最近俺の能力は良いかも、と思っていました
何とか今回の一件は一段落ついたが、俺の中ではまだ終わっていなかった。
流通量や価格の事は許容範囲であるなら、商人ギルドと話し合い取り決めをしても損は無い筈だ。
俺と違いエリオは雑草薬を作るのが早く、細い小瓶で計算すると一日に500~600本分程作ってしまう。
しかし栽培も始めたばかりの今このペースで作り続けると、雑草自体が減ってしまうだろう。
半分くらいの生産量にして価格を少し上げ、そこで妥協するのは良いかも知れない。
ホールは商人ギルドでそれなりに権限が有るようだから、落ち着いた後に相談し内容を纏めるとしよう。
あれから二日が過ぎた
雑草の栽培はエチゴールをドズに派遣してる為、ダイーカン一人でやっていてあまり進んでない。
ジョーは早速何かを作るらしく、小屋付近であれこれ悩んでる。
ホールは一旦中心街に戻ってきたが、忙しくなるらしく直ぐ帰った。
あちらではもう6日が過ぎている事になるが、ガルはまだ戻って来ていない。
更に五日が過ぎた。
昼過ぎに、ホールがガルと共に戻ってきた。
「アール、話が有るので、奥の部屋でホールと話をするぞ。」
大事な話などをするときに使う、いつもの奥の部屋でエリオも含め四人集まった。
「今回の一件はある程度片が付いたから、結果を話して行くぞ。」
そのままガルが話していく。
「ミセリア国の代表は熊猛族を除き、暫くは前代表が代理で引き継ぐ事になった。
代表筆頭は唯一継続である熊猛族のヴァン=エーダ=セダルリアとなった。
街中ではパリムールが頑張ったお陰で、特に混乱も無く収まっている。
元代表の四人はゲハノコ王国に連絡をとり了承を得、彼の国に流刑となる。
ミセリア国に対してはここまでじゃ。」
「俺を売った宿屋はどうなった?」
「目下捜索中じゃ、それ相応の罰が下るじゃろう。」
「次に商人ギルドじゃが、裏で代表が結託しておったと証拠が上がった。
結果を言うとじゃ、ホールが商人ギルド代表代理を務めることになり、役員は繰り上がりでリットラン支部長で、ホールの弟でもあるローゼルが兼任する事となった。」
「ええええーー」
「驚くのは分かるがまだ話は終わっておらん。そして代表代理に為ったホールからの頼みじゃが、今回の引き金になった雑草薬の件で話があるそうじゃ。」
ガルはそう言いホールに話を振った。
「この件は流石に何も無し・今まで通りでは、収集がつかないと分かった。
そこでアールと話し合い価格と流通量の話をある程度擦り合わせたい。」
「それは我からも頼む。」
やはり皆考えてる事は、同じ様である。
「俺も戻って来て暫く其のことを考えていたから、少しは案を出せる。
流通量に関してだが一日当り細い小瓶100本・小瓶30個までなら許容範囲だ。これで今までの半分よりやや少ない量になる。そして単価は1.5倍でなら手を打つ。この条件で飲めないとなるとミセリアでは販売を止めるしかないな。」
少しホールが困った顔をする。
「他の商人ギルドの薬屋はそれで万々歳だろうが、雑草薬を使った事の有る冒険者や傭兵が黙ってない筈で、それを抑えるのに苦労する。
下手すれば冒険者や傭兵の活動地点が、アールが店を出した国へ変える恐れがあるかもしれない。
そうすると次に起こるであろう問題は・・・行商専門商人は良いが、街に店を構えている商人には被害が大きくなる。」
「流通量をもう少し増やしても良いから、単価をもう少し上げれないか?」
可笑しな事を言う、量が増えると困るんじゃないのか、と思ったが買える人を減らすのか。そうなると結局売れずに減ることになる。
「単価をこれ以上上げる事は許可しない。流通量に関してだがこちらの事情で減らしただけだ。そっちの事は知らん。何故栽培を始めようとしてるか考える事だな。」
「森の雑草の量じゃろう。この森では育成が早いがそれでも最近総数が減少してきておる。我もそれは気になっておったが、アールが栽培を考えていると聞き今までは黙っておった。」
単価に関してはホールは諦めた、その代わり流通をもうすこし減らせないかと言うと、ガルが提案してきた。
