七海の友達
「男子たち、入ってきていいよ」
井原がドアを開け顔を出して言った。
その顔は涙こそ無かったが眼は腫れていた。
則之に肩を貸してもらい部屋へ入った。
「すまん、ちょっと座らせてくれ。血が足りないのか体力が無くて立ってられないんだ」
言い訳がましく七海が寝ているベッドに腰を掛けた。
「白田、カッコよかった」
と篠原は無感情に淡白に言った。
「そうだ、白田! お前はエライ!! あの状況で飛び出ることが出来たなんて。
私なんか訳がわからず立ち尽くしていたから」
と栗原が拳を握り締め力説するように言った。
「俺もよく覚えていないんだよ。無我夢中で。とっさに・・・・・
将太と智弘がいなかったら俺も死んでいただろうな。
あまり格好が言いとは言えないよ」
「ううん、そんな事無い。白田君は立派だったと思う。誰もが出来ることでは無いですよ」
高沢が床に両膝を着きながら俺の右手を両手で握りながら話してくれた。
あの~露出が高いので大きな胸の谷間が「こんにちは」しているんですけど。
ガン見したいのですが、ここは俺が決めるシーンなので胸の谷間から高沢の目を見ながら
「ありがとう」
と、さりげなく言っておくとする。
高沢は穏やかな性格で彼女も誰にでも優しい。七海のように。
あまり目立つことは好まない性格をしている。
「白田、なぜか知らないがお前のだけスーツケースがあったよ」
と言って井原が修学旅行に持っていったキャリーケースを持ってきてくれた。
「誰のか分からなかったから中を見させてもらったよ。変な本は持ってこなかったようだな」
こいつ、まだ言うか!
「井原、俺のパンツ取って無いだろうな!」
「死ね!バカ!」
槍をこっちに向けて威嚇してくる。
このやりとりに部屋にいた他の6人は笑い出してくれた。
「みんなの修学旅行に持っていったカバンは無かったの?」
「白田君のだけあったみたい」
なぜ俺のだけが?
「あれだな。碧の『女神の祝福』だけ、しょぼかったからじゃないか」
「白田、キッチンセットだっけ? それはないわ~私なら絶対選ばない!」
「選ばない。ありえない!!」
「キッチンセット選ぶ白田の頭の中身を心配するよ」
「お前ら、酷いな~ 普通のキッチンセットじゃないんだぞ!!オマケつきなんだぞ!!!」
女子から散々な悪評!
「高沢は罵声を浴びせないよな! な !な!」
急に振られた高沢は焦りながら
「う、うん。いい物だよね。多分、いい物」
と、言いながら俺の瞳から目をそらした。
俺はキャリーケースを開けた。
北海道への修学旅行だったのでスタジアムなどで着るスポーツ用のロングコートが入っていた。
「白田、申し訳ないのだけど、ロングコートを私にくれないか?恥ずかしいんだ」
と顔を赤くしながら井原がすまなさそうに言ってきた。
思わず井原のボディーラインがハッキリ分かるレオタードを凝視してしまった。
「見るな~」
と言われても見てしまうのが男の性。許せ。
「すまん、コートは七海を埋葬するときに上から被せてあげたいんだ。
こっちのジャージで我慢してくれ。上下のセットだから完全に体を隠せるだろ。
宿舎で着たから俺の臭い付きだ!」
「余計なことは言うな~~~!」
と言って井原は受け取った。
「時間のあるときにでも洗って使ってくれ。
高沢も少し露出が高くて恥ずかしいだろうから、こっちのトレーナーでも使ってくれ。
こっちは俺の臭いはついていないはずだ」
「ありがとう」
高沢は頭を下げながら受け取った。
「篠原、栗原は大丈夫だな。
で、智弘、お前のその姿なんとかしようぜ。ちょっと気色悪い」
「そうだ、水原の格好は犯罪者にしか見えない」
「腹を出すのは止めてくれ」
「キモイ」
女子からは散々な悪評のようだ。
「とりあえず俺のTシャツでも着ておけ。これなら腹を隠せるはず」
智弘にTシャツを渡し、文句言いたそうな顔したがTシャツを着る。
が、ビリッ、ビリーーー!という音とともにシャツは細切れになった。
「エッ!」
「ヘッ??」
俺と智弘は顔を見合わせて驚いた。
「なぜ、破れる?というか散り散りになったと言うのが正しいな。魔法でも使ったのか?」
「いや、俺は何もしてないぞ。着たら破れた」
「もう一回着てみなよ」
智弘にもう一枚シャツを渡し着ると
ビリッ、ビリビリー、と破け散った。
やはりシャツは破けてしまった。
みんな「???????」という感じで顔を見合わせた。
「あのひょっとすると・・・・・」
申し訳無さそうに則之が声をだした。
「女性職の3人は男性物の服を着ることができないのでは?でゴザル」
則之、無理にゴザル付けなくてもいいぞ。
「実は・・・・鎧の下・・・・女性用の下着をつけていそうな気がするでゴザル。
乳バンドで胸を押さえらているような感覚があるでゴザル。
下もトランクスではなく小さいブリーフのような感触でゴザル」
エッ! 思わず後に仰け反った。
「そういえば、僕の下着も女性用だったし」
「則之、鎧、脱いでみろよ。下着がどうなってるか確認してみよう」
「ここでゴザルか?女子達の前でゴザルか?」
「そうだ、恥ずかしがるタマでもあるまい。智弘を見てみろ堂々としてるぞ」
「嫌でゴザルよ。恥ずかしいでゴザル」
「ケチケチするなよ。女子サービスだよ、サ・-・ビ・ス」
「そうだそうだ、女子サービス」
栗原と篠原がノリノリで言ってきた。
栗原は明るくサッパリとした性格でノリが良いのだが篠原までこういうライトスケベなノリに乗ってくるとは思っていなかった。
「止めなよ、女子の前で脱ぐなんて恥ずかしいもん。アオ君だって嫌でしょ」
「俺は女子全員のリクエストがあればやぶさかでは無いぞ!」
「見たい!」
「見る」
栗原と篠原が真剣な眼差しで俺の顔を見ている。
あ、やばい。調子付いてしまいました。
「いやー・・・・七海の亡骸の前でこんな話は不謹慎だ。止めよう」
「根性なし!」
「止めろ!」
栗原と井原の目が冷たくなった。
お前ら二人、おかしいだろう。
そこは「イヤーン」で終わりだろ。
なぜ、そんなにクイつく。
「チッ!」
舌打ちする音が聞こえた。
その方向を見るとマジですか!!
篠原がいた。
みなさ~~ん、痴女はコイツですよ~
ちびっ子のロリロリキャラなのにコイツはエロエロですよ~
みなさん、覚えておいてくださいね。
「とにかく女子はいったん外へ出てくれ。則之を調べてみる」
「ブーブー」
「ブーブー」
と栗原と篠原はブーイングを飛ばしながら、井原と高沢は静かに部屋を出た。
則之は鎧の上下を脱ぐ、シースルーのキャミソールの下に「乳バンド」がされていた。
下は女性物のパンティというヤツをしっかり履いていた。
「なぁ~則之、俺のトランクス履いてみろよ。昨日履いたやつだけど」
「えーー洗濯してあるやつにして欲しいでゴザル」
「ホンの一瞬、履く実験だ!一瞬だ」
まだ、文句を言ってはいたがしぶしぶ履いてみると予想通りトランクスは破れた。
「予想通りだな」
智弘が『分かっていた』という顔をして言った。
「アオ君、僕にも一枚もらえる?」
将太にも一枚渡してみると、ゆっくりトランクスを履こうとするが思わず凝視していた。
「ちょっと、なに注目してるの? 恥ずかしいよ。あっち向いていてよ」
将太が真っ赤な顔をしながら抗議してきた。
「女装した美少年が恥らっている姿に興奮して。ハハハハハ。ここはサービスだ。女子達も入れた上げよう」
「止めてよ~、アオ君、異世界に来てから性格悪くなったよ。Sだよ、ド・エ・ス!!」
確かに性格が悪くなった・・・・・というより攻撃的になったという自覚はある。
より正確に言うなら、異世界に来てからではない。あの王が七海を殺してからだ。
あの王が許せなくて許せなくて仕方が無い。刺し違えることができるのなら今すぐにでも刺し違える覚悟もある。
が、返り討ちにあうのが関の山だ。
どうやったら確実にあの王を殺すことが出きるのか。今の俺に一番重要なのはこの一点のみ。
七海のことが好きであるのは間違いないが、
それは『LOVE』ではなく『LIKE』の範疇からでることは無い感情なのだが、とにかくあの王を許せない。
いきなり『殺せ』と命令するか?
