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この学園には攻略対象者はいません。  作者:
最終章 転生者が望んだ閉幕。

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第十九話 翔馬『再会、後に審査、って何で!?』

 





「これからあなたを審査します」


 五月初めの放課後。作り物のような美貌の少女が、人形のような無表情で、周囲に美少年を侍らしながらそう告げた。



 ことの発端は多分そう、一週間ほど前、


「……調子乗ってんなよ庶民が」


 給食後、とある目的──姫様へのバースデーカードを教室前の臨時ポストに入れる──の為、一人でクラスに戻る途中に、ギリ聞こえるくらいの音量で言われたことが当たると思う。その後も一人で廊下を歩いているとボソリと悪口のようなことを言われたり、わざとらしく笑われたり、丸めたノートの切れ端──多分心を傷つける言葉が書いてある──をぶつけられたりした。


 まあそれ自体は別にどうということじゃない。出る杭は打たれる。ってことでままあること。地元でも少なからずあったしこれまでの繰り返しでもあった。


 けれどこの学園はイジメや庶民云々ってことに非常に厳しく、ちょっとした陰口や他愛ない嫌がらせ程度で終わるだろうと高をくくり、人目があれば接触されないし、となるべく友人といることで彼らの熱がおさまるのを待つことにしてた……、


 んだけど……昨日はちょっと油断した。放課後、レッスンと生徒会の仕事がある姉ちゃんを図書館で年長な友人達と会話しながら待ってた僕は、ちょっとメモをとろうと鞄を開き……筆入れを忘れてることに気付いた訳です。で、まあ授業が終わって結構経ってるしと教室に戻ろうとしたら、 


桃園翔馬(ももぞのかけうま)っ!」


 多分上級生の少年四人に囲まれた訳です。



「ほんとお前目障りなんだよっ!」


 との言葉と共に、リーダーなんだろう俊敏そうな少年から頬に一発もらい座り込みました。


 や、避けれましたけどね……ほら正当防衛アピって重要じゃないですか?


 で、うし、反撃じゃ、と立ち上がろうとしたら、


 大学スペースとの間の門が開き、


 大きな本を抱えた僕の愛する姫──桐生元佳(きりゅうもとか)様が現れた。


「も、元佳様!? ええと、これはその……」


 僕を殴りつけた少年が言い訳じみたことを言っているみたいだけど、


 僕と彼女にとって彼と仲間達は空気だ。


 彼女は僕を探るようにじっと見つめ。


 僕は愛する人の視線を独占出来ていることに興奮していた。


 彼女は僕に満足したのか、


 小さなピンク色の唇を笑みの型に変え、


 僕も答えるように口角を上げた。


 ──ああ、この圧迫感、さすが僕の姫様だ。と、


 けれどその時、


「……何を、なさっておいでですの?」


 と、異様に耳障りの良い声が場に染み渡り。僕と姫様の互いのカタチを確かめ合うような視線の交わし合いは終わりを告げた。


 内心の不快を隠し中央塔の方を向くと──そこには聖女のような笑みを浮かべ氷のような視線で少年達を見る人形姫がいた。



「助かりました。何やらよくわからないことを言われながらこちらに連れて来られたもので」


 少し困ったような笑みを作り、僕は一瞬で場をおさめた少女と向き合っている。加害者な少年達は五藤伸喜(ごとうのぶよし)、人形姫の配下の眼鏡少年──毒舌だけど良い奴──と七瀬(ななせ)クロエ──見た目だけ美少女──が校舎に連れて行った。氏名等を確認中だそうです。


 で、中庭に残った僕は学園での庇護者だったりする、(たく)君と美人な子持ち護衛の(ほのか)さん──(あかり)君と(ひとし)君のママさん──を側に控えさせている少女──圓城寺紗々蘭(えんじょうじささら)の質問、


「……あのようなことはこれまでもございましたの?」


 に答えてます。


「いえ……転校して来てから何度か他愛ない嫌がらせはありましたが暴力的なことは今回が初めてで……さすがに明日あたりに拓君に相談しようと考えていましたが……」


「いや、嫌がらせの時点で相談してよ」


「だって……実害の無い陰口や悪戯だし……」


 ちょっとしたことで泣きつくのはね……ちょっと。 


「あのね翔馬君、君が圓城寺庇護下にあることは学園中に周知してるんだからそれを無視して嫌がらせとか家が馬鹿にされてるってことだから……すぐ報告欲しかったよ」


 ……あ、あー、それは。


「……ああ、なるほど……すみませんそちらの矜持を損なうことをしてしまって……」


 悪かったです。一応愁傷な感じで謝ります。すると、


「いえ、あなたにも男児としての矜持がありましょう。理解出来ますわ」


 それに応え圓城寺紗々蘭は気にしていないと笑った……多分表面上……でも、乗っからせてもらうかな?


