表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第一章 彼らは冷酷副会長と黒幕令嬢、又は、鳥籃の幸福の姫君と凶悪過ぎた当て馬、でした。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/121

栄次君の常とは違う放課後

三人称です。

 



 城生院学園芙蓉館高等部自治会室は常の様に香しい紅茶の香りに包まれています、が、常ならぬ情景ではあります、主に三名の人物の頭部によって。


「……えーと、いまちゃん、ネコミミパーカー可愛いね? えーと、うん、良く似合ってる」


 緊張感が漂う空気の中、常ならぬ頭部をしている一人を褒めたのは高等部二年生、生徒会副会長の桜花院優奈おうかいんゆうな嬢、薄茶色のワンレングスの髪を濃紺のカチューシャで押さえた、涼やかな美しさを持つ美少女です。


「優奈先輩、ありがとうございます、ボクも意外と似合っているなーってビックリしてます」


 照れ臭そうに優奈嬢に答えるのは常ならぬ頭部の一人、黒いノースリーブネコミミパーカーをキュートに着こなした、中等部一年生、生徒会執行部員の一戸今璃いちのへいまりちゃん、猫の様な大きな釣り目のショートカットが良く似合う美少女です。


 ここ城生院学園では秋に体育祭と学園祭が中高合同で行われ、今日はその体育祭の内容について生徒さんから寄せられた意見や要望を元に、実施競技を決める本会議に出す、生徒会としての指針を決める会議です。中等部生徒会と高等部生徒会、それに体育祭で風紀を乱す競技をしない様に監査する役割を担った、風紀委員の皆さんが本日の会議の出席者です。


「……緑郎ろくろうが制服を着崩していないのを、学園入学後初めて見たな……」


 そう飽きれが混じったため息を吐きながら語るのは風紀委員の春日井柊耶かすがいしゅうや君です、中等部一年生からずっと同じクラスの彼が見た事が無い姿、それをしているのは常ならぬ頭部──いえ、彼の場合は全身がそうですが──をした一人、高等部二年生、生徒会書記を勤める四倉よつくら緑郎君です、トレードマークの赤髪を茶色がかった黒髪と言うか黒みがかった茶髪と言う感じの色に戻し、何時もつけている両耳のピアスも外し、制服をきっちりと着こなした姿は精悍な顔立ちと相まってどこか軍人の様な凛々しさです。


「…………………………」


 ですが、当人のヘニャリとした表情と、言葉を発する気力も無いと言う姿が、その凛々しさを台なしにしています。


「…………あー、ツキトー、お前もそうだが圓城寺家では季節を先取りしたハロウィンでもやってるのか?」


 みんながつっこんで良いものかとはかりかねている所を果敢に切り込んで行ったのは高等部一年生、現在は平の執行部員ですが、学園祭後に一年生ながら生徒会長に就任する事が内定している、桐生元治きりゅうもとはる君、ツヤツヤサラサラな茶色の髪の王子様の様な気品と威厳のある美少年です。


 自治会室に飛び交う疑問符に、簡潔に答えたのは元治君に名指しで指名された六崎月史むざきつきひと君、高等部一年生、生徒会執行部員──彼は会計に就任する予定です──の中性的な美少年です。


「ああ、気にしないで下さい、ただの可愛いらしい罰ゲームですから」


 出席者達に紅茶を出しながら、罰ゲームと言いつつ当人()一切こたえた様子も無く月史君は答えます、そんな彼の常ならぬ頭部は、少し長めの前髪を編み込み、ビーズの花飾りの付いたピンで留めた可愛いらしい髪型です、当人以外の、主に男子生徒達に多大なダメージを与えたました。


「ふふ、そうですわね、確かに月史様と今璃さんは可愛いらしいですわよね」


「ええ、本当にそうですわぁ、またお願いしたいくらい良くお似合いで、とても眼福ですわぁ」


 ふんわり、おっとりと二人を褒めたたえるのは、この会議の2トップ、高等部三年生、生徒会長の白里安曇しらさとあずみ嬢と、同じく高等部三年生、風紀委員長の黒須麗羅くろすれいら嬢です、安曇嬢は華やかに巻き上げた艶やかな黒髪の豪奢な美女、対する麗羅嬢は祖母がロシア人故の淡い色の髪をあご下でパッツンと切り揃えた典雅な美人です。


「いえ、会長、委員長、そこは何故罰ゲームをうけたのか、を、疑問に思う所じゃ無いでしょうか?」


 麗しの2トップに冷静なツッコミを入れたのは高等部一年生、本年度より城生院学園に通いはじめた音楽特待生で生徒会執行部員の天才美少女ピアニスト桃園百合恵ももぞのゆりえさんです。赤みがかったふわふわとした茶髪の小動物の様な可愛いらしい外見と、竹を割った様なサッパリとした性格で既に生徒会に馴染みきっています。


「うん、うん、そうだよね、三人がどんなミスして罰ゲームうけてるのか、スッゴく気になるよね」


 そう百合恵さんに同調したのは高等部一年生、生徒会執行部員の岸元光三朗きしもとこうざぶろう君──彼は庶務に就任する予定です──スポーツ特待生の彼は先頃行われた高校総体で一年生ながらテニスのシングルスで優勝を果たした天才少年です、真っ黒な猫っ毛と日に焼けた甘い顔、チェコ人の父譲りの灰色の瞳を持つ人懐っこいイケメン君です。


