憤怒
「な、なんだ!君は一体全体なにを言い出すんだ!」
手を握られたおじさんはそれを振り払う。
「あなた今この女性のお尻触ろうとしていたでしょ!」
「そんなことはない!断じてない!」
なんだ?マーガレットのやつ急にあのおじさんの所に行ったと思ったらなにを言い出すんだ?
停車駅についた電車の扉が開く。
「とりあえず、降りろ!お前濡れ衣だったら裁判して訴えてやるからな!」
マーガレットとおじさん、そして俺とおじさんの前にいた女性がこの駅で降りた。
「一体どうしたんですか?何かありましたか?」
騒ぎを聞きつけた駅員さんもきた。
「この人がこの女の人のお尻を触ろうとしてたんです!」
「触ってねぇよ!」
これはもしかして、マーガレット、また映像見えちゃったのか?
「おい、マーガレットもしかして、そうなのか?」
俺はマーガレットに聞いた。
「そうです。このおじさんがこの女性のお尻を触ろうとしたのを私見えたのです」
「ん?見えたって?触ってなかったの?」
「えぇ、まだ触ってませんでしたわ。でも確かに触る映像は見えたので」
駅員さんが苦笑する。この流れはやばい。おそらくマーガレットはこのジジイが痴漢する映像を見たのだろう。そして触る前に止めた。
しかし、未遂では逆にマーガレットが訴えられてしまう。
「とりあえずお二人とも年齢と生年月日をお願いします」
「鎌田栄治。1980年4月10日生まれだ」
二人が話している間、俺はどうこの難局を乗り切るか考えていた。
「あれはただスマホ弄ってただけだ!尻なんか触ろうとしてねぇよ!駅員さん、こいつがおかしいんだ」
鎌田はスマホを手に持ち興奮して話す。
「お前証拠がないんだったら許さないからな!」
鎌田は饒舌に捲し立ててくる。それもそうか。証拠なしの変な女の子に絡まれたってことで逃げきれそうだからな。
実際は尻触ろうとしたんだろうけどな。マーガレットの映像が間違えていたことはないから。
未遂で終われたのはマーガレットのおかげなのに、こいつ全てマーガレットの虚言として扱うつもりだ。
「駅員さん!俺はこいつ訴えますよ。訳の分からない事で罪人扱いされてたまったもんじゃねぇんだよ!」
鎌田はスマホをベンチの手すりの上に置いた。
引き続きマーガレットを糾弾する。マーガレット、被害に遭っていたであろう女性は俯いたまま何も話さない。
「まあまあ、落ち着いて下さい。お客さん。この子が変なこと言ったのかも知れませんが、話くらいちゃんと聞いて」
「こんな奴の言うことなんか聞く必要ないって!駅員さん。弁護士弁護士。弁護士呼んで裁判だ」
「私見えたんです……この人がお尻を触ってニヤニヤしてる映像が」
「そんなわけ分かんねぇこと言ってないで謝れ!このクソ女!」
「ちょっとお客さん、手ェ出したらダメですよ!」
鎌田がマーガレットに殴りかかろうとする。駅員が間に入り止めようとした時だった。
「じゃあ、この写真はなんなんですかね?鎌田さん」
俺は鎌田がベンチに置きっぱなしにしていたスマホをこっそり奪い何か逆転の目はないか探していた。
するとスマホの中である写真を見つけた。
その写真を見せると鎌田の顔が凍りついた。




