プロローグ
「おい!賢者の知恵!魔王の弱点は何処なんだ」
賢者の知恵、俺がこの異世界にやってきた時について来たチート能力だ。この世の何もかもを把握し、最短ルートを提示し続けてくれる。
「弱点は尻尾の裏です。そこを攻撃するにはまず奴の三回目の攻撃の後腹部に剣術を入れてください。三回目の攻撃の後、コンマ2秒ほどのインターバルがあります」
「よし!分かった!」
この異世界に来て5年、最初は何が何やら分からなかったがこの能力のおかげで道具やあらゆるスキルも難なく手に入ることができた。
俺は魔王の三回目の光線を避け、攻撃する。
「フレイムブレード!!」
腹部への攻撃が直撃した魔王は膝をつき倒れる。
「今です!天谷様!」
賢者の知恵がそう囁く。俺は渾身の一撃をおみまいした。
「これで長かった旅も終わりか……」
「ジャドウウロボロス!!」
巨大な魔王が真っ二つになり、消えていった。
さっきまで薄暗かった空模様が嘘のように晴れて行く。
そうか、やったんだ!ついに魔王を倒したんだ!
****
「おめでとーございますぅ〜天谷様ー」
いやはや、実に最高の気分だ。魔王を倒し、この国の勇者に俺はなったんだ。
両手に絶世の美女。目の前には舌も落ちる絶品の料理と酒。やばい、ここは天国か?
「違います。天谷様、ここはリドラー国でございます。つい最近、あなたが平和をもたらした」
「分かってるって!賢者の知恵よ!こんな時くらいハメはずしてもいいだろ?」
「ハメの外しすぎは危険でございます!天谷様」
「まぁまぁ、そういうなよ、賢者の知恵はちょっと煩いところあんだよなぁ」
俺は今やもうこの国の英雄だ。長年苦しめてきた魔王を倒したのだから当たり前なのだが。
これからは美女を取っ替え引っ替え、毎日贅沢三昧の日々が確約されている。
最高のスローライフが始まるのだ!!
「天谷様、こちら第三皇女のケリー様です」
宴会の最中、執事風の男が連れてきたその女は名をケリーと言った。
「ぜひ、一度この国の英雄にご挨拶がしたいとのことで」
ケリーは照れ臭そうにペコリと頭を下げた。
「わっ、私、天谷様の大ファンで、一度お会いしてみたくって」
照れながらたどたどしく一生懸命話すケリー皇女は、とてつもなく可愛かった!!
「そんな偉い人だと俺も緊張しちゃうなぁ」
ケリーが来てから俺の酒のピッチはどんどんと上がっていった。
賢者の知恵の忠告も聞かずに。
****
「いやぁー、楽しかったなぁ。今日のパーティーは」
俺は少し飲みすぎたので夜風にあたるため外に出た。
「天谷様、今日はこの辺にしておいた方がいいのでは?」
「馬鹿やろぉ、中でケリーちゃんが待ってるんだぞお?行ってやらないと男じゃねぇだろぉ」
「もう呂律も回ってません」
ケリーちゃん、おっぱい大きかったなぁ。美女取っ替え引っ替えでも良いけど皇女と結婚してスローライフってのもアリかなぁ。
「それじゃ第二回戦行きますよっと!」
立ち上がろうと膝を伸ばした瞬間、飲みすぎたせいでよろめいた。
そして、舗道に飛び出してしまった。夜の薄暗さ、酒の飲みすぎて運動能力が極度に低下していた天谷。
天谷が飛び出した先に馬車が猛スピードで突っ込んでくる!
「うわあああぁああぁあぁ」
俺はこの異世界に来た時と同じ光に包まれた。まさか元の世界に戻るのか?
俺の頭の中で賢者の知恵が囁いた。
「だから、飲み過ぎるなと言ったのに」
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