褒美と罰
ガルゼリアが俺を呼びに来た。
甘水漬けもエレオール(酒)も沢山用意した。
「では行くぞ。」
そう言い未だに慣れない視界の歪みに耐えつつ転移を終える。
そこは大きな空洞状になっている、洞穴の中の様な感じだった。
街と同じように魔力で灯りの点くランプが有り、暗くは無かった。
「ガリアとアールか。」
奥から長老と思われる声がする。
俺はガルに連れられ声のする方向へ歩み出す。
そこには半人化したドルイドではなく大きな大きな大樹が存在していた。大樹の上方には空に向かって穴が開いている。
「よく来たなアールよ。歓迎しよう。」
「長老様・・・でしょうか?」
すると大樹がみるみる小さくなったかと思うと人型になった。数日前城内でみた長老の姿だ。变化していく姿はいつ見ても不思議だ。
「以前と違い、話し方が違い直ぐ気付きませんでした。」
「それはな、儂の魔力の殆どをこの地に置いてきておったからじゃよ。そうせぬと森の力が弱まってしまうのじゃよ。」
「長老様の魔力で色々な結界の維持をしておる為じゃ。」
ガルゼリアが付け加える。
「そうだ・・・長老様こちらはガルから伺ってましたお土産です。」
「これが以前ガリアが言っておった物か。早速これを食しながら話をしようとするか。」
そう言われ甘水漬けを一緒に持ってきた木製の器に取り分け、エレオールは瓶のまま置くと、ガルが円筒状の酒坏を三つ持ってきた。
「これは・・・石?」
「そうではない、これは粘りのある土に、赤晶と言う石を砕き熱した物を混ぜ、魔力で形を作り焼き固めた"赤焼き"と言い石とは少し違う物じゃ。」
こんな物があるのかと手に取り眺めていた。
赤い色が強かったり他の色に混ざったり、溶けきらぬ粒が有ったりと面白い物だった。
「気に入ったのなら、それは持って帰るが良い。」
と長老はそれを俺にくれると言う。
ガルが言うにはこの赤焼きと言う物は、魔族の国のルメシアンで作られる物で、こちらでは珍しい品と言う事だ。
これにエレオールを注ぎ、長老は一気に飲み干した。
「美味いと言う話は聞いておったが、確かに美味い。これの作り方はお主が見つけたのか?」
「いえ、普段酒ではく浄化水で割っていたものを、酒好きなノーム達がエールで割りたいと言って作ったのが切っ掛けです。」
「偶然の産物か・・・美味いのう。」
そう言い三杯目を注がれている。
「今日は酒盛りをする為に呼んだのではないぞ。儂がある物をお主にやろうと言う事だ。これには良い事とそ良く無い事が伴う。だがお主にこれを拒否する権利はない。褒美と罰なのだからだ。」
褒美と罰?言っている意味が分からない。俺が何か悪い事をしただろうか。
「まず褒美は雑草薬の知識を良くここまで見付け、且つ同胞に惜しみなく教えてくれている事だ。
そして罰は雑草薬が原因で外界に話詐欺を齎し、儂が動くまでになったと言う事だ。」
「長老様が森を一時的にでも出ると何もせずとも、外界に様々な影響を齎してしまうのである。」
それが罰か・・・。そして何故かこの長老には何も言い返せない雰囲気というか、力が掛かっている気がする。
「この罰は良い物と考えるか、悪い物と考えるかはお主次第じゃ。」
そして長老は説明をし始めた。
褒美はと言うと、長老の能力である"発現" "昇華"を使う。"発現"を使うと生まれ持つ以外の能力が複数分かる、そして生物には生まれ持った能力の枠以外にいくつか別枠と言う物が存在すると言うのだ。
そこに自分が得る事出来る能力を、俺自身が選び追加してくれると言う。
そして"昇華"は全ての能力の内一つだけ、上の能力に昇格出来る。能力によっては上がらない物もあるらしい。
そして罰は"発現"を受けると【刻の呪いの種】と言う物が、自身の根幹に芽生えると言う。
この【刻の呪いの種】と言うのは、自身が過ごしたと感じる時間よりも、実際は時間の流れがもっと遅いと言う事になるらしい。
どう言う事かと言うと、十年過ごしたのに体に対する影響はもっと短い時間だと言う。
