第十話 一玻『結婚……しました』
──味方ならばこんなに頼もしいのですね……。
紗々蘭は仮婚約を例の彼と結びました。その一週間後に紗々蘭に紹介された時はゲームでのあれこれのせいか嫌な汗が出ましたが……、
彼、紗々蘭の『最悪な未来の種』をバキボキ折っています。
それも自分を囮にして、
……なんでしょう、愛が深いです。……でも考えて見れば1とエクストラでの彼も終始一貫として大切に婚約者には接していた訳で、
……ええ、『圓城寺紗々蘭』にとっては常に最高の味方だったのですよね。はい、視点を紗々蘭に寄せればわかってましたね。
そして梅が咲く頃には、
紗々蘭を狙う存在の大多数は排除出来たのです。
「あー、あの方々は……」
「自滅……蠱毒みてぇに共食いして……自分達で幕引きした」
「……はい、了承しました」
何と無く後味の悪さを感じましたが、
「遊園地! 海! 凄いです知らない人がいっぱいです!」
ゴールデンウイークの今日、紗々蘭が彼に連れ出された遊園地で大はしゃぎしているのを見て、心から、
──良かったー、と、思えるようになりました。
司皇貸し切りましたよ。ゴールデンウイークに遊園地を、それも水族館併設のでっかいところを、
「……親馬鹿な大富豪らしい行動ですよねー」
「……一応社員サービスでもある」
「……選抜基準厳し過ぎて千人ちょいじゃないですか」
ガラガラですね。アトラクション並びませんね。……これはやっぱり、
「楽しもうなー、ハニー?」
「ですよねっ!」
よっしゃ! とりあえずまずは!
「ジェットコースター、ジェットコースターですよ緑君!」
「了解! 行こうぜー!」
たまには遊びませんと!!
「お誕生日おめでとうございます。緑君」
紗々蘭が『箱庭』を初めて出てから一週間ちょっと、今日は緑君の十八回目の誕生日です。
「あー、ありがとう一玻さん。プレゼント? 中身はなんかな?」
ってことでプレゼントを贈りました。……え、まあ、弟、のような子、ですし。
「運転用のサングラスです。緑君早速免許取りましたし」
さすが四倉って感じですよねー。……姉から屋敷内でビシバシ鍛えられているところを見てましたので感慨深いです。
「うお、カッコイイデザイン、ありがとうなー、ハニー?」
早速かけて見せてくれます。うん、
「男前です……はー、本当に時の流れは早いですねー」
あの女の子みたいに可愛かったおチビさんがこんな立派に、……いかつく、おっきく、
「……はい、時の流れは……残酷です」
可愛かったのですよー。本当に、
「ヒャヒャ、ハニーが酷い! ま、確かに俺っち可愛いげ消え気味ですけど」
まあ、ですが、
「緑君はずっと変わらず大切な家族ですからね?」
例え君が大切な女の子に出会っても、ね? そんな私の牽制含みの言葉に、
「うん、俺と一玻さんはずっと変わらず家族だ」
緑君はイイ笑顔で頷きました。
……ん? なんか悪寒が。
その週の週末、私はかつて司皇と香奈子が、四十日ほど前に同僚達が、結婚式を挙げた教会に連れて行かれ……、
「……は、え、紗々蘭さん? 紀香ちゃん? これウエディングドレスだよね? え、なんで私に着せようと? は、いや、脱がさな、いやー!」
仄と楪ちゃんに取り押さえられ全衣服を……ええ下着まで剥ぎ取られ真っ白なあれこれを着せられました。
で、モーニング姿の父に腕をガシッと掴まれ……ええとこれって……え? バ、バージンロード? は、ちょ、神父様の前にいるのは、
「うわー、一玻さん凄い綺麗……」
え、は、え、ちょっと待って!? 誓いの言葉? いやいや言わな、え、は、なんで皆さん早よ言えって雰囲気!? わ、私の味方は? あ、いませんね。だって紗々蘭さんがニコニコと早よ言えオーラ出してますし……はい、紗々蘭さん以上に優先される存在なんて少なくとも圓城寺関連にはいませんね。……わかってますよ!
はい、言いました。誓いました。逃走失敗しました。え、婚姻届? は、ほぼ埋まって、え、書け? いやいやこれは冗談じゃ……あ、早よ書け? ……いやあの、あの……、
書きました。現在緑君は提出に行っています。……うん、
「……あのこれどういうことですか? 説明を、司皇」
式中ずっと笑いをこらえていた主人を問い詰めます。……うん、父と紗々蘭は無理ですので、
「んー、見たまんま可愛い使用人とまあ、腹心? の部下の結婚式だな」
見たまんまって、
「……ええと、私、結婚する予定なかったんですが?」
ていうかプロポーズも……あ、一生面倒見るって口癖のように……そして私それに頷い、てましたね。はい。
「んー、良く言うだろ? 予定は未定って」
……使い方間違ってる気が、
「……っていうか緑君正気ですか? 私と結婚とか……」
より取り見取りで何故私? 確かにこの一戸一玻は綺麗だけど……中身は、ええ、恋愛不感症で数千年の記憶がある──バケモノ、ですし、
「……あー、正気かはわからんが……本気、だな」
ですよねー、小学生の頃から変わらずですし、
「……ううう、凄まじく申し訳無い」
もっとちゃんと拒絶しとけば!
「……あー、ま、あいつの幸せにお前が不可欠なんだ。……受け入れろ」
ですが、と、反論しようとしましたが、
「ハニー! 提出して来たよー!」
笑顔で夫にしてしまった少年が戻って来ました。そして!?
え、は、緑君? なんでお姫様抱っこ?
「あ、じゃあこっちはこっちで宴会しとくから」
は、司皇!?
「はいご当主! 俺達は初夜を楽しみます!」
は、緑君!?
「……緑郎、あまり無体はダメですよ?」
お、お父さん!?
「はいお父さん!」
いや無体とかの前に!?
「あ、緑兄、一玻の……ふふ、じっくり剥いで下さいねー」
紗々蘭さん? え、あ、あのレースの……、
「っ! はい! 楽しみにしてます姫さん!」
へ、は、いや、あの、あ、
そして私はこの日、名実ともに十一歳年下の少年の妻になりました。
……あの……どうなんですかこれ?