「お許しいただきありがとうございます……ええとそれで……拓君その、長々話してるけど……紹介してくれないかな? お三方のことは一方的に知っているけど」


 姫様に堂々と話し掛けられるように!


「あ、ごめん! ええと、このカッコイイ美人がオレの上司の……」


「はじめまして、六崎むざき仄です。息子達からお話はかねがね」


 うん! たしかにカッコイイ!


「そしてオレの主人の……」


「はじめまして圓城寺紗々蘭と申します」


 !? え、何!? その鳥肌もんの笑顔……怖っ! 表面には出さないけど!


 そして……!!


「ええと……そして……主人の友人の……」


「……はじめまして私は桐生元佳よ」


 全身で不信感を表現しながら一応って感じで姫様が挨拶して下さった。 


 下さったんですよっ!


 ……あーもうっ!


 最っ! 高っ!


「で、彼は転校生の……」


「はじめまして桃園翔馬と申します。それで……」


 歓喜に緩んだ頬を取り繕うこともせず。僕は主に姫様に対し恭しく礼を取り、そしてその足元にひざまずき、


「桐生元佳様。僕をあなたのものにして下さい」


 と、乞い願った。


 決して引くつもりはないと視線に込めて。



 で、翌日である今日の放課後、拓君に連れられお邪魔した中央塔で、会話の流れからこれから何回、何十回とするだろうプロポーズの第一回をしたところ、


「……ならば私の出番だな」


 と、スチャと手を上げ合図を送った人形姫の、


「え? ちょ、ちょっと!? 拓君!? それにええと伸喜君!? な、何で別室に!? あ、ちょっと待って!?」


 年少従者達に別室に連行され、


「これからあなたを審査します」


 との冒頭の宣告を受けた訳です。


 

 堂々と宣告した少女はけれどコテンと首を傾げ続けた。


「でも、審査って言ってもなぁ……君の能力、家庭環境等は問題ないのは知ってるし……うん、ここは一つ私にモカたんへの愛情の質と量を示してみよ?」


 と、それは……、


「…………望むところですっ!」


 つまり全力で姫様を褒めたたえれば良いってことでしょ!



「……で、あの姫様の照れてる時のちょっと上擦った声がまた」


「うん、うん、最高にキュンと来るよな。パタパタと手を上下させる仕草とセットだと特に」


「その後の拗ねられた顔も」


「思わずギュッとしたくなるよな」


 ……ヤバい、ものすごく話が弾む。


 姫様への愛情を示すという楽しい試験は十分後には圓城寺紗々蘭と僕の、姫様ファンの語らいにシフトして行った。周囲の従者達は生温く主人と僕を見ている。


 ……っていうか本当にこの人圓城寺紗々蘭? これまで会ってたあの人形姫とは別人なんだけど……言動だけじゃなく容姿も。


 深遠のように光の無かった大きな瞳は星を宿したようにキラキラと輝き、白過ぎて幽鬼のようだった肌は、白いは白いが健康的なレベルにおさまっている。なので血を吸ったみたいな、と感じてた唇の紅さも気にならなくなり……多分美少女度アップしている。前までの方がマニアうけはしたかも知れないけど。


 ……そして、言動は容姿の倍以上に別人。


 前世までの彼女、圓城寺紗々蘭は感情、好悪、欲求、といったモノが欠落し、ただ息をし、たまに周囲に対し反応する。そんな『人形』だった。


 婚約者や父、従者達、そして姫様から溢れんばかりに愛情を注がれてたのにも関わらず!


 だから大っ嫌いでしたよっ! コイツの為に表情を曇らせ続ける姫様を見続けさせられて来たんだからっ!


 ……でも今の彼女は、


「雨の日にちょっと不機嫌になるとこも可愛いよな! 私の髪を梳かしながら悪態をつくとこが特に!」


 表情筋は動いていないけどそれ以外の全身で親友──姫様への愛を示してて……、


「……僕、あなたのこと結構好きです」


「ん? ありがとう?」


 僕はキョトンと礼を言う少女と友達になりたいと、思いました。



 審査には合格しました。……一応。


「……は? 紅茶すらまともに入れられないのか君は?」


「っ! すみません! 教えて下さい!」


 スタートラインに立つことを許した。だけだったようですが。


 そんな審査員は現在、姫様の隣に相応しくなれと教官役をしてくれてます。


「温度が二度も高い!」


「すいません!」


 ……メッチャ、スパルタでね!


「……小姑めぇ」


 おっと思わず本音が、


「え、私、モカたんの周囲では一番の穏健派だぞ?」


 ……ま、マジで?


「……頑張ります」


 ……メッチャ、助かってますけどね! うう。





 

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