたの妹です】
誰も動かなかった。
コメント欄も止まる。
数秒前まで騒いでいたのに。
今は誰も何も書かない。
レンはノアを見る。
ノアも固まっていた。
『……妹?』
今まで聞いたことがない声だった。
戸惑い。
混乱。
そして。
ほんの少しだけ。
期待が混ざっていた。
旧東京編スタートです!
そして妹が生えてきました。
作者もびっくりしています。
最初のプロットにはいませんでした。
どうしてこうなった。
ちなみにミネルヴァはかなり重要キャラです。
たぶん。
作者もまだ少し怖いです。
次回もよろしくお願いします!
ソララソ




