第九話 一玻『バッドエンドメーカーって呼ばれてたんですよっ!』
何事も無くゲーム期間は進んでいます。
件のギャルゲーの攻略対象者の一人『鮮血のアーティスト』鴇田子鞠様も公式な彼とラブラブになったそうです。
……うん、あれですね。『課長』の暗躍を感じますね。……例のすれ違いまくっている婚約中の二人も髪の毛一本も入らない感じと聞きますし……ですが、ですがっ!
「……やっぱりこれを入れるのは」
いくら公式でもっ!
私の手元には釣書のファイルがあります。
主人の娘へ差し出す為の物です。
紗々蘭は圓城寺の悪癖、最愛と出会えなければ色に狂い。最愛と出会っても恋に狂う。を変えようと家的に良い男性との婚姻を計画中です。ですが、
ゲームと違い今の紗々蘭を見て『自愛の無い応答者』と呼ぶ者はいない、それは変えられました。けれどゲーム同様存在する彼女の『最悪な未来への種』は未だ、
「……消せて無いんですよねー」
それ故にあの子はほぼ家と学園の往復──直通通路があるので公道にすら出ません──しか出来ない訳で、当然自らの手で結婚相手を探すのは難しい、と、言うことで、
「一玻。婿を探して来て下さい」
と、まだ小学校入学前の紗々蘭に頼まれました。……何で私?
「一玻以外にそれをしてくれる人がいます?」
いませんね! 主人馬鹿な家の妹等は条件が厳し過ぎて候補が全員消えますし……社員仲間も同様……司皇なんて……うん、
「パパの意に添わないでしょうそれを、やれるのは一玻くらいかと」
ですが急ぐ必要は……、
「あら、良い男はすぐに売れてしまうと言いますし……ふふ、お願いします。ね、一玻?」
…………あー、はい、
って感じで頷いちゃったんですよね。紗々蘭を支え癒す相手がいれば良いとも思いましたし……ですが、
「あの、紗々蘭さん? あなた理想高すぎでは?」
ありとあらゆるコネを使い集めた良い男達を一べつのみでシュレッダー……問い詰めたくなりますよねっ!
「猶予があるとなー、ほれ、さすがに性的興奮を感じない容姿は……なあ?」
「そんな綺麗な顔と声で性的興奮とか言わないで下さいっ!」
ええ本当に『人形令嬢』とか呼ばれていたゲームでの面影皆無ですねっ!
「……じゃあどういう容姿が好みなんですか?」
配下の兄さん達や美少年達、多種多様な美形を多種多様に着飾らせていますが……うん、趣味がわからないくらい多種多様に、
「んー? どういう……あー、考えたこと無いな」
あ、これは違う、はわかるけれどどれが欲しい、かはわからないと……、
「じゃあ考えて下さい……それを加味して選びますので」
そこからこの無欲なお嬢様に欲が生まれるかも知れませんし、
「……あー、了解……でも好みなー……あ、とりあえず私、面食いだと思う」
え、ああ、
「……でしょうね」
父、絶世な美形、に多種多様な美形の配下達ですからねー。
「あと、タルタルな体つきは無いな」
「あー、ですね」
圓城寺は武門だった名残で現在でも使用人に戦闘力が求められているんですよねー。……つまり全員マッチョです。
「あと、あと、んー、すまん、これ以上はすぐには出ない……次回までにはまとめとく」
「了解です」
そんな明け透けな会話がありましたのは今月の始め、そして現在来月分の釣書を選んでいる訳ですが……、
「くう、さすがにこれ以上双子を入れないの問題ですよね……」
両親どころか祖父母も全員圓城寺な司皇を念頭に第一関門に設けた遺伝的相性、それが最高な二人──攻略対象者の双子、を入れるのをためらっている現状です。
「中等部入学時にやった遺伝子調査で入れるべき、って技師さんに言われた時は紹介に足る実績が無いってはねられたのですが……」
全中三連覇と全テスト満点……、
「完璧に実績上げてますー……」
なので彼らの高等部進学時の今回、入れなければ色々と勘繰られる訳で……、
「入れるしか無いですよねー……」
……うん、仕方がないです……ですがっ!
「こんなこともあろうかと貯めておいた極上品も入れておきましょう!」
美形を隠すには美形ですよねっ!
……ええと、
「理想の顔が釣書にくっついていた」
これが世界の強制力かっ!?
はい紗々蘭は例の彼、公式カップリングの相手の写真に一目惚れしましたー。
……はい、これは完全に圓城寺の悪癖発症ですねー。仕方がないですよねー。特異血統の直系ですから。
………………はあ、
なんでよりによって彼なんですかっ!?
彼──岸元栄次は……、
バッドエンドメーカーって呼ばれてたんですよ!!




