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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第二章 彼らは孤高の生徒会長とヒロインその1、又は、斜陽の令嬢と主人公その1、でした。

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13、第3の女の子と明かされた真実

 





 今日は九月某日、曜日は月曜、私は生徒会の仕事の為訪れた自治会室で衝撃の真実を知った、それにはまず双子が受けた契約の話をせねばなら無い、


「……はあっ!? 既に栄次えいじは契約済みだと!?」


「ああ、木曜に提案された時に即決した」


 元治もとはる君が驚きの声を上げたのは岸元きしもと栄次が圓城寺えんじょうじが特待生に対し設けている特殊プラン、系列会社での実地研修、つまり将来の圓城寺グループへの就職を決めた事を知ったからだ、


「アハハ、俺はまだ契約して無いけど……うーん、やっぱり圓城寺にするね」


 そして光三朗こうざぶろうはプロ転向後のメインスポンサーとそれまでのサポートの契約を提示されたそうな、


「あれ? 栄次君と光三朗君は創立御三家の庇護下になかったの?」


 百合恵ゆりえさんが驚いた様に尋ねる、もちろん創立御三家とは桜花院おうかいん、圓城寺、桐生きりゅうの三家を指す、


「うん、俺と栄ちゃんはね、本当は一般入試で中等部に入る予定だったけど、才能を伸ばす為って学園長に提案されて特待生になったんだー」


「ちなみに、両親が言うには家は寄付金トップ20には入っているから堂々と最高の教育を甘受しろ、だそうだ」


 へー、トップ20なんだ想像以上に寄付して下さってるんだな……まあ、寄付がお金持ちの当然の義務な欧米でずっと暮らしてたんだもんなー、と岸元家が寄付金をはずんでくれてる事を知っていた私とさとりはふーんという感じだったが……、


「はあっ!? ちょっとまて!? じゃあ、お前ら俺達と同じ庶民特待生じゃなくて、一般入試生側のボンボンかよ!?」


 他の面々には同級生の特待生明石(あかいし)君の叫びに半数近くが頷くくらいの衝撃だったらしい、


「えー? ボンボンじゃないよー、俺達月一万円で携帯代やら、服代やら、買い食い代をやりくりしてるんだよー」


 岸元家の双子のお小遣は月一万円らしい……うん、それは厳しめだ、


「いや、そもそも明石、お前家の親知ってるだろう、ミリオンCDを十数枚も出して金が無い訳無いだろ?」


 だよねー、印税だけでがっぽがっぽだよねー、その上コンサートはチケット即日完売、ネットオークションでは十数万の値が付くほどだもんねー、庶民のはず無いよねー、


「いや! そんな当たり前の事はともかく! 光三朗、何故スポーツ分野に実績のある(桐生)では無く圓城寺なんだ!」


 ああ、うん、話を戻そう、


「えー? だって桐生は欧州支社無いじゃん? 俺が将来転戦するのは約半分が欧州だよ?」


 あー、そうですねー、うん、桐生は主に国内を席巻している企業だからねー、うん支社は北米とアジアにしか無いんだなー、


「……だが!!」


「それに加え圓城寺の食品部門が栄養管理、繊維部門がウェア開発、遺伝子研究所がDNAを元にしたトレーニングメニューを、さらにプラスしての欧州支社のコネでの一流のコーチ招致、だそうだ」


 栄次君がさらなる圓城寺の利点を上げる、


「まあ、それは凄いですね、ふふ、ならば圓城寺を選ぶのは必然ですね?」


 うむ、当然の結論だろう……それよりも、


「……先週の木曜日? と言う事はもしや、緑郎ろくろう君達が受けた罰ゲームと関係が?」


 うむ、あのいまちゃんの可愛すぎなネコミミパーカー姿の原因が前日の彼らの主──圓城寺紗々蘭(ささら)ちゃんが行った交渉にあったそうだ……つまり、


「ええ、優菜ゆうな先輩、俺が思わず即決した理由。それは絶世の美少女に熱烈に口説かれたからです」


 ……マジか!? ああ、でも雇用契約だけか……うん、そうだね、こんだけゲーム設定が行方不明なんだもんね、二人が婚約・・するはずが無いよね……栄次君は綺麗なものは大好きだけどロリの気は無いもんね、


「ふふ、元佳もとかちゃん情報で圓城寺の御令嬢が素晴らしく美しく賢い方だとは聞いていたけれど、ふふ、栄次君を口説き落とすなんて、想像以上に素晴らしい方なのね? ……ふふふ、とーてもうらやましいわー」


 栄次君が私の表情を見て固まる、なんだね失礼な、素晴らしく綺麗に笑っているだろうが、


「えっ!? いや、その……ええと、優菜先輩は圓城寺の姫と余り面識が」


「生後一ヶ月から会っていませんの」


 ええ、その頃に圓城寺では色々あったし……その後はあの毒婦の不始末のせいでな!