あと五十年で寿命だとしたら、種族に差はあるが、五倍~十倍程生きなくてはならなく為る。
言い換えれば長寿の呪いだと言う。
「人間にはこれが罰となるか褒美となるかは儂には分からぬ。ただ儂等ドルイドには罰であり呪いでしかない。
儂はこの【刻の呪いの種】で既に七千六百三十年生きておる、長い呪いじゃ。しかし新たに種を受ける者への利点もある、何処に居ようと儂の元へ転移出来る。そして儂は他人を好きな所に転移してやる事が出来る、これくらいかの利点は。」
これを俺が受けねば、強制力を使ってでも強行すると言う。しかし逆に考えよう、寿命が獣人くらいになるという事だ。高寿命なのは能力の副産物とでも言っておけば何とかなりそうだ。
「面白い事を考えておるのう。」
「あっ、ガル俺の考えを覗いたな。」
「すまぬな、長老様に監視を頼まれておるのじゃ。」
「どうであった。」
「アールは受け入れそうですのう。」
「ではまず、何の能力が追加出来るかみてやろう。」
暫く静寂が続くと、ガルから説明された。
ガルは"伝えし者"を使い長老が見付けた物を、順番に俺に伝える役目をしている。
"回復" "精製" "遠視" "半殖" "召還" "透視" "狩猟" "畏怖" "再生"
そして空きは三枠だと言う。
「一般的な物から変わった物、儂の知らぬ物まであるぞ。」
「この中で内容の分かる物は、教えて頂けるのでしょうか?」
「構わぬよ教えてやろう。」
"回復"は、回復魔法回復薬等の効果が上がる。
"精製"は、精製時により良い物が出来るが、能力が上がりきれば無意味だという。
"遠視"は、そのままでかなり遠くの物が、見える様になる。
"半殖" "召還" は不明。
"透視"は壁の向こうや服や装備の裏に隠し持ってる物を、見たり色々出来ると言う。
"狩猟"は、ハンターになりたきゃあると便利だとか。
"畏怖"は、周囲の者や指定した者を、強制的に畏怖させられる。これを防ぐのは全耐性のみらしい。
"再生"は、切り傷・刺し傷を急速回復、体の欠損は欠損部位が近くにあれば治る。体がバラバラに吹き飛ばされると一部しか再生しない為事実上は死ぬと。それ以外は無敵に近くなるらしいが当然痛みはある。
状態異常が掛かったままだと苦しみながら生き続けることになる。
「ゆっくり考えるが良い、考え終わるまで何日掛かっても、此処には飯でも何でもあるぞ。」
回復は、回復魔法を覚えてすらないから却下。
精製も、今後は時間あるし時間掛ければなんとかなるから却下。
狩猟も要らないっと。畏怖はもういいです。
そうなると遠視・透視・半殖・召還・再生になるが、正直分からないと言われてる半殖・召還が気になる。
初めから分からないと言われてた能力だった俺だからかも知れないが、凄くいい物かも知れないと希望を持ってしまうが完全に賭けだ。
遠視・透視はどちらかになるとするなら、透視を選ぶ。
再生は凄そうと思ったが、そんな激痛を何度も味わう人生を送りたくない。
味わうなら一度目でいい。
遠視△ 透視○ 半殖○ 召還○ 再生△
考えはこうなった。
不明な能力を選ぶとか、変わってるだろうな。でもそれも面白そうじゃないかと思った。
「よし、決まった。」
長老とガルが呑んでた酒を溢しそうになりながら、此方を見る
「まだ一時間も経ってないぞ、もっと考えなくて本当に良いのか?」
「これ以上考えたら、堂々巡りになりそうだからいいや。」
「よしガリア、どちらがどれだけ当たるか勝負だ。」
こいつら・・・暇なんだろうか、俺が選ぶ能力を賭けにしやがった。
「我らには良い暇つぶしなのじゃよ。」
「だから考えを読むなって。なら俺の考え筒抜けなんじゃないのか。」
「そんな卑怯な真似はせぬ。」
「儂が思うに、遠視・透視・再生じゃ。」
「我は精製・畏怖・再生だと思いまする。」
ふっふっ・・・変な笑いが出てしまった。
「嫌な笑い方をするのう。さあお主言うて見よ。」
