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「できない、できないと思っているとできないものなのに、あきらめた途端できちゃいましたね。」
4年目の秋に私は彰利という可愛い男の子を産んだ。
利家さまの幼少の頃にそっくりだとお義母さまが言ってくれた。
「これで笠原家も安泰だ。」
お義父さまの言葉ににほっとしたのは本当だ。
「羽鳥にはもっと、もっと子供を生んでもらいますよ。」
「利家さま・・・。」
三上さんの件が片付いて以来、利家さまは変わった。
対外的には冷静沈着で冷たい感じなのは、変わらないけど、身内には優しい表情を見せるようになったと思う。
「当たり前でしょう?羽鳥。この子だけに笠原家の重圧が掛からないようにするには、あと、4人はほしいですね。」
初めて利家さまが私に望んだこと。
だって、思い返してみても、プロポーズらしい言葉もなかったまま、婚姻届を出したから。
結婚を義務だと利家さまは考えているのだと思った。
だから、子供に対する愛情を感じて私は嬉しかった。
「仕事ももっと頑張って羽鳥が楽に暮せるようにしていきますからね。」
利家さまは、黙々と仕事をこなしては、夜中遅くに家に帰って来た。
「お帰りなさいませ、利家さま。」
いつものように出迎えた私ははいつもの表情の利家さまの上着を受け取り、後についていった。
(どうなさったのかしら?纏う雰囲気が何かちがう・・・。)
表情は相変わらずなのに、何故かしら・・・。
「彰利は・・・。」
ハッとなり、笑顔を返す。
「よく寝ております。」
「そうか・・・。」
ワインセラーからワインを出す利家さま。
利家さまの趣味はワイン。
だんな様からもらったものを集めるのが趣味といっていいかしら。
それをいつもは眺めている事が多いのに、今日は何故かしら封を開けてグラスに注ぎ始めた。
「何かおつまみでも・・・。」
そう言った私に利家さまは、手で制した。
「ありがとう。…亜紋さまが、とうとう決意なされた。」
寂しそうな顔。
「えっ?じゃあ…。」
「蘭菊さまがお好きなドイツに居を構えるらしい。」
お慕いしている亜紋さま、蘭菊さまが日本を離れていく。
先に静養ということでヨーロッパに旅立った蘭菊さま。
亜紋さまは、本当に心から奥様を愛してらっしゃるから、行ったり来たりの生活に終止符を打つ気になったのだわ。
利家さまには、辛いことだろうと思う。
「ついて行かれないのですか?」
「まぁ、私には彩紋さまを見届ける義務もあるからね、あの方のこと、そして、あの方の未来をそばで見て見たいという思いの方が強いのですよ。さぁ、もう夜も遅い。羽鳥、君は彰利のそばに。」
そう言われては逆らえるはずもなく・・・私は寝室へと引き上げた。
次男の鳥彌が生まれたとき、利家さまは仕事の調整を済ませて、病院に駆けつけ、私を抱きしめて、人前だと言うのにキスをしてくれた。
2人目だというのに、今回はかなりの難産で利家さまの心配様は、仕事も手につかないほどだったのだと彩紋さまがからかうように言った。
「笠原は、羽鳥が心配でたまらなかったようでね。」
彩紋さまの言葉にそっぽを向いてしまう利家さま。
年を重ねる毎に利家さまの愛情がやさしくなったと思う。
鳥彌が生まれる1年前に彩紋さまが結婚をした。
大恋愛の末に結ばれた2人に利家さまももちろん、私も大喜びだった。
「さすがは、彩紋さまです。」
選ばれた女性はとても素敵な知性のある女性だった。
お2人がとても愛し合っているのに中々子供が生まれないことが気になっていた私と利家さまは、3人目を身ごもった時、2人でどうすべきか悩んだ。
「生まれてくるべき子供をリセットしてしまおうなんて考えたら、追い出すよ。」
けれど、彩紋さまにそう言われて、生む事を決めた2人のもとに生まれたのはまたもや男の子。
誠「まこと」とかいて、“せい”と読む子は、とてもやんちゃで笠原家だけでなく、古賀家を明るくしてくれそうだと思った。
そして、4男、恭介が生まれて、女の子が欲しいと思っている私と利家さまは苦笑するしかなかった。
けっして、恭介を疎んでいる訳ではないのだけれど、一人くらい女の子が欲しいものだわとか思ったり。
それから後、彩紋さまは御親友だった神津さまの子供である7歳の朔夜さまを養女とされました。
あのお優しく明るい神津さまがもういらっしゃらないなんて、信じられないことでした。
悲惨な事件に巻き込まれて御両親を失った朔夜さま。
とても愛らしく聡明なお子様で、惜しみない愛情を注ぐ彩紋さまと美鶴さまに、笠原家もバックアップ体制を整えることになんの躊躇もしませんでした。
そして、娘が欲しいと常日頃思っていた私にとっても朔夜さまはとても愛しい方となったの。
その次の年、跡取りである雷紋さまが生まれた時にはソレはもうお祭り騒ぎで、朔夜さまのご自身がお姉さまになるということにとても喜んでらして。
と喜んでいたら、また妊娠。
お腹の中には5人目の赤ちゃんが・・・。
今度こそっ!と思った子が男の子だと分かったとき、利家さまは私の年齢のことも考えて、子作りはこれで最後としましょうと苦笑して言った。
「もちろん、愛し合うことはやめませんけどね。」
とあの優しい笑顔とともに。
おわり
とりあえず、笠原家当主のお話はこれにて。スピンオフなので、何のことやらな感じはヒシヒシとあったと思いますが、サイト運営をする上で何か変化が欲しかったんだと思います。
ありがとうございました。