「栽培が軌道に乗るまで、細い小瓶80本の小瓶20個でどうじゃ?それなら森の雑草も外の雑草も安心じゃ。栽培が軌道に乗るまでの間にギルド側も対策を取れ。個々の能力を上げるとか色々出来るじゃろう。」
「ガルゼリア様に言われれば、私はそれを拒否出来ません。」
「我は命令しておらぬ、提案をしたまでじゃ。」
「ガルの顔を立てなきゃなー、俺はそれでいいぞ。あとはホール次第だ。」
「分かった、俺はこの案を持ち帰り周り奴等を強引にでも説得してくる。」
「と言うわけだエリオ、今後は能力が上がり難くなるだろうが、作る量を減らすんだぞ。」
「了解しました。」
こうしてガルが間に入り、この件は解決した。
「アールよ、明日長老様の所へ行くぞ。武器とその脛当は外しておくんじゃ。」
脛当に小さなナイフが仕込んである事を知っていたのか。
「あと甘水漬けと、エレオールと言う酒を忘れずにな、長老様も気になっておる様じゃよ。」
「分かった用意しておく。エリオ、エレニアが来てもしっかり忠告しておけよ、ガルや長老様の名前出せば手を出さんと思うが一応釘を指しとけ。」
「了解しました。」
「よーし風呂だ風呂、ホールも入ってくか?」
「お言葉に甘えるとするか、エリオあとで風呂にエレオール持ってきてくれ。」
「ならば我はまだ用事があるから、戻るぞ。」
そう言い残し転移していった。
「ガルは忙しいんだなー。」
「今回の事が有ってから、引っ切り無しに転移しておられるよ。」
そう言いながら風呂場に向う俺達だった。
──風呂場。
風呂場に着くと誰か入っている様だったが気にせず入る。
中に居たのは今回大活躍だったアービィだ。
「申し訳ありませんアール様、今出ます。」
「気にするな、今回の功労者なんだから気にせず一緒に入ろうや。エリオ!!!エレオール三つな!!!」
と家の中へ聞こえる様に大きな声で言う。
「そういえば場内で衛兵達はアービィの事を知ってたが何故だ?」
俺が聞くとホールが答える。
「俺が強いというのはパリムールが言っていたよな、だが俺より遥かに強く俺の師だ。」
「あまり歳は変わらないのに?」
「我ら獣人の師は、歳より強さや賢さを優先する。
アーバインは元々クーオンズ家の戦闘師範だよ。訓練でも練習試合でも一度も勝てず、一度本気で挑んだが軽くあしらわれたよ。」
「まだ三十歳前後だろ?それでそこまで強いのか。」
「ああアールは知らないのか。獣人は寿命が長いんだが、半獣人も寿命はある程度長いんだ。だからアーバインは・・・今いくつだ?」
「今年で八十七歳になります。」
今まで知らなかったので、驚いて目を見開いていた。
半獣人で大凡人間の三倍、獣人で大凡五倍から六倍だと言う。
「って事はジルやウェルもか・・・。」
「ジルは今年で四十七歳、ウェルが四十歳です。」
「おま・・・女性の歳は内緒にしておけよ。」
「問題ない。そんなの気にするのは人間だけだ。」
そう・・・なのか・・・。
そんな折にエリオが、エレオールを10本程持ってきた。
「ありがとな、飯が出来たら呼んでくれ。」
ジルとウェルの歳を1/3したら・・・。
「おい人間の年齢に換算すると、ウェルはまだ子供じゃないのか?」
「半獣人は早熟で若い期間が長い。寿命を百五十年としたら三十歳で成人で子を産む事が許され、青年期が八十年程・壮年期が三十年・老年期が十年しかない。獣人は丁度その倍くらいだ。因みにドルイドは個体差あるが、人間の十倍から三十倍の寿命があるぞ。」
・・・・・。
「俺の歳は百三十二だ。」
・・・・・・・・・。
「で、四十五年長く生きてるのに、未だに勝てないと。」
「それを言うな、悲しくなるだろう。能力の差もあるんだよ。」
「良い戦闘系って事か。」
「良いなんて物じゃない、反則だ。」
アービィの方を見ると、ホールと目を合わせない様にしていた。凄く気になる。
「何の能力何だ?」
アービィは言わない。
「主人にも言えないか?」
「全部・・・でしょうか?」
「全部だ。」
諦めたアービィが能力を明かす。
「"精通" "隠密" "回避" "必中" "加速" "戦神" "魔神"です。」
ななつだと・・・、しかも精通は良く分からんが、隠密を除けば全部戦闘系か?
