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己の歩むべき道は己で見つけてみせる  作者: 飛来針
第二章 ─ ミセリア国 ─
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長老様

 中心街の我が家に到着した六人は、ヴァン=エーダ=セダルリアから話を聞こうとしていた。

 そこにやってきたムキムキのやり過ぎるジョーが、


「やっと見付けたよアール、畑の横に他のもの追加してもいいか?」


 おい空気読めよジョー。なんて思っていたら予想外な人から予想外の言葉が出た。


「ジョゼフこんな所で何をしている。」

 ヴァン=エーダ=セダルリアがそう言った。


「叔父様こそヒルリアではなく、こんな所で何をしてるんですか。」

 甥っ子だと言うのか・・・。


「おいジョー、お前の本名は何だ?」

「ジョゼフ=ロゴル=セダルリアだが?」

「聞いてねーぞ、おいホール知ってて黙ってたろ。」

 そんなホールは、顔を背けて笑っていた。


「何か一気に毒気が抜かれたな。」

「ジョーにも関係有るかも知れんから話に加われ、あと建てるのは好きにしたらいい。」

「ヒルリアでそこのヴァン=エーダ=セダルリアが、幽閉されておった話だ。」

 ジョーの目つきが、いつものオチャラケキャラから一変した。


「ヒルリアで何かあったと言うことですね。それにガルゼリア様まで出てきている上に、パリムール様までいらっしゃる。」


「まあ話していきますぞ」

 そしてヴァンは事の発端から話し出した。



 事の発端は、[レイ・ドリーム]の売上と今後の規模拡大に対する懸念。

 そしてミセリア国内だと言うのに、経営者・店の責任者共に人間で気に入らない事。

 その店で売っている各種薬や毒が優れているのに、そこまで高額ではないから市場が脅かされる懸念。

 そこで単価の大幅値上げと流通量の制限、作成者を今以上増やさない。


 要求を作ったは良いがまともな商人が従うわけがない。商人ギルドを通しているから国の要求といえど個人が優先される事項。

 ならば何か切っ掛けを作って任意で連れてき、存在その物を抹殺して死体を魔物生息地域に置いてくれば、魔物にやられた事に出来ガルゼリアからお(とが)めはないと思ったらしい。


 だがそんなやり方は可怪しい、承服(しょうふく)出来ぬと()()ね続けたヴァンは、毒を盛られて地下牢に入れられたと言う事らしい。




「そこから先は(わたくし)が、説明致しましょう。」

 とパリムールが口を開く。


 そして先ず俺達が魔物を狩りにミセリアの東の国境付近にある、魔物生息地域に出かけるという情報をどこからか仕入れてきたらしい。


 そして北側の街道とリットラン・ガヘルニアス・カガスの三つの町に、問題を起こさせる虎豹(こひょう)族を

 置きやり方はそいつらに任せた。

 その虎豹(こひょう)族はダリュセからの流れ者を雇ったらしい。(わざ)と虎豹族を使ったのは、ホールに疑いの目を向けさせる為でもあったと言う。


 雇い主はクーオンズ家現当主ハワード=ライン=クーオンズだと言う。ホール兄で長男のため家督を継いだ者だと言う。

 その後はホールにアールを向かいに行けと言った。偶然にも俺がクーオンズ家の名前を公に使ったから理由も出来たと。


「確かに俺は兄上からの、そう言う内容の密状を伝令から預かった。今も持っている。」



 そして何も知らないホールは、それに書かれていた宿屋を手配したと言う事を、何も疑わず俺を泊まらせた。

 その宿屋はクーオンズ家に大金で買収されており、その日の内に店主以下全員逃亡したと言う事。


 実行部隊は獅子(しし)族のモゼレール家、巳犀(しさい)族のレニアイル家は商人ギルドに対し裏工作、亥酉(がいゆう)族のイヴァリーン家はエル商国に対し裏工作を担当した様だ。