この世界の人間がどういう思考を持っているか分からないが、現代日本人の感覚からするとありえない行為だ。
将太が赤い顔をしながらトランクスを履くと、やはりビリビリになってしまった。
女性職に就いた男は男性用の衣類は着る事ができなさそうだ。
将太は似合ってる、則之は鎧の下だから良いとして問題はヘンタイの智弘だ。
「智弘、おまえはどうする? 女性用のローブでも買ってくるか?」
「いや、俺はこのままでいいぞ!」
「トモ君、それだけは止めてよ。そんな格好で町を歩いたら衛兵の人に捕まっちゃうよ」
「俺達はこの世界の人たちから見たら『異世界人』だ。あまり目立つのは良くない」
「そうで、ゴザルな。我々は追放されるでゴザルから目立たない方が良いでゴザルよ」
「分かったよ。王から金貰ったら女物のローブでも買ってこよう」
その後、七海と仲の良かった人を部屋に入れ、今後の事を話し合った。
何でも王は3のグループに分けるようだ。
一個師団を召喚した山中、ズガーンダムを召喚した星野、ワレトラマンの鈴木は即戦力として王直轄の部隊ですぐにでも戦場へ投入されるようだ。
職業系の者は魔物と戦って経験値を積むそうだ。
アイテム系の者は予備兵力として待機ないし雑用&訓練となるそうだ。
「井原と栗原、篠原と高沢で別れることになるのか。変更は出来ないのか?」
「もう決定事項みたい」
井原が答えると。
「いけすかない王だな。なんでこんな国に召喚されたのだか・・・・・」
栗原の声には怒気が含まれていた。
「なぁ、井原、栗原、二人はアイテム系だろ。
あの王、お前達のアイテム名を聞いたとき悪い顔をしたから気をつけろよ。
取り上げられないようにしておけ」
「そうだな。俺もあの王ならお前達を殺して武器を自分の騎士団に与える事を考えるぞ」
「エーーー私たち殺されちゃうの?」
と栗原が目を丸くして答えた。
高校生にもなってそのくらいの可能性考えろよ。
「智弘の意見は極端だと思うかもしれないが、あの王は信用できない。気をつけておいたほうが良いだろう」
「僕もそう思う。あの王様は信用できないよ」
将太が言うと女子達全員頷いていた。
「井原も扇情的な御召し物の性能を色々チェックしておいた方がいざと言うときに役立つぞ。
頭の良いお前ならヌカリは無いと思うが」
「扇情的とか言うな~!バカ・・・・・・・・・分かった。確認しておく」
井原は顔を赤くしながら答えた。
「白田君たちはどうするの?追放とか言っていたけど」
高沢が聞いてきた。
「この町、国から出て行くしか無いだろうな。隣の国へ行くしかないだろうな。
その前に七海の亡骸を埋葬してあげないとな。小高い丘を探して埋葬しようかと思っている」
「丘か。七海さんを埋葬するには良いと思うよ」
「私も行く」
「私も」
「私も」
「私も」
「他の連中にも声を掛けておいてくれないか?」
こういうとき一番頼りになりそうな井原に声を掛けた。
「分かったわ。声を掛けておく」
女子達は部屋を出て行った。
俺たちは今後の事を話し合った。
とにかくこの国を出ることが先決だ。この世界の知識、常識、地理、歴史を学ばないと不味いことになるだろう。
智弘が言うには城の作り、騎士の佇まい、調度品などを見ると女神様の言ったとおり文化・文明水準は中世を想像しておけばまず間違いないだろうと。
七海を埋葬した後、馬車で隣の町、隣の国へ向かうというプランで一致した。
スーツケースの空いたところに包丁、まな板、鍋をしまいながら。