 自治会室内の視線が月史君に集まります、人の不幸は蜜の味、三人の失敗談を皆さんワクワクと聞きたがっています。


「いえ、ご期待には添えず申し訳ありませんが、単なる報告漏れですので、聞かせるほどの内容ではございません」


 月史君は陳謝します。


「……あー、単なる報告漏れで罰ゲームはやり過ぎじゃ無いのかー」


 生徒会顧問、高校教師一年生の桜花院覚おうかいんさとり先生が眠そうな口調の中に微かに懸念を入れて副担任を勤めるクラスの生徒である月史君に尋ねます。


「ああ、いえ、罰ゲームは報告漏れに対してと言うより、俺達の職務態度に対して、ですので」


 月史君が弁解しますが、覚先生は微妙に納得していない様子です、その様子を見て、言葉の足り無い幼なじみに変わり今璃ちゃんが説明します。


「んーと、簡単に言えば、ボク達の報告漏れが原因でもしかしたらお嬢の交渉が失敗したかも知れなかったんですね。それで報告をしなかった理由が、ボクの場合しない方がお嬢の利益になると判断したからで、お嬢納得の上でボクはほぼお咎め無し、この格好は単にお嬢がボクに着せたかったってだけで罰ゲームは建前。ひとしちゃんが報告しなかった理由は報告の必要性を感じ無かったから、でもその判断は結果論では正かったけど、失敗した可能性もあったから軽度の罰ってことでその可愛いらしい髪型。最後に緑兄ちゃんはお嬢よりも他の人の意向を重視して報告しなかった、って言う最悪の理由だから、同僚のボク達、及び、年長の使用人達の裁定でその本人だけがとてつもなくみっともないって感じる、色を戻した髪の毛ときっちりとした制服姿の本当の罰ゲームになった訳です」


 城生院学園の優秀な学生さん達は納得の声を上げました、三名のダメージに顕著な差がある理由が解ったからです。


 そして、その今璃ちゃんの説明に緑郎君は机に俯し慚愧の声を上げます。


「ちょっとした出来心だったんだー! 姫さんを蔑ろにする意図なんて無かった! ただ、ちょーと上手く行かなかったらアイツが喜ぶかなぁって思っちゃったんだー! どうせ姫さんが失敗する事は無いって分かってたし!」


 ですが、緑郎君を見つめる同僚二人の視線は氷点下の冷たさです、主至上主義者の二人にとって主の幸せより他者の幸せを優先するなど──たとえ主の望みが叶うと確信済みとは言え──許しがたい行為なのです。ちなみに緑郎君も最優先なのは主、最も大切なのは主、と言う忠臣ですが、主の言う事は絶対、主が白と言えば烏も白な二人とは一線を隔てています、それ故彼は二人とは違う信頼を主から得ているのですが……。


「……ご主人様は甘いから俺達が互いを戒めあわないと」


 主至上主義者(主馬鹿)達は緑郎君のスタンスを理解は出来ていも、納得は出来無いのでした。


「くっ、姫さんはちょっと髪を黒くして、制服をしゃんと着るだけで良いって言ってたのに、ねーちゃんが……自分も嫌な事だから髪の色を戻すなんて最悪な罰を……」


 緑郎君はぶちぶちと愚痴ります、四倉家の髪の色コンプレックスは圓城寺家では有名です。


「ねぇ、それでそのお嬢とか、姫さんとか、ご主人様ってどう言う……」


「とりあえず、実施競技はこれで良いですか?」


 双子の片割れの発言を遮り、これまで一言も発せずに作業し続け完成させた、本日自治会室に集った目的、体育祭実施競技候補の叩き案、それを前方の大型スクリーンに提示したのは、高等部一年生、生徒会執行部員の岸元栄次きしもとえいじ君──彼は副会長の一人に就任する予定です──金髪に灰色の瞳、学力特待生の知的な眼鏡の色気のある美形です。


「……うーん、わたくしとしてはもう少し遊びがあった方が盛り上がるし、楽しいと思いますけれど……」


 生徒会長の安曇嬢はもう少し派手な競技を入れたい様です。


「……いいえぇ、これ以上は看過出来ませんわぁ、今でも風紀としてはぁ、この仮装鬼ごっこは少々、認められませんのぉ」


 風紀委員長の麗羅嬢は競技内容が少し過激だと感じる様です。……流石名門城生院学園の2トップ、切替の速さは他の生徒の追随を許しません。


「……ですけれど、会長方、これからまた体育祭実行委員や体育委員を交えた会議を行うのですし、この叩きに二、三加えて一、二落とすぐらいがちょうど良いのでは無いでしょうか?」


 栄次君の言葉に全員手元の資料に目を落とします。まずどれを入れるか、そこを決める為個々のイチ押しを選びはじめます。


「…………………………」


 光三朗君がちらりと片割れを見ます、普段ならば喜々として場を引っかき回す兄が真面目に働く理由は……。


「……光君? どうかしたか?」


 目が合った双子は視線で会話をします。


 ──栄ちゃん、三人の主って、栄ちゃんが……、


 ──光君、それは明日のお楽しみ、予備知識は無い方がきっと楽しめるから、


 ──うー、分かった、でも、今日の栄ちゃん真面目過ぎ、ハルちゃんあたりが訝しむよ?


 ──そうだな、……後で適当に煙に巻こう。


 双子が会話(無言)を終えた頃、それぞれが選んだ競技のプレゼン大会が始まりました、弟から真面目過ぎて今日はおかしいと言われた栄次君は、


「その、ミスター城生院プリンセス競走? 今日の男子達の反応を見るに六崎の圧勝になるんじゃ無い?」


 と、常通りのからかう様な笑みを浮かべながら、提案された競技を却下したのでした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