涙
ヴァンパイアは霧のようになって消えた。
倒したのか?
逃げたのか?
見逃してくれた、というのが正解なのだろう。
ハァハァハァハァ・・・・・息が切れる。喉が渇く。
今までで一番恐ろしかった。
本能的に恐怖を感じた。
プレッシャーが半端なかった。
が、どうやら助かったようだ。
「碧! 大丈夫か?」
「お見事でゴザルよ」
「あ~~~~怖かった。何だアイツのプレッシャー! ションベン、チビりそうになったよ」
「・・・・・・アオ君」
「初めて魔族と遭遇したな。しかも、ヴァンパイアとはな」
「くじら君で斬れないとは、どうすれば良いでゴザルか・・・・・・・」
「・・・・・・アオ君」
「あぁぁ、名乗らなくて良かった。魔族に指名手配されたら生きてられないからな。ハハハハハ」
「・・・・・・アオ君」
さっきから将太が俺の腕に縋っている。
「アオ君、そのマシンガン・・・・・・茜ちゃん・・・・・・」
七海とアレックスさんが何も言わず二人並んで俺の顔を見ている。
分かっているんだよ。俺も分かっているんだよ。
認めたくないから気を紛らわしているんだよ・・・・・・・
「・・・・・・アオ君、茜ちゃんが・・・・・・」
うわぁ~~と言って将太は抱きついてきた。
そして、
「どうしよう、どうしよう。茜ちゃんがーーーーー!」
そして、ウワーーーーっと大声で泣き出した。
俺の代わりに泣いてくれ。
俺は大声を出して泣く訳にはいかないんだ。
俺の代わりに泣いてくれ。
マシンガンをよく見てみる。
間違いない。このマシンガンはおばあちゃんが子供の頃、俺に買ってくれた物だ。
当時テレビで盛んに宣伝していたオモチャでおねだりして買って貰ったのだ。
忘れるわけが無い。
俺の宝物なのだから。
子供の頃、付けた傷も残っている。
マシンガンを抱きしめながらガクッと膝を折り床に崩れ落ち項垂れた。
強く強くマシンガンを抱きしめた。
泣いちゃいけない。泣いてはいけない。
俺は男だ。
泣いてはいけない。
「茜ちゃんが、茜ちゃんが・・・・・うわぁ~~」
俺の代わりに泣いてくれ将太。
俺の代わりに。
「スマン、少し一人にしてくれないか」
「え、でも、でも、僕はアオ君と・・・・・」
「将太、行くぞ」
智弘が将太を促す。
「でも、僕は・・・・」
「いいから行くぞ!」
智弘と則之は将太を引っ張りながら部屋を出て行った。
そう、勇者・茜様は茜ちゃんだったのだ。
予想通りといえば予想通りなのだが・・・・・・
ハズレて欲しかった。
茜ちゃんはもういない・・・・・・
俺はダンジョンの天井へ向かって声にならない叫びを上げた。
走馬灯のように色々なことが思い出される。
俺のただ一人の血を分けた兄妹。
やたらと俺に甘えてきた妹。
こんなことならもっと甘やかしておけば良かった。
いつもお弁当を作ってくれた優しい妹。
ちょっとお転婆で困らされたっけ。
将太を呼び捨てにしていたな~
智弘をヘンタイと言うのは止めさせたかった。
タナとロゼを一緒に探したっけ。
きっと、あいつらが行方不明になっていたとき、この世界にやって来たのだろうな。
あいつらが魔神と戦ったのだろう。
あいつらが魔神を倒したのだろう。
女神様はタナとロゼと一緒に戦ったと言っていた。
だから俺に目を掛けてくれたのだろう。
だからキッチンセットを俺に選ばせたのだろう。
他のクラスメイトはどうか分からないが将太、智弘、則之、七海の中で女神様と連絡が取れるのは俺だけのようだし、いつも必要なモノを届けてくれた。
料理スキルは当たりかハズレか分からないがステータスが上がるのは強力なバフだ。
女体化や人間化を促すことも出来た。
クラスメイトの連中もステータスで何か困っていることがあれば俺のスキルで助けることが出来たのかもしれない。
西原もそばに居てやればイフリート化しないでも済んだのかもしれない。
が、今の俺には茜ちゃんのこと以外深く考える事は出来なかった。
フェルナンドもそうだが、これで紅姫にも落とし前をつけなくてはいけなくなった。
そう遠くはないうちにクリムゾン魔国の朱殷城に行く事になるだろう。
そこが俺の旅の終着点になるだろう。
第3部 開始!!
アルファポリス
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カクヨム
https://kakuyomu.jp/works/1177354054892564964
で先行公開しています。




