孤独
天谷はお婆ちゃんとそのチョコのかかったドーナツのお菓子を買い、近くの公園に移動した。
マーガレットは不思議そうに2人の後をついて行った。
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公園ではおじいさん、おばあさんがゲートボールをしていたり体力作りに余念のない中高年の男性が走る姿が目に映る。
平日とあってか公園には小さな子供はおらず、中高年が多く見かけられる。
「お婆ちゃん、ここに座って食べようよ」
天谷は近くのベンチにお婆ちゃんを座らせ、自分は隣に座った。マーガレット、天谷、お婆ちゃんの並びだ。
「あそこのチョコがかかったドーナツはねぇ、あそこにしか売ってないの。だから私はね、いつもあそこに買いに行くの」
「僕もこれ大好きですよ。外はサクサクしてるのに中はトロトロで食感が最高ですよね」
「そうなの!死んだ主人もこれが好きで、死ぬ間際にね棺桶の中にこれ入れてくれって!」
「あはは、そこまで好きだったんですか?」
「でもね、燃えるか分からないからって止められちゃった。主人は甘いものが好きでね、お医者様に止められてるのにいつも言うこと聞かなくてね。私がもうそれ以上食べるのやめなさいって言ったらね。死んでもいいんだって言うの。好きなもの食べて死ねたら本望だって言うのね。私嫌になっちゃって。結局ね、あの人は好きに生きて先にいっちゃったのね」
うんうん、とお婆ちゃんの話を聞く天谷。
マーガレットはお婆ちゃんの話の何が面白いのか、今天谷が何を考えているのか、さっぱり理解できなかった。
天谷がお婆ちゃんの話を面白そうに聞くのもよく分からなかった。お婆ちゃんはそこまで面白い話しはしていない。ただただ、亡くなった主人の話をしているだけだ。
「そうだったんだ、お婆ちゃん。大変だったね」
マーガレットには天谷が本気でお婆ちゃんの話に聞き入っているように見えた。何か、偽善とかではなく本気で聞いているように。
「あんがとね。私の話し聞いてくれて。楽しかったよ」
「そんな、僕の方こそお菓子ご馳走になっちゃって、ありがとうございます」
「私もね、あの中に入っておしゃべりするべきなんだろうけどね」
お婆ちゃんがグラウンドでゲートボールをしている老人の集団を眺める。
「ずっと主人と生きて来たから、今更入りにくくてね。主人があっちに行ってからいきなり動こうにも、なかなか難しいねぇ」
天谷はそれを聞くと、お婆ちゃんからお菓子のレシートをもらい裏に番号を書いた。
「お婆ちゃんの話、面白かったからさ。いつでも聞かせてよ。ここに電話かけてくれたらいつでも聞くからさ」
お婆ちゃんは大切にそのレシートをたたんで、服の内側にそっと入れた。
それなら持って帰っても大丈夫。何の犯罪でもないのだから。天谷は笑ってそう言った。