 エル商国はこの件には手を出さないが手伝わないとあくまで中立を保ち、商人ギルドは代表がこの件に乗っかったと言う事。


「そして夜半になり、あとはアール様がご存知の通りです。」



「上手く行かなかったのは、俺の能力に奴等の知らない物があったと言う事だな。能力は恐らくホールや他から筒抜けだった筈だ。一つだけはガルが漏らさない限りガルしか知らない訳だ。」


「アールは能力五つあるのか?」

 とホールが言う。本当に知らなかった様だ。


「もうバレてるだろうしな・・・"脱兎"を持っている。」

「何故人間のアールが脱兎を・・・雑草もそうだが。」

 全く・・・そんなの俺が聞きたいよ。


「狭い活路さえ開けば後は"脱兎"が発動する。」

「そして一晩中街中を逃げまわっていたのか。」

 普通はそう思うよなー。


「いや、南門に紋付私兵がいて街から出られない事を確認した後、南門の近くで気配殺して(ひそ)んでた。」


「「「ええええーー」」」

 ホール・ジョー・パリムールが声を揃えて驚く。



「考えてみろよ、俺が"気配"持ってるのバレてるだろうから、"気配察知"を連れてくるだろ?だが門番への伝令に"気配察知"持ちが使われる可能性は相当低い。なら南門の門兵の近くに潜んでる方が安全だろ?」


 何か凄く白い目で見られてる気がする。


「そんな考えする変人は、そうは居ないと思うぞ。」


 そして明るくなりだすと街中の私兵が徐々に静かになってきたから、宿屋に戻って潜もうとしたらホールに出遭()ったと言った。


「そこで何で宿屋に行こうと思うかな?」

「そう思ったんだから仕方がない、結果それは間違いじゃなかったんだし。その先はホールも知ってる通りででそ、の後エリオがどこからとも無く現れて今に至ると言う事か。」


 思い付きでの行動が、偶然功を奏し過ぎだと怒られた。



「さてこの先どうするのが良いじゃろうな。皆で城に乗り込むとするかの。」

「乗り込んでも捕まるだけじゃねーのか。」


 今日だけで新事実が多すぎだ。

 ガルことガルゼリアはミセリア国を束ねる代表の五種族の更に上の地位だと言う。物を取り決めたりする権限は無いが、こう言う国内の問題で代表が機能しない場合や、代表だけで解決しない時に出て行くらしい。


「我が出て来る前に片付けたかったんじゃろうな。我は準備と報告の為、(しば)此処(ここ)を離れるぞ。城へは明日行くぞ。」



 夜中や早朝は生きた心地がしなかったが、今は俺・ホール・人化したパリムールとのんびり風呂に浸かっている。何故こんなのんびりしているかと言うと、ホールやパリムールが言うにはガルゼリア様に任せておけば全て上手く収まる、と言うのだ。

