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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
第二章 彼らは孤高の生徒会長とヒロインその1、又は、斜陽の令嬢と主人公その1、でした。

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12、リアルヒロインは恋愛など要らぬ。





 そして四月中旬、ゲーム同様……いや、微妙に異なってるんだけど、百合恵ゆりえさんは生徒会に入って来た、


 ちなみに微妙に異なってる点は、ゲームだと特待生のほぼ義務的な参加だったんだけど、百合恵さんの理由は『一年生は実力テスト五位以内がスカウトされる(こっちには強制力は無い)』に頷いたそうだ、生徒会顧問をゲーム同様やらされているさとりによると、理由は前に言っていた『圓城寺えんじょうじへの恩返し』らしい、


 で、今、目の前で百合恵さんが、


「はじめまして、桃園ももぞの百合恵です、音楽特待生でピアノ専攻です。コンクールを控えた時は余りお手伝い出来ませんが、学園のお役に立てる様頑張りますのでご指導よろしくお願いします」


 と、就任の挨拶をしている……あーもうっ! リアルヒロインやっぱり可愛えぇー!! やばい! テンション上がる! ふわふわの赤みがかった茶髪、薄茶のクリックリのお目目、ちっちゃい顔、ほっそい手足、ちっちゃい身長! あー可愛いなー……な、の、に、


「はじめまして、桃園さん、書記の四倉緑郎よつくらろくろうです……俺も圓城寺の人間なんだ、ひとし──六崎むざきから聞いたよ? 『恩返し』発言、姫さん超感激してたし、俺もグッと来たから、困った事があったらなんでも言いな? 姫さんからも言われているし」


 ……おい、緑郎あんたゲームでは女ったらし設定だったよな? 別の女から言われたから助けるって……誰が喜ぶかっ! ……あれ? 喜んでる……そうか、お姫様に言われた方が嬉しいのか……、


「はじめまして、桃園さん、風紀委員の春日井柊耶かすがいしゅうやだ……あー、一応聞いておくがその髪は自毛なんだね? この馬鹿の様に染めている訳では無いね? いくらこの学園が頭髪に関しておおらかだとは言え、生徒会に所属する者は模範となるべきだからな……小舅の様だが風紀委員として気になったのだ……不快に思ったのなら謝罪する」


 不快に思ったさっ! 少なくとも私はなっ! 柊耶……いくら風紀委員の真面目キャラとは言え、それは無いだろう……って!? なんで、真面目に頷いてるんですか百合恵さん、そこは怒って良いとこですよ!


 だが、それ以上に酷いのは、同級生達の様で……、


「桃園さんの髪は天然ですよ……色もパーマも、当人は軽く気にしている様なので……春日井先輩、あまりつっこまないで下さい」


 ……うん、栄次えいじ君……フォローのふりしてからかってるよね、って、うわっ、百合恵さんひっぱたいた! ……凄い! 超強い!


「桃園ちゃんは一見ポメラニアンみたいだけど、中身はシェパードみたいに強くてカッコイイんだよー」


 光三朗こうざぶろうー! 乙女を猛犬に例えるなっ! あっ、今度はアイアンクローをっ……そういえば弟がいるんだよね……うん、ああなるよね……、


「……そこの双子、いくら友人とは言え、女性に対する礼儀が足りないのではないか?」


 ……おお! さすが元治もとはる君! 紳士だね!


「……桐生きりゅう君……何か悪いものでも食べたの?」


 ……あれ?


「優菜先輩の前ではいつもこうだ」

「優菜先輩の前ではいつもこうだよ~」


 ん? どういう事だ? そして何故深く頷いてるの百合恵さん! やめて! 微笑ましそうに私を見ないで皆さんっ!


 私のメンタルがガリガリと削られていると、


「……どうぞ……優しい味のディンブラにアカシアの蜂蜜を少し垂らしました」


 と、穏やかな表情で月史つきひと君が紅茶を差し出してくれました……どうやら生徒会執行部の中で一番の紳士は月史君の様です……攻略進めなければね……、


「あらあら、困った男の子達だ事、改めてご挨拶させていただくわ、百合恵ちゃん、生徒会長の白里安曇しらさとあずみです、 ごめんなさいね? うちの執行部員ときたら女の子の喜ばせかたを知らなくて」


 困ったものねぇ、と、艶やかに笑うのは牡丹の様な美人生徒会長の安曇様……うん、美少女と美女の取り合わせサイコー!!


「はじめましてぇ、百合恵さぁん、わたくしはぁ、風紀委員長の黒須麗羅くろすれいらですのぉ……風紀委員がぁ、みんな柊耶さんみたいにぃ、小舅ではありませんのでぇ、安心して下さいねぇ」


 独特の間延びした話し方で挨拶するのは風紀委員長の麗羅様、石楠花の様な美人です……うん、クォーター美人に指導される、子犬系美少女も良いっ! ……ああ、おっと、


「はじめまして、百合恵様、副会長に選んでいただいてます、桜花院優菜おうかいんゆうなと申します、可愛いらしい後輩が生徒会に入って下さって、とても嬉しいですわ」


 そしてもう一人の副会長──涼やか一重の大木の様な木嶋きじま先輩、──と、風紀副委員長──癒し系眼鏡の泉の様な早水はやみず先輩──そして、今日空いていた特待生二人──プログラマーの一年生、明石あかいし君と、陶芸家の金田かなだ先輩──が挨拶した、ちなみに全員男性、中等部からの持ち上がり組、


 ……うん、本当に、百合恵さんが来てくれて良かったよ……入ってくれなかったら来期は強制紅一点だったもん。




 そして場は打ち解ける為の雑談に移った、


「……そういえば百合恵ちゃんは恋人とかいらっしゃるの? もしいるならばおっしゃって? その分暇なシングル達に仕事を振るから」


 安曇様が思い出した様に百合恵さんに尋ねる、城生院は恋愛に寛容な学校だ、婚活は保護者が学園に通わせる理由の一つでもある、もちろん婚約者同士が通っている事もある、


「いいえ、今はピアノに学業や友情、家族との時間を大切にしたいので恋愛はいらないです」


 百合恵さんは切り捨てる様に言い切る、自治会室がピリッとするほどの語気で、そしてそれ以上踏み込まれたくないのか、拳を握り俯く……空気は重く誰も話し出さ無い、そこに……、


「遅れてすまないなー、教頭からアドバイスやら注意やらをうけててなー、あー、はじめましてー、今年から顧問を押し付けられた桜花院覚だー、まー、俺の事は空気だと思ってくれー、後、俺にも紅茶ー」


 と、覚が乱入し、そのまま適当な自己紹介をして、顧問用の椅子にだらーんと座った、空気を読まなかったのか、それとも読んだのか、付き合いが長い──そりゃ、二世の仲だ──私でさえ余りわからんが、それでも張り詰めた空気は消えた、


「……ふふふ、風紀委員としてはぁ、アッパレな言葉ですわぁ、学生の本分は学業と友情ですものねぇ?」


 そして麗羅様がふんわりとした空気にする、ようやく百合恵さんも安心した様子になり、


「ええ、私は不器用なので、本分だけで精一杯なんです」


 と、おどけた様子で答えた、そしてこれ以降自治会室では百合恵さんに恋愛の話を振ることは無くなった。






「ででっ! 優菜先輩は桐生君のどこが好きなんですか? やっぱり顔ですか?」


 ……百合恵さんからはガンガン聞いて来るけどねっ!






 

ちなみに『栄次君の常とは違う放課後』の会議にも木嶋早水コンビは出席していました。


……二人は寡黙な男です。


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