↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜  作者: 神楽坂 響


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/45

第21話:偏屈なドワーフと、論理で挑む超高負荷のプレゼンテーション

『エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜』第21話をお届けします!

ついに伝説のドワーフ鍛冶師・ドルフ・グラントと対面したアラン。子ども扱いするドルフを前に、前世の行政アナリスト脳と狂気のエンチャント理論をフル動員して叩きつけるロジカル・プレゼンテーションは必見です。職人魂が激突する熱いクラフト編の幕開けをお届けします!

【年齢:9歳後半(少年期・修行編・ガロウの故郷滞在)】

ガロウ師匠が放った野太い声が、重厚な鉄の扉の向こうの静寂を打ち破った。

しばらくの沈黙のあと、工房の内部からゴトゴトと何か巨大な機械が軋むような鈍い音が響き、次いで足を引きずるような足音が近づいてくる。

ガチャリ、と重い鎖や複数の魔導錠が外れる音がして、目の前の鉄の扉が乱暴に引き開けられた。

そこに立っていたのは、人間の大人の男すらゆうに超える横幅と、岩石をそのまま削り出したかのような筋肉質の巨体を誇る老ドワーフだった。乱暴に伸ばされた灰色の豊かな髭はあちこちに焦げ跡がつき、鍛え上げられた両腕には幾筋もの生々しい火傷の痕が刻まれている。何より、その一見して只者ではないと分かる歴戦のオーラと、すべてを値踏みするような鋭い眼光は、流石はガロウの旧友にして「伝説の鍛冶師」と呼ばれる男の風格そのものだった。

ドルフ・グラントと呼ばれたそのドワーフは、ぶっきらぼうに額の汗を拭いながら、目の前に立っているガロウをじろりと睨みつけた。

「……なんだ、ガロウの野郎か。てっきり、またどこかの下らん魔物が俺の結界に引っかかって断末魔を上げているのかと思ったぜ。……で、なんだってんだ。お前が生きて戻ってきただけでも驚きだが、わざわざ俺の仕事場を叩き起こしやがって」

ドルフの声は低く威圧感に満ちていた。

しかし、その表情の奥には、長年音信不通だったかつての戦友の生存を密かに安堵する光が微かに揺らいでいるのを、私の前世で培った高度な折衝・観察眼は見逃さなかった。

ガロウはフッと不敵な笑みを浮かべ、私の背中をポンと軽く押した。

「そう怒るな、ドルフ。お前のその気難しい顔も相変わらずだな。今日はな、俺の自慢の弟子に、お前のその頑固な腕を貸してやりたくて連れてきたんだ」

ガロウの言葉を受けて、ドルフの視線がスッと私へと向けられた。

その冷徹で、あらゆる金属や素材の良し悪しを見抜くような鋭い鑑定眼が、私の全身を上から下まで値踏みするように舐め回す。

――きた。ここが最初の、そして最大の交渉(プレゼンテーション)の場だ。

私は一歩前に踏み出し、完璧な「礼儀正しい作法」と、美少年としての涼やかな笑顔を貼り付けた。子供っぽさは一切捨て去り、一人の「技術者・発注者」としての毅然とした態度を纏う。

「初めまして、ドルフ親方。私の名前はアラン・クロフォードと申します。ガロウ師匠の下で、日々剣術と魔導の修行に励んでおります。本日は、貴方に私の『相棒』となる刀の制作をご相談したく参りました」

私のその落ち着き払った挨拶を聞いた瞬間、ドルフの眉間に深く皺が寄った。

ドルフは鼻でフンと冷笑を浮かべ、低い声で吐き捨てるように言った。

「あぁ? ガロウ、冗談も大概にしやがれ。こんな鼻たれの水臭いガキを連れてきて、何の真似だ。俺が打つのは、一国を揺るがす英雄の武器か、命を賭して山を越えてきた熟練の冒険者の特注品だけだ。ガキのお遊戯に付き合っている暇なんて一秒たりともねえ。さっさと帰れ、門前払いだ」