 俺と二人の時はただのちょっと新しい物好きな、ドルイドの爺様だと思っていたら・・・。



「いやーしかし彼処(あそこ)でホールに()った時は、流石に殺されると思ったぜ。殺気が尋常(じんじょう)じゃなかったしな。」

「多分駄々漏(だだも)れだったんじゃないか?・・・・ふっはっはっは」

「笑い事じゃねーよ全く。」


 今だからこそ笑い話でが、まじでヤバかった。だって"脱兎"が発動しなかったんだもん・・・本能が逃げきれないと察知したんだろうな。


「ご存じなかったのですか?ホール様はこの戦闘集団国家のミセリア国で三本の指に入ると言われる、猛者(もさ)中の猛者ですよ?」

「新事実多すぎで、マジで勘弁して下さい・・・・何で商人やってんだよ。」


 またふはははははって笑ってやがる。

 最後にこれを聞いて心の底から疲れた。

 ホールは生かされていたんじゃ無く、倒せる奴が居なかったんだな。だから俺がホールを疑う様にと遠回しな事をしていたのか。



 ──翌朝。


 ガルが全て準備が整ったから城に行くぞと言って来た。

 それと護衛としてアービィを連れて行けと言う。他二人の同行を聞くとアービィだけで良いと。それに対しホールもパリムールも(うなづ)いている。

 俺はアービィを呼び同行を命じ、ジルとウェルには家で警戒だけはしておくように言い伝える。


「エリオ、アーバインに"見えざる者"を使っておくのじゃ。」

 エリオはアービィの腕を掴み能力を使うと、アービィが見えなくなった。



 そしてアービィとジョーを含めた八人は、ガルゼリアと共にミセリアの城内の各代表と前代表が集まった部屋へと転移する。



「ガルゼリア様こんな朝早く代表だけでなく、私共前代表を集め如何されましたか?」

「我に聞くより、そこの四人の代表に聞く方が早かろう。」


 何の事か分からない、身に覚えがないと、(わざ)とらしく首を(かし)げたりしている。


「我が何も知らぬと思っておるのか!」

 ガルが珍しく声を荒げた。


 そしてガルは昨日知った経緯を、(まと)めて全て話していった。


 前代表五人は全く知らなかった様で現代表に激しく痛罵(つうば)を浴びせている。

 その上で前代表側が謝罪をしてきた。


 だが、頭の可怪しい現代表達はこれでは済まなかった。


「ガルゼリア様や前代表の貴方達が出て来て何をすると言うのだ。現に権限もなく何も出来ないであろう。国の取り決めを担うのは我らぞ。」


 そう言うと獅子(しし)族の代表は、(あらかじ)め用意しておいた紋付の私兵と衛兵を呼んだ。

「ガルゼリア様がご乱心なされた。」

「言うに事欠いて貴様ら、ガルゼリア様を悪者呼ばわりするのか!!」


「そこの前代表の五人も仲間だ、(まと)めて捕らえろ!」


 するとガルがそっとエリオに(ささや)いた。

「(アービィの透明化を解除せよ)」


 そう言われエリオが"見えざる者"を解除した途端、部屋中がざわめいた。


「あれはアーバインか」

「アーバインがいるぞ」

「奴に気を付けろ」

 そして兵士達は一気に距離をとった。


「何故だ?何故アーバインが今ここに居る。ハワード!!奴はダリュセに売り飛ばしたんじゃないのか!」

「その任はホールに一任したのだが、ホール貴様!・・・ハッ・・・ジョルジーアとウェンタークはどうした!」

「さあ存じませぬねー。」

「クーオンズ家の裏切り者が!!!」


「裏切るも何も初めから加担すらしてませんし、クーオンズ家は兄上の単独でしょう。そう言えば私を()めようとしましたよね。

 今此処で果てるか国外追放が良いか、そろそろ決めた方が宜しいのでは有りませんか?」



「だからお前らにその権限は無いと言っておるだろう。」

 獅子(しし)族の代表はそれ一辺倒(いっぺんとう)である。


「衛兵よ早くこの国賊共を捕らえろ。」

 最早言いたい放題である。


 衛兵はどうすれば良いのか分からず動かなかったが、その倍は居るであろう私兵が斬り掛かって来た。

 (はな)から、捕らえる気は更々無い様だ。


 俺が"脱力"を使おうとするとガルに止められた。

「良いから見ておけ、それに"脱力"なら我の方が上手い。」



 するとジョーはガルを守るように構え、ホールとアービィが武器を抜いた。

 この二人は次元が違う、あっちへ行ったこっちへ行った位しか分からないが、私兵達が物凄い速さで(たお)されていく。

 ホールは力任せに一刀両断していき、ある者は首が飛び、ある者は左右真っ二つにされ、ある者は上下で両断されて死屍累々である。


 一方アービィは一撃必殺だ。

 確実に心臓を突き刺し、喉を斬り裂き、脳天や顳顬(こめかみ)を刺突短剣で突き刺している。


 ものの数十秒で私兵の足が完全に止まった。既に半数以上斬り殺されている。


「やはりアーバインは悪魔だ」

「勝てる訳が無い」

 と言いジリジリと下がって行く。


 するとその場に転移であろう空間の歪みが出来た。


「お主等控えろ!」

 それと共ガルが声を荒げた


「煩わせて申し訳御座いませぬ、長老様。」

 あのガルが膝を突き頭も下げている・・・ああっ・・・前にガルの言っていた聖域の長老か。



 他のドルイドに比べ一際(ひときわ)大きい。

 すると長老がゆっくりと口を開く。

「お主達…現代表の処遇は…もう決まっておる」


 それでもまだ縋る獅子(しし)族代表。

「我らが今の地位から降りる気が無いものを、どう処罰されるのですか?」


 そう言い終わった後、長老が眩しく光ったあとこう言う。

「じっと黙って聞いておれ……お主等現代表は…熊猛族のヴァン=エーダ=セダルリアを除き…四人全員財産の没収…地位の剥奪…国外追放…エル商国でも同様の処置である。加担した者も…同様である。私兵は…武器を捨てよ。そして衛兵よ…この四人と私兵を捕らえ…牢に入れ…厳重に見張っておれ。」


 何が怒ったのか分からない。何の行動も起こせず喋ることも出来ず、呼吸しか出来ない状態だった。

 ただ長老に今言われた事が絶対であると言う事だと、頭がそう理解している。

 自分の意志とかそういう物が一切介入出来ない。


 (しばら)く誰も動けなかった。私兵は全員武器を捨てその場に(うずくま)った。

 動ける様になると衛兵が代表の四人を拘束し、私兵を縄で順番に(しば)っていく。


 長老が出て来ると速攻で、話が片付いてしまった。



「ガル・・・今のは。」

「あれは長老様の力で"強制力"と言う物じゃ。」


「お主が…アールか…ガリアが…相当気に入って…おる様じゃの…ほっほっほっ。」

「あ、ああ・・・アールです。」


 言い方に問題が有ったんだろう、それは俺自信も分かってる。キッっとガルに睨まれてしまった。


「良いぞ…ガリア…気にするでない……アールよ…全て片付いたら…ガルと共に…儂を訪ねるが良い…良い物をやる。」


「そ、それは宜しいの・・・ですか長老様。」

 こんなガルを俺は初めて見た。


「前に…儂の…落葉病を…治したのは…この者であろう…その礼も…含めてじゃ。」


 こうして俺は後で聖域に来いと長老に呼ばれた。


「儂は戻るでな…後は…頼むぞ。」


 そう言い残したと思えば、もうそこに姿は無かった。


「事後処理として代表の後釜、商人ギルドに対しても処理せねばなるまい。我は暫しここに残る。ヴァン=エーダ=セダルリア、我を手伝って貰えるか?」

「承知致しました」



「ホール=ズィン=クーオンズよ、後ほど(つか)いを回す後日商人ギルドの処理を任せる。」


「それとアーバインよ、見事であった。」

「はっ。」

 アービィは膝を突き、(こうべ)()れている。


「パリムール、お主は街の方を任せる。長老様の名を出しても構わぬ我が許可する。」

「分かりました、早速行ってまいります。」


「アール達は今は戻って休むが良い。」

「うん、ああ・・有難うなガル。」


「我は以前アールを対等と称したのじゃ、あまり軽んじられても困るのじゃよ。今度甘水漬(かんすいづ)けとやらを貰いに行く、礼はそれで良い。」


「沢山用意しとくよ。長老様も食べるかな?」

「かも知れぬな。」


 そして別れを言い残し、俺・ホール・ジョー・アービィの順でエリオに中心街へ送って貰う。



 時間にしてそれ程長くは無かったが、俺の中では長い長い一日だった。


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