「内容は俺が説明してやるよ。聞いた後反則だと思うからよ。」
その通り俺は、この世の中不公平だと思った。
内容は簡単に言うとこうだ。
"隠密"はエリオの見えざる者の自分用と、俺の気配を足した感じの物。
"回避"は攻撃回避が上手くなる。
"必中"はそのままだ、攻撃が外れない。
"加速"は攻撃時や回避時その他移動時などで、瞬間加速が出来る。
"戦神"は戦闘に関わる全ての能力が格段に上がる。
"魔神"は戦神の魔法・魔力版。
"精通"は自分の能力に精通、能力強化は早くなる。
世の中間違ってる・・・俺は最近自分の能力が、実は良いんじゃないかと思っていたのに・・・ぶくぶくぶく・・・
「アール様、大丈夫ですか。」
気が抜けて風呂に沈んだらしい、アービィに助けられた。
「まあそう思うだろうな。本気で仕掛けてあしらわれた後、しつこく聞いて愕然とした。」
「バレたので言いますが、"魔神"はジョルジーアも持っております。」
「なんだってー!?」
半獣人って能力が高いのか?だから疎まれてるのかも知れないな。
「この際だからジルとウェルの能力を全部教えろ。」
「か、畏まりました。」
ジルの能力は
"魔神" "氷霜" "毒耐性" "独創" "料理"
ウェルの能力は
"魅了" "探索" "夜目" "釣師"
だと言う。
氷霜は
氷魔法の耐性と寒さ耐性、氷魔法が自由に使えるらしい。
毒耐性は劇毒すら防ぐとか。
魅了・・・使われたら怖いな。
「釣師って・・・。」
「釣り名人だと考えると、分かり易いと思います。」
「俺と同じでウェルは戦闘系ないんだな。」
「"脱力"はある意味戦闘系だろ。」
しかし戦闘の能力無しであの強さになってるウェルは、戦闘センスが良いとアービィは言う。
あと夜目が有るから暗闇だとジルを凌ぐと。
「能力って色々あるんだな。」
「数百はあるらしいぞ。長老様なら相当知っておられるかも知れないな。」
急に風呂場の扉が開く、誰かと思えばジョーが入ってきた。
「何やら面白い話、してるじゃねーか。」
「お前毎日入ってないか?」
「そ、そんな事ないよな、アーバイン。」
・・・・・。
分かり易い奴だな。
「所でジョーの能力ってなんだ?」
「俺か?俺は"木工" "怪力" "堅牢" "統率者"の四つだ。大工に丁度いいだろ。」
「木工と怪力は大工に良いだろうが、堅牢と統率者はどうなんだ。」
「堅牢は要するに体が丈夫なのと物を作るとそれも丈夫になる。統率者は人を使うときに発揮だな、ドズの様に。」
納得してしまった、ドズでの仕事が早かったのはこれか。
そして男だらけの風呂場に堂々と入ってくるエリオ。
「皆さんご飯が出来ました。」
「何で全員分作ってんだよ・・・。」
「「いいじゃねーかよ」」
ホールとジョーが声を合わせて言う、息ピッタリだなお前ら。
そして今日も大人数で、飯を食い酒を飲み騒ぎ潰れて夜が更ける。
10,000 PV 有難う御座います。
当初と変わらずまだまだ稚拙ですが、今後も頑張ります、宜しければお付き合い下さいませ。




