考察2
俺はマーガレットに飛びついた。ベッドに倒れ込む2人。
落ちる電球。バリンと割れる電球。揺れる本棚。冷蔵庫。テレビ。
俺は揺れが終わるまでマーガレットをベッドに押し倒し守っていた。
守りながらも、俺はこんな状況でも、マーガレットのスキルのことを考えていた。
あいつは今、確実に地震が来ることがわかっていた。俺の頭上に落ちてくる本についても完全に言い当てている。
しかしだ。
【なぜ自分の上に落ちてくる電球は分からなかった?】
天谷は高速に頭を回転させた。今までマーガレットが成功してきた未来予知とそうではない未来予知になんらかの法則性があるような気がした。
そして、ある仮説にたどり着いた。その仮説を確かめるべく押し倒しているマーガレットの耳元に囁く。
「なぁ、マーガレット。お前が見えてるその映像はどんな映像なんだ?」
マーガレットは地震に怯えているのか目をギュッと詰まったままだ。
「……なんですか?この揺れは。この国ではこんなことが日常的なことなのですか?」
「いや、そんなことはない。小さな揺れなら結構起こるけど、これくらいの規模の地震はあって年一回程度だよ」
図らずもギュッと抱き抱える形になった2人は揺れが収まるまでしばらく待っていた。
「緊急ニュース速報です。先程東京で震度5の地震がありました。この地震での津波の心配はありません」
緊急ニュースの連続を軽やかな口調で伝える若手アナウンサー。
どうやら地震は治ったようだ。
「マーガレットもう大丈夫だぞ。揺れはおさまった」
「……よかったです」
「なんだ?マーガレット。顔が真っ赤になってるぞ」
「いや……だって……抱きついて……」
「え?なんだって?声が小さくて聞こえないよ」
「天谷様のバカ!なんで分からないのですか!」
マーガレットがベッドに寝たままの状態で怒ってきた。謝ったと思ったら怒ったり、怒ったと思ったら謝ったり。
こいつの方が異常に理解できる点と理解できない点があるなぁ。
「そんなことよりもさ、マーガレット一つ聞きたいことがあるんだ」
「何ですか?聞きたいことって」
むくりとマーガレットは立ち上がる。地震の恐怖もそこまでじゃなかったみたいで安心だ。
「お前が見えてるその映像ってやつ。もう信じざるを得ないんだけどさ」
「まぁ、また当たってましたからね。私も発動条件がよく分からないですわ」
「その映像、もしかして視点はお前視点になっていないか?俯瞰とかではなくて」
マーガレットは少し考える。
「確かに、そうですわ。私が見える映像はすべて私視点からの映像になります」
やはりそうか。だから、マーガレットは俺の頭上に落ちてくる本に気付けたけど自分の上に落ちてくる電球には気づかなかった。
では何故必ず自分視点なのか?
これにも天谷は一つ思うところがあった。彼女の見える映像が彼女視点でしかないという事の理由に。
これを確かめるためにある場所に行きたい。
「なぁ、マーガレット。お前馬は好きか?」