↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜  作者: 神楽坂 響


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/45

第11話:八歳児、無詠唱・全属性エンチャントの基礎構築に挑む

新作『エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜』第11話をお届けします!

ガロウ師匠との気迫のぶつけ合いを乗り越えたアランの次なる課題は、剣や肉体に魔力を纏わせる「エンチャント」の習得です。しかし、大魔法の才能がないアランが選んだのは、常識を外れた「全属性の極限圧縮と無詠唱同時付与」という前代未聞のスタイルでした。元・公務員の徹底した効率化脳と独自の魔力運用が織りなす特訓の模様を、今回もお楽しみください!

【年齢:8歳(少年期・修行編)】

ガロウ師匠との「気迫(闘気)」のぶつけ合いによる実戦形式の特訓が始まってから、さらに数週間が経過していた。

毎日が文字通り死闘の連続だった。最初のうちは、ガロウ師匠が放つ圧倒的な闘気の圧に気圧され、まともに身体を動かすことすらままならなかったが、前世の行政組織における過酷な修羅場や理不尽なプレッシャー耐性を思い出し、さらに日々のボディコントロールで鍛え抜いたインナーマッスルを総動員することで、徐々に互角に渡り合えるようになってきていた。

私の周囲に漂う空気の密度は変わり、常に鋭く張り詰めた緊張感が維持されている。

そんなある日の昼下がり、拠点の広場の中心で、私たちは新たな課題に向けて向き合っていた。

「アラン。気迫のコントロールについては、もはや俺が教えることはほとんどない。お前は化け物じみたスピードでそれを自分のものにした」

ガロウ師匠は腕を組み、感心したような、しかしどこか呆れたような複雑な表情で私を見下ろした。その琥珀色の瞳には、弟子に対する確かな信頼の色が宿っている。

「ですが師匠、これだけではまだ足りません。実戦において、物理的な肉体強化や気迫だけでは、硬い装甲を持つ高位の魔物や、強力な魔法障壁を展開する相手に対して決定打に欠ける。やはり、剣術と魔法の融合――すなわち『魔力付与(エンチャント)』の技術が不可欠です」

私が真剣な面持ちでそう切り出すと、ガロウ師匠は「ほう」と低く唸り、不敵な笑みを浮かべた。

「よくぞ自分で気づいたな。そうだ。いかに剣の腕が立ち、気迫で相手の神経系を制圧できようとも、この世界の過酷な荒野を生き抜くには、魔力を肉体や武器に纏わせるエンチャントの技術が勝敗を分ける。だがな、アラン……お前には一つの致命的な、いや、致命的というほどではないが、大きな壁がある」

「……大魔法の才能、ですか?」

「その通りだ」ガロウ師匠は大きく頷いた。「お前には、周囲の莫大な魔力を一度に引き込み、派手な大魔法を発動するような才能や適性はない。一般的に、エンチャントとは一つの属性の魔力を詠唱によって呼び起こし、時間をかけて武器や防具に馴染ませるものだ。お前のようなタイプが下手にそれをやろうとすれば、魔力が暴発するか、中途半端な効果で終わるのがオチだ。さて、どうする? お前にