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利家の両親も彼の将来が不安だった。
良い成績で大学を出て、古賀彩紋付きの従者になった息子だが、冷徹な雰囲気を持っているため、憧れられるほどの容姿をしながら、仕事以外に興味を持とうとしていないのだった。
付き合ってと言ってくる相手は五万といた。
けれど、彼が古賀家を優先しつづけることに我慢ができる人はいなかった。
彼が一番に考えるのは、自分のことでも、家族のことでもなく、古賀のことである。
1人でいれば、気楽で。
誰に気兼ねもなく古賀家のために働くことができる。
結婚などしなくていいと彼は考えていた。
「だからといって・・・。」
利家は、古賀の家を守る笠原家の1人息子として次の代をつくることは義務だと考えていた。
聡明で大人しい相手ならと思っていたが、羽鳥は、よく働くが、にぎやかでドジだった。
彼女が屋敷に来てから自分の仕事が増えたようにも思う。
「チョー真面目、堅物な利家には、羽鳥みたいな子が似合うと思うよ。」
人事だと思って彩紋は簡単に言っていると利家は思っていた。
「羽鳥は努力の人だよ?利家。」
古賀当主にも言われ、改めてため息を吐く。
羽鳥は確かにドジだが、同じ失敗を繰り返したりはしなかった。
冷たいといわれる利家と他のメイドとの間にも立ってくれる。
現家政婦長の母親は彼女の根性に次々と自分の仕事を教えているのだ。
「あの~利家さま?」
ある日、息抜きをしていた彼の元に羽鳥はやってきた。
「よいのです、」
「?」
「押しかけた私のことなど、気になさらず、好きな方を選んでください。利家さまのそばにいられたらそれでよいのです。」
泣きそうな顔をして言って来た羽鳥に利家は頷いた。
その顔に何も感じなかったと言えば嘘になる。
正直に時の流れに身を任せるのも悪くない。
利家はそう思った。
「家のためには、あなたと結婚するしかないらしい。」
そう言って利家は彼女と結婚した。
結婚式も披露宴も不要。
彼はそう言い切って新婚生活は始まったが、義務だからと自分にも言い聞かせて羽鳥と夜を過ごした。
愛してもいないのに、自分は彼女を抱くことができるのだなと冷静に思った。
一方、結婚生活を送りながら、何事にも懸命だった羽鳥は利家の人柄を段々と分かってきていた。
本当は感情を表すことは不器用で、照れ屋なのだと。
彼なりの愛情というものは分かりにくく、義務だと度々出てくる言葉が彼の生真面目さを物語っていた。
派手さはないが、端正な顔立ちの利家に声を掛けてくる女性は数多くいて、そのたびに自分には決まった人がいると言ってくれていたことは、羽鳥をホッとさせていたが、逆に利家が自分の存在を利用しているとも感じていた。
けれど、彼の真面目さは、羽鳥に対しても誠実なもので、彼が言葉にしないなら、自分が言葉にして愛情を表現していこうと誓ったのだった。
つづく