ドルフはそう言うと、そのままバタリと扉を閉めようとした。

――だが、ここで引くわけにはいかない。私の「理想郷計画」の根幹をなす最強の武力、その最初の一歩がここで挫折してたまるか。

私は閉まりかける重い鉄の扉にスッと右手を添え、極限まで無駄を削ぎ落とした「ボディコントロール」の出力で、ドルフの閉める力を完璧にいなしてみせた。

扉がピタリと止まったことに気づき、ドルフが驚愕の色を浮かべて再び私を凝視する。

「ほう……? 今の、俺の力いっぱいの戸締めを、その細腕で……。ただの子供じゃねえな」

「お褒めいただき光栄です、親方。ですが、お遊戯などと侮られては困ります。私は本気で、貴方にしか作れない『極限の武器』を求めてここに来たのですから」

私はひるむことなく、その場でスラスラと、自分の戦闘スタイルと武器に求める仕様の全貌をロジカルに語り始めた。

「まず前提として、私の戦闘術は一般的な剣術の枠組みを超えています。私は火・水・風・土・光・闇の六属性すべての魔力を、極限まで圧縮して同時に纏う『全属性同時圧縮エンチャント』を実戦で運用しています。無詠唱で展開されるそのエンチャントは、通常の鋼鉄の刀身では、一太刀振るうだけで膨大な熱量と魔力負荷に耐え切れず、数合で金属疲労を起こして爆散します。事実、先日まで使用していた特製の木刀も、内部からの熱暴走(オーバヒート)によって完全に崩壊しました」

ドルフの目つきが、わずかに変わった。

ただの子供のわがままではなく、具体的な「物理的・魔力的負荷の数値と現象」を語り始めたからだ。

私はさらに言葉を重ねる。

「つまり、私が求める相棒に必要なスペックは以下の通りです。第一に、全属性の矛盾する魔力を同時に流し込んでも位相が干渉しない、超高純度のミスリルと特殊魔導鉱石の合金化比率。第二に、連続戦闘時に発生するテラジュール級の熱量をスムーズに外部へ逃がし、かつ刀身の硬度を保つための特殊な焼き入れ構造。第三に、私の動的リソース配分の変化にミリ秒単位で追従する、刀身内部の魔導回路のミクロな最適化。――これだけの要件を満たす器を打てる鍛冶師は、この大陸広しといえども、伝説のドルフ・グラント親方、貴方ただ一人しかいません」

一気に早口で、しかし一言一句の論理破綻もない完璧な技術仕様書を口頭でプレゼンし終えた私を前に、ドルフは完全に言葉を失っていた。

工房の重い静寂のなか、ドルフの大きな口がぽかんと開き、そして次の瞬間――彼の全身から、これまでにないほどの激しい「職人としての狂気と興奮のオーラ」がぶわっと噴き出した。

「な……っんだと……!? 六属性の同時圧縮エンチャントだと……!? そんな馬鹿な真似をすれば、魔力が内部で激突して自爆するのがオチだ。だが、お前がそれを現実にコントロールしていると言うのか……!? しかも、熱暴走の逃げ道や魔導回路のミクロな最適化だと……? おいおい……それをこの歳のガキが、まるでインフラ施設の設計図でも語るようにペラペラと……!」

ドルフは大きく息を吸い込むと、頭をガシガシとかきむしり、やがて腹の底から絞り出すような豪快な笑い声を上げ始めた。

「ガハハハハハッ! 面白い……! 面白すぎるぞ、ガロウ! どこからこんな変な化け物を連れてきやがった! 鼻たれの水臭いガキだと思ったが、中身はとんでもねえ狂った技術者崩れじゃねえか!」

ドルフの目が、血走ったような熱い興奮の色を帯びて私を射抜いた。

彼は巨大な腕をドンと組み、私を真正面から見据えて言い放つ。

「おい、ガキ。お前のそのふざけた仕様書、全部本当の魔法と剣技で証明できるか? 口だけなら誰でも一国を救う大言壮語が吐けるんだ。だが、もしお前が本当にその規格外のエンチャントを使いこなし、俺の打った最高峰の刀身を『ただの一合も無駄にせず』に受け止めきってみせると言うなら話は別だ……!」

「当然です。証明の場なら、いつでも喜んでお相手いたしましょう、親方」

私は涼やかな笑みを浮かべつつ、内心でガッツポーズを連発していた。

(――よしっ……! ドルフ親方の職人魂に完全に火がついた……! これで武器の共同制作に向けた最大の関門は突破したも同然だ……!)

こうして、伝説のドワーフ鍛冶師と、前世の公務員脳を持つ少年との間で、最強の相棒を創り上げるための熱い共同制作プロジェクトの幕が、まさに切って落とされるのだった。

第21話をお読みいただき、ありがとうございます!

今回は、伝説のドワーフ鍛冶師・ドルフとの待望の邂逅と、アランによる規格外のエンチャント理論のロジカル・プレゼンテーションを描きました。

子供扱いするドルフを、圧倒的な技術仕様と行政的アナリスト脳でねじ伏せ、職人魂に火をつけていくアランの姿を楽しんでいただけたら幸いです。

次回からは、ガロウの故郷にいる腕利き職人たちも巻き込んだ、アランの武器の具体的な共同制作と素材選定のクラフト編へと突入します。ぜひ次回の展開もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。