第二十七話 一玻『神、降臨』
チャットのやり取りで気がついたらゲームで勝負することになりました一戸一玻です。家の完全無欠なお嬢様いわく、
「見事に狂わかされたな」
らしいです。……うう、否定出来ないぃ、ですが!
「勝てば良いのです! なのでほぼリアルタイムな自治会室前の監視カメラを確認します!」
自治会室内には無いけれど入り口にはあるんですよね。
「あ、入室したのは高校生カップルだけですね」
調べたところチャット中に、お兄さんは家のダイナマイトな天使ちゃんとお茶を楽しんでいました。
「……つまり選択肢は二にまで絞られました」
それから……、
「変換の癖で……んー、言葉選びは似ていますねー、二人、ですが……改行の頻度を鑑みるに……彼氏さんの方ですね」
じゃあまず彼氏さんで次お姫様で良いでしょうねぇ。
「……一玻……有能だし頭は悪くねぇのに……」
「ふふ、可愛らしいじゃないですか」
「そうそう。俺達がフォローすれば良いんだし」
「あ、姉様、お茶のお代わりいかがですか? 苺クレープもありますけれど」
「飲む! 食べる! お茶は紅茶をオススメの茶葉で!」
「あ、じゃあお茶くみ僕も手伝うよ」
「……カップは人数分でよろしいですね」
「クレープと、取り皿運ぶよー」
「「「クレープ、クレープ、苺クレープ!」」」
……ええと、
「勝ち負け……興味無いのですか皆さん」
自由ですね! そして私にもクレープを!
「んー、だって、受けた時点で負けているし」
ほれ、と、紅茶とクレープをくださりながらお嬢様がコテンと首を倒します。……負け、ている?
「え、どういう意味です?」
「だって正解すれば必ず一つルールをプラスだろ?」
………………あ、
「あちらには一つ、どうしても譲れないことがあるんだろう」
………………あ、
………………うう、こちらにダメージが無いことで、お願いします。
「まあ、それはもう置いとくとして……こちらが望むルールはどうするんだ?」
…………………………あ、
「デメリットのなさに気を取られ、メリットの方を考えてなかったー!」
色々話し合いましたが、結局、あちらの願いを聞いてから考える。ということになりました。
そして、迎えた対決の日。事前に学園長様から届いた──やはりご家族にはカミングアウト済みでした──箇条書きにされたルールに同意を告げ、読み込み、対策はバッチリです! ……多分、
ちなみにルールは、
転生者は前世のFLCの記憶がある者を指す。
候補者は三名。
事前の質問は無し。
交互に回答。
指された者が『転生者』でなかった場合、ヒントを与える。
その他のルールは原作に準じる。
の六つでした。
と、いう訳で、
「候補者として深子ちゃんと仄ちゃんを貸して下さい!」
「別に良いが……ひっかけにもならないだろう」
うう、他の方も考えたのですが、
「……司皇その他の改変者と考えると、ずっと屋敷に居た人に限られるんですよぉ、料理長や四倉兄弟も考えたのですが……」
前世の私をご存知ならば、
「……男性より女性かなぁ、と」
……だって私、
「前世でも勝負服はゴスロリでしたから」
料理長も四倉兄弟も女装NGなのです。
そして決戦のお昼。私は中央塔のサロンの扉の前で、深呼吸をしています。お嬢様と緑君が、ゲーム? 転生?? なヤンデレカップルに説明をなさってくれてますので、扉を開けたら即対決なのです。
「大丈夫、紗々蘭がなんとかフォローするから、安心して負けな」
「ええ、そうですよ」
……………………、
「なんで負けるの前提?」
「「私達もゴスロリ無理だから」」
………………はい、
実は、この二人も、スカート履かない人達なのでした。
……では、
「桐生元治君。あなたが転生者ですね」
代表者として──二人は嫌がりました──予定通り生徒会長殿から指名します。あちらの三名は私が予想した三名でした。
「いえ、俺に前世の記憶はありません。……ヒントは……ああ、俺はアル×ヴィオ派、ですかね」
そして譲られた先攻で……間違えました。……ヒントアル×ヴィオ……、
「……可愛いカップル派なのですね」
アル×ヴィオは主人公とライバルの弟妹です。……私も好きでした!
「では、代表者の俺が……」
だから正解かな? って思ったんですよぉ、
「一戸一玻さん、あなたは転生者ですね」
「……はい、そうです」
はい、当然ひっかかってくれませんでした! ですが!
「……桜花院優菜さん、あなたは転生者ですね」
「ええ、そうですよ」
ここは間違っていませんでした! ふふ、とりあえず最悪の結果にはなりませんでしたね。……では
「昼食を摂りつつ、話し合いに入りましょうか?」
ニッコリ笑い、美人な転生者さんに提案します。っていうかこのお嬢さん、前世で何者だったのでしょうね?
「……ええ、ではゲームは終了で?」
………………?
「は、い」
って、あれ? なんでそんな悪い笑顔を優菜様!?
「じゃあこの勝負、こちらの一正解、そちらの一正解、一間違い、一漏らし、で」
………………え、
「漏らし?」
「クククク、カトリーヌ。原作でアッシュがどう勝ったか忘れたか?」
……げ、原作、で、
「ええと、攻撃者『狼』の数を誤認させて……本当は彼一人なのに複数いると……なので敵は不正解を量産し……」
ん?
「なんで敵方は不正解を続けたんだっけ?」
「それは正体がバレなかった『狼』はルールに縛られ……え」
……まさか、
「と、いうことで~、俺、前世の記憶持ち転生者桜花院覚は~、これからカトリーヌが告げるルールに~、縛られません!」
………………ま、
「またやってしまいました!」
どうして私はこう迂闊なんだ!
落ち込む私をしり目に昼食を楽しそうに始める皆さん。……今日も料理長は絶好調ですね。……お腹すきましたね。
「……いただきます」
いつも通り美味しくみんな無言で食べ終えました。……美味過ぎると会話が不能になるんですよ。
「……ええと、それでお二人は前世の私と知り合いだったんですよね?」
食後のお茶を飲みながら尋ねます。……ううん、心当たりが、
「え~、わからないのカトリーヌ? あんなに愛を叫んでくれたのに~」
椅子から立ち上がりこちらを見て、覚様が眉を下げる。………………あ、い?
「ああ、あんなに尽くしてくれたのに……私は直ぐに君だとわかったぞ?」
長いおみあしを組みながら優菜様が続ける。……つくした?
「…ホント~にわからない? ……借金までして貢いでくれたのに」
優菜様を背後から抱きしめながら更に覚様が続けます。……貢ぐ?
「……ええと、あの?」
他のカトリーヌと間違っていませんか?
「……一玻……はあ、元治さんが言った『ヒント』は?」
え、お嬢様はお分かりに? ヒント?
「え、アル×ヴィオ?」
……番外編で良い雰囲気の二人でしたが。
「それを転生者ではない元治さんが知っている理由は?」
……え、あれ? 確かになん、で……あ、れ、つまり?
……ま……まさか……そんな……そんな素晴らしいこと、が?
私はお茶をコクンと飲み干し、優菜様と向き合います。……そして、
「………………かみさま、です、か?」
期待に震える声で問い掛けます。
……その、答えは、
「カトリーヌ、信心が足りないな」
そう呟き誘うように手を差し出す優菜様……否!
「あ、姉神様ー!」
神が……神が現世に降臨召された!




