アールまた絡まれる
本日三話目、今日はこれで終わりです。
──翌朝。
ゆっくり風呂に入れたのは、初日だけだと云う事に気付いた。
朝風呂に入ろうと風呂へ行くと、ノームのおっさん二人とジョーとディージー・フォール・ドウェインのむさ苦しい六人が朝風呂に入ってやがる。
「ダイーカンとエチゴールとジョーはまだ分かる、だがディージーとフォールとドウェインは何してんだよ。」
「何って仕事前に朝風呂入りに来てんだよ」
「いやいや自分の家の風呂入れよ」
「俺らの家風呂ないから共同浴場だし、ここならタダだろ。」
何というかこいつ等、仕事が終わった後も入りそうだな。
「おいジョー、俺専用の風呂・・・作っておいてくれ。金はエリオに言えばいい。」
「ジョーお前最近儲け過ぎだろ、今度酒場でお前のおごりな。」
駄目だわこいつ等、反省する気がない。
仕方ないから風呂は後にして飯にしよう。
準備の良い事で俺達のやり取りを見ていたのか、ウェルがもう朝食の用意をすましている。
エリオに負けず劣らず飯が旨い。
「ウェルは料理が上手いんだな。」
「有難う御座います」
そう言いながら残り物の様な物を持って、奥の部屋に行こうとした。
「そんな物持って行って何するんだ?」
私共は奥でこちらを頂きます。と、言う事だ。何かを勘違いしてるらしい。
「お前らの分も俺と同じもの作って、此処で食っていいんだぞ。半獣だとかそんなものは、俺の前では捨てろ。俺が気にしないんだから、お前らが気にするだけ無駄だ。」
「ですが・・・」
「ですがもそしたらも無い、ここで同じ物を食べろ。これ命令な。」
しばらくしたらエリオも来て、俺と同じ意見だったので、三人は諦めて同じテーブルで同じ物を同じ時に食べた。
「今までがどうだったか知らんが、この家では此れが普通だ、早く慣れような。」
そして風呂上がりに寛いでいるドウェインを呼び、お前の店に買い物に行くから店開けろと行って一緒に家をでた。服は嵩張る後だ。
道すがらどんな武器が得意か聞くと、アービィことアーバインは短剣が使い慣れてると言う。ウェルは鉤爪やナックル、意外な事にジルは槍だった。
今行った物あるかとドウェインに尋ねると、全部あるらしい。
店に着きそのまま開店し店の中で待つと、今回もドウェインが奥からお薦め武器を持ってきた。
しかも以前俺が買ったような普通の武器じゃない、素人目に俺が見てもいい物だと分かる。
「なんで俺の時と違っていい武器なんだ?」
「アールはどれだけいい武器使っても一定以上力を引き出せんしな。それにこの三人に武器を持たすと言う事は護衛に連れて行く事が有るかもしれないって事だろう?」
やはりお見通しの様で。
「んじゃ先ずアーバインの短剣からな。」
そして徐ろに四本の短剣を並べる。
「両刃短剣のバゼラードとキンドジャール、片刃短剣のダーク、刺突短剣のスティレットがある。使いやすいのを選んでくれ。全部銘入りだ。」
「金は気にするな、欲しけりゃ全部でも良いぞ。」
「景気いいとこは違うなぁ。」
するとアービィはバゼラード[フィール]を右手に持ち、ダーク[クァンサー]を左手で逆手に持ち、使い勝手を確かめているのか軽く振り回している。
「あとこれにスティレット[ユゴモウス]も宜しいでしょうか、相手が魔物だけとは限りませんので。」
さらりと怖い事を言うな。
このフィールとクァンサーと言う武器は、黒晶という希少な鉱石から作った武器だ。
ユゴモウスは碧鋼石という鉱石を使った、やや鈍く青光りする武器だ。
アービィはその三つに決めた。
次に鉤爪一つとナックル二つを持ってきた。
「これは既に"銘"入りだ。」
鉤爪[ブラッド・イーター]、ナックル[ネズーリ]と篭手付きナックル[ブリーズン]と言うらしい。
ウェルは右手に篭手付きナックルを、左手に鉤爪を選んだ。
ブラッド・イーターは黒朱鉱を使い、ブリーズンのナックル部分は碧鋼石だ。
次に槍と言ったジルだ槍も三種出てきた。
一つ目はオーソドックスなショート・スピア使われてる金属は良いそうだ。
二つ目は槍ではないがハルバード。金属部分が一体型でこれもいい金属らしいが重い。
三つ目が特殊らしい。一見ショート・スピアより短いが魔力を込めると3mくらいのロング・スピアになり
そして凄く軽い。特殊なグラム鉱という物を使ったらしく、武器自体に魔力を帯び他の材料が使われてない一体物だという。この鉱石を扱える鍛冶屋は滅多に居ないそうだ。
良い物が出来たから銘名しなかった為、名前が無いらしい。
買うなら後で付けてやれと言われた。
ジルは凄く申し訳なさそうに一つ目と三つ目を選んだ。
そりゃそうだ高そうだもの。
防具は良質な魔物の革を使った物を、各自各部位選んでいた。
そして支払いの前にドウェインにそっと耳打ちした。
「(取り敢えず金貨20枚払っておく。足りないのは分かってるが後で払いに来る。こいつ等の手前、目の前で大金払うと気にしそうだからな。)」
ドウェインも分かったと頷く。
あとで支払いに行った時結構高くて、勝手に笑いが込み上げてきた。
そうだあの槍が高かったのだ。三つ目の槍以外で金貨120枚、合計金貨870枚。お分かりだろうか、あの槍だけで金貨750枚持ってかれたという事実を。あの槍には[グランディーレ]と銘入れをした。
ついでにショート・スピアにも付けておいた、[ポーンスピア]と。
武器だけでこれだ必要雑貨と防具で金貨80枚。
合計で金貨950枚ですよ、あの三人には頑張って貰わねば。
特にジルには体で払わせても良いんじゃないかと思ってしまったが、戦闘でどれだけ役に立つかだな。
前回と一緒で防具を体に合わせて調整するから、終わったら家に持ってくると言う。
で、次は服を買いに行く。織物店にいくと服も売ってるので、阿呆な人間や獣人に馬鹿にされない程度な、服装を買うようにする。それと防具の中に着込む服も買う。
我が家に遊びに来る奴等はそんなこと無いが、中心街全てがそうと言うわけでもない。
この店に来るまでにもやたら視線を浴び、適当なことを言ってる奴等が目に付いた。
この店に来てからもだ。半獣に新しい服ですか?なんて言いやがる。
俺は金払い良いからさっさと持って来いと言って、持ってこさせたが嫌な顔してやがる。
こんなにも半獣は忌み嫌われると言うのか。
俺からすると格好良いアービィと、美人で可愛いジルとウェルなんだがなぁ。
奴等の目が腐ってると言う事にしておこう。
服も何着かずつと二人にエプロン二つずつ買ってから家に戻り、金貨1,000枚持ってドウェインの店に戻り残りの930枚払って、嫌な笑いがこみ上げたと。
暫くはそんな感じで毎日が過ぎて行き、ジョーにドズの[レイ・ドリーム]が完成したと聞き、
アービィを連れて、開店祝いに新しく見つけた薬|(エリオ作)を持って行くことにした。
ティラ
効果:強化薬・魔力使用量が減る。十分[二十分]。
強化薬・魔力使用量が減り魔力の最大値が一時的に上がる。一時間[二時間]。
トール
効果:強化薬・一時的に腕力が増加する。六分[十分]。
強化薬・一時的に全ての攻撃力が増加する。十五分[三十分]。
ナウィン
効果:回復薬・気付け薬。気絶を回復。
耐久薬・雷属性を無効化。四十分[一時間]。
エリオ作の為、効果時間が減る。
「レイチェルー・・・・・」
声を掛けた瞬間、凄い勢いで睨まれ凄まれた。
睨んできたのは、自称[レイ親衛隊]と思われる冒険者達だ。
「何だテメエは、新顔がレイちゃんに馴れ馴れしく声掛けてんじゃねーぞゴラァ!」
何かいきなり絡まれました。
すると速攻でアービィが戦闘態勢に入って、俺とこの阿呆間に体を滑り込ませている。
「半獣人如きが出てくんじゃねーよ」
と、言った瞬間後ろから誰かに殴られていた。
俺はこいつに見覚えがある、以前三人のチンピラが居た時その場に居た、お客の冒険者だ。
「お前が新参じゃないのか?誰か分からずこの店で暴れるとどうなっても知らんぞ。」
「はぁーーん?何言ってんだお前。こんなヒョロっとした奴にビビってんのか。」
と、言い切るとゲラゲラ笑い出した。
アービィに斬っても良いよと言いたかったが、取り敢えず抑えて店主だと名乗る。
「俺の店で俺が従業員に声掛けて、何の問題があるのかな?」
何か表情が変わっていく。
「取り敢えずお前、劇毒ジースでも飲むか?好きなだけタダで飲ませてやるぞ。ほら遠慮すんなって。」
そう言いながら少しずつこの阿呆に、"脱力"を浴びせていく。
「畏怖を撒き散らす男・・・・やめろ、やめてくれ、俺が悪かったーーーー!!」
そう叫びながら男はどこかへ逃げていった。
やはり"脱力"は人間や獣人相手なら効果覿面だなと思いつつ、周りにいた客に騒がせて悪かったと言い、詫びとして今回新しく開発した薬だと言って、一人一本ずつティラBやトールBを渡していった。
何か定期的に変な奴に絡まれる運命なのだろうか。
しかしアービィの行動は早く、いつでも倒しに行きそうな感じだった。
そろそろ魔物の素材を使って新薬の開発をしたいから、魔物狩りへ行ってみるか。
あの三人がどれくらい戦えるか分からないから、徐々に強い所に行かないといけないかな。
今度西の絶壁ホルンの壁にあるホルン渓谷か、ドズの北東の国境あたりが無難かな。