「……ふふ、その少し後、我が家があちらにご迷惑をかけまして……ずっとお会い出来て無いの」


 うん、ほんと、超会いたいんだけどね……すると今まで黙っていた月史つきひと君が唐突に口を開いた、


「あの……もしや、優菜様はご主人様──紗々蘭に会いたいのですか?」


「ええ、それはもちろん」


 当然だろう? 数少ないご近所美少女なんだからな、


「……でしたら何時にしますか?」


 ……は?


「……何時とおっしゃられても……あの……我が家は圓城寺家に接触を禁じられて……」


「えっ!? いやいや、優菜ちゃん? 確かにちょーと御当主はキレたけど、直ぐなだめられて、原因のお方が去った事だし、大事にはしない、というより桜花院とは今まで通り付き合うって事になったよ?」


 緑郎が私の発言を訂正する……え?


「……つまり、出禁では無く自主規制?」


「あの、優菜先輩? ええと、その、梨絵様が圓城寺で研究している事はご存知ですよね? じゃあ、ええと、朋子様がお嬢に礼儀作法や社交界の歩き方を教えてくれているのは」


 いまちゃんが言い難そうに尋ねる…………うん、


「……ええ、知っています……そう、です、ね……信が置けない相手にそんな事は頼みません、ね……ふふふふふ」


 ……私は立ち上がりさとりの元に向かった、そして無言で抱き着いた、覚も無言で抱き返す、私達兄妹の心は一つ、


「「絶世の美少女の成長を見守り損ねた~!!」」


 自治会室に桜花院兄妹の悲痛な叫びが響いたのは必然である……うっうっう。




 その後、なんとか立ち直り、常の様にミナモさんと訪れ──覚の命であの誕生日の未遂事件から伴う事が義務となった、ミナモさんにも理由は知らされているらしく、ミナモさんの元治君への態度がとてつもなく冷たくなった──た桐生家で私は、とても、混乱している、いやだって、


「お初にお目にかかります。わたくし圓城寺紗々蘭の護衛、六崎楪影むざきゆずりえと申します。本日は主人の命により、お怪我をなさった元佳様を送らせていただきました」


 そういうと彼女は元佳ちゃんをお姫様抱っこしながら目礼した……えーと、


「! 元佳!? 怪我って!? 大丈夫なのか!? 直ぐ医者に行こう!」


 元治君は私以上に混乱している……うん、それを見ているととても落ち着く、


「……落ち着いて元治君、元佳ちゃんが診療所で処方された湿布の袋を持ってるわ、もう診てもらったのでしょう?」


「ええ、姉様、少し足を捻っただけなのに、あの子ときたらその場にいた楪さんにわざわざ診療所に運ばせ、その上家まで送らせたのよ」


 どうやらただの捻挫らしい、それは何よりだ、


「ふふ、そう、相変わらず元佳ちゃんと圓城寺の御令嬢は仲が良いのね……それで楪影様? よろしければこのまま元佳ちゃんをリビングのソファーまで連れていってくださる?」


「! いや! 俺が変わりに」


「元治君、元佳ちゃんは荷物じゃないのだから受け渡しなんて危険な事はするべきではないわ……元佳ちゃん、持ち物を預かるわ……ああ、これは履いていた靴ね? シューズクローゼットに入れておくわ」


 いまだにオロオロとしている元治は無視し、元佳ちゃんの両手を空け、楪影様が靴を脱ぎやすくする、そして私は彼女をリビングに案内する……ヒロインその3(・・・・・・・)こと六崎楪・・・ちゃんを……うん、夢が叶った様で何よりです、おめでとう! ゆずぴょん!




 さて、ゲームでのヒロインその3こと六崎楪は圓城寺紗々蘭の護衛になるべくここ桜花市にやって来た、が、紗々蘭ちゃんは彼女の実力が足りてない事を理由に専属を拒否、傷心のゆずぴょんは護衛としての腕を上げるか、それとも普通の恋や友情に満ちた学園生活を送るかの二択を迫られるのだ! 


 ちなみに護衛ルートを選択すると義兄二人を含む圓城寺家の人々プラス学園の脳筋コンビ春日井柊耶かすがいしゅうやと岸元光三朗が対象者になり、学園生活ルートを選ぶとその他の対象者を攻略出来る。そんな彼女の夢が名前に『影』六崎家における女性の専属護衛の証──ちなみに男性は『月』──をつける事だったのだ!


 ……うむ、我ながらテンションがおかしいな……だが! ゆずぴょんは正直ヒロイントリオで最も好みの美少女なのだ! 黒髪美少女最高ー!! 儚げ脳筋可愛いー!!