「透視・半殖・召還の三つだ・・・・・・口から酒垂れてる垂れてる。」
「アール、頭は大丈夫か?」
「気は狂ってないよ?内容が分からない二つに惹かれた。」
では残りは何故再生じゃないんだと、しつこく聞かれたから思った通りの事を話した。
やはり変わり者であったか、と失礼な事を真顔で言われた。
「まあ良いではないか、儂もその二つを知りたいでの。では始める。」
そう言うと長老は左手を俺の頭に、右手を俺の胸の真ん中へ置き、長老の手が光りだした・・・・・・事までは覚えていた。そして目が覚めた。
「ここ…は、どこだ・・・?」
暗い部屋で向こうから光が漏れている。周りには石壁・・・長老の間か。
そして灯りの漏れる方へ歩いて行く。
「やっと気がついたかアール、長かったな。」
「長かっ・・・た?どれくらい?」
「約四ヶ月経っておるぞ。」
「へっ・・・?」
「あれ程の影響を受けて無事で済むわけ無かろう。」
説明しとけよガル・・・。
「アールが此処に数ヶ月居る事は、街には伝えてあるから安心せよ。」
そこじゃねえだろ、まあそれも大事だけど。・・・相変わらず読まれてるのか。
と考えるとガルが頷く。
「では次は"昇華"じゃな、これは恐らく気は失わん筈じゃ。」
筈かよ・・・怖いな本当。
「昇華出来るものは、"脱兎" "気配" "透視" "召還"の四つの内一つじゃ。」
「何に変わるか分かりますか?」
"脱兎"は遁逃
"気配"は隠密
"透視"は遠透視
"召還"は転移召還
脱兎は脱力使えば十分使える。
転移召還は呪いの種で補える。
隠密と遠透視は便利そうだが、予め遠くを透視出来るなら隠れる必要無いんじゃね?
「これしかない、遠透視でお願いします。」
「本当に決めるのが早いのう、分かったから少し待っておれ。」
そう言うと発現の時と同じ事をしている・・・嫌な予感しかしないがだいじょ・・・・・。
目が覚めた、嫌な予感がした時までは全て覚えてる。またかよ、今回はどれだけ経ったんだと思いながら二人が居るであろう明るい方へ歩く。
「またかよ!!」
「起きたな、気分はどうじゃ。」
「最悪ですよ。」
「今回は早いから安心するが良い、だよなガリア。」
「うむ、まだ三日しか経っておらぬ。」
三日だと早く感じてしまう俺も毒されたかな。
「追加された能力と昇格した能力は、元々持っておる能力の平均値たりの色になっておる筈じゃ。思い浮かべてみよ。もう軽硬石の板で確認せずとも行けるはずじゃ。」
何故かと聞くとこれも呪いの種だと言う。・・・罰だと言ってたのに、利点の方が多くないかこれ?
自分の能力を思い浮かべてみた、新しく追加された"遠透視" "召還" "半殖"の三つは少し紫掛かった黒字になっている。暫く確認してなかったが"脱兎"と"気配"が凄い上がってる、ヒルリアの件か。
でもたった数時間でこれだけ上がるというのは、周り人が多かったり、敵意を抱く者が多いと上がり易くなるのかも知れないな?
"脱兎"が藍→黒
"気配"が青紫→黒縁赤
気配が今まで一番高かった雑草を超えた。使う機会がまだ少ない"銘"はまだ青だ。
「これでアールは儂の元へ直ぐ来れる様になったわけじゃ、そこで頼みがある。」
嫌な予感しかしないが一応聞いてみよう。
「何て事はない。エレオ甘水漬けとエレオールを、定期的に持って来て欲しいだけじゃ。」
「それくらいなら、でも俺が居ない時はガルにでも頼んで下さいね。」
ふほほほほ・・・と笑って居る。
「長く家を空けた事になっているらしいので、俺はそろそろ戻っても宜しいでしょうか?」
「構わぬぞ、待っておるからの…酒。」
・・・ふふん。
最後に"酒"かよと思い、鼻で笑ってしまった。
そして長老の他人転移で送ってもらった。
────────約四ヶ月経ったであろう我が家。
色々様変わりし過ぎで、驚き以外は求めないで欲しい、そんな気分だった。
紆余曲折しつつも何とか第二章終わりです。+αは有るかもしれません。
三章いってきます。