「ふふ、ありがとうございます、楪影様……よろしければお茶を飲んでいらして? 恩人をそのまま帰す訳にはいきませんわ?」


「ああ、いえ、私の事はただ楪と、そう呼び捨てになさってくださいませ……それに私は主人に命じられただけですしどうかお構いなく……」


「それは駄目よ、楪さん、姉様が言う様に貴女は恩人なのだから……恩人に茶の一杯も出さずに帰すなど桐生の名折れ、おとなしくもてなされてちょうだい」


 もてなしを固辞しようとしたゆずぴょんを元佳ちゃんが窘める……ああ、もう、ほんとに、


「……眼福です」


 私の思わず漏れ出た魂の声に桐生兄妹とミナモさんはまた始まったという視線を送り、ゆずぴょんはキョトンとした顔をした……ああ、生きてて良かった、




 その後、帰宅した元樹もとき君──弓道部の練習で遅くなった──が元佳ちゃんの怪我に動揺し兄と同じ様な行動をしたり、ゆずぴょんから桜花市での生活について聞いたり、遅くなるらしいお母様──桐生(あおい)さん桐生三兄弟の母で桐生の現当主、呼び方は指定されてます──に代わりお風呂を禁止された元佳ちゃんの着替えを手伝ったり体を拭いたり、ミナモさんと一緒に夕食を作りそのまま一緒に食べたり、をした為、すっかり帰宅が遅くなった私とミナモさん、危険は皆無とはいえ念の為、私は元治君に──ミナモさんは直帰してもらった──家まで送ってもらった、


 そして私は玄関の前まで来た時に元治君に尋ねた、


「……ねぇ、元治君、元治君は楪さんを見てキュンとしたり、恋に堕ちそうになった?」


「……やはり、あれがヒロインその3か……いいや、一切そんな気は起きなかった」


「……ふふ、そうですか……ではお休みなさ」


「優菜は……優菜は俺が彼女に恋をしてても良かったのか?」


 私の挨拶を遮り元治君が問う、明かりの乏しい屋外ではその表情までは伺え無い……私は……私は、


「……良くは、無い、ですっ! ではあの! お休みなさい!」


 私はやっと直視した本心を伝えそのまま家に駆け込んだ、


 ……だって、だって仕方ないじゃないか、ずっと、ずっと一緒で、ずっと、ずっと守ってもらってたんだ、


 ……そりゃ好きになっちゃうだろう、


「? ゆーちゃん? どうしたの? 大丈夫?」


 混乱し玄関に座り込んでいた私に覚が声をかける、


「……覚……私ゆずぴょんに会った」


「! ヒロインその3に!?」


「……覚……元治君は彼女にも興味を示さなかったよ……」


 覚は私の隣に腰を下ろす、


「……うん……」


「……覚……覚……私……」


 覚は無言で私の頭を撫でる……ああ、本当に、


「ふふ、覚はずっと出来た兄弟だ……」


「……俺が出来た兄弟なのはゆーちゃんがずっと優しい姉妹だからだよ」


 覚がニッコリと笑いながら私を立たせる、


「……覚、私ね……」


 私が伝えた決意を覚は無言で認めてくれた。








 

本編で入れ所の無かった、もう一つの『真実』


桐生三兄弟とミナモさんと囲む食卓で私は秋刀魚のハーブソテーを食べながら今日覚えた感動を語る、


「うふふ、楪さんはとても綺麗な方だったわねー、その上、クラシカルなメイド服が良くお似合いで……」


 うむ、ゲームでは着ていなかったがそれはさておき最高に似合っていた、


「あの……優菜様? 優菜様はああいった若いメイドを雇いたいのですか?」


 不安げにミナモさんが尋ねる、いやいや、


「まあ、違いますわ! 私の側仕えはミナモさんだけです! ……ただ、少しメイドさんにときめいただけで……」


 うん、メイド服は乙女の夢だ……反論は認めん、


「……でしたら……その……メイド服、を私が着ましょうか?」


 ! み、ミナモさんのメイド服姿!


 説明しよう! 桂瀬ミナモさんは来年の三月に二十九歳になる女性だ! が! 彼女は素晴らしく童顔なのだ! 基本的に大学生、服装によっては高校生に間違われる様なかわいこちゃんだ!


「是非っ! 是非お願いします! ああ絶対似合います! ああ、でもそのミナモさんが叱られたりは……」


「いえ、元々母が若い頃はそういった格好で勤めていましたし……その、出て行かれた方が厭われまして……」


 なんと! 昔は桜花院の制服はメイド服だったらしい……というかまたあの……まあ、いい、


「うふふ、ならば安心です! 早速帰ったら……ああ、いえもう遅いですし明日、家で採寸をしましょう! ふふふ、ミナモさんには黒よりブラウンの方が似合いますよね……うふふ、腕が鳴りますわ~」


 ちなみに私の趣味兼特技はお裁縫だ、前世は自作品の登場人物のコスチュームを作り、マネキンに着せブログに載せるのが好きだった、今世も元佳ちゃんに彼女好みのワンピースを作ったり、自分用に部屋着を作ったりしているのだ、


「うふふ、本当に楽しみですわ~、頑張りますね~」


 ……そして、私を見る桐生三兄弟とミナモさんの顔が引き攣っているのは見なかったことにしよう、うん。



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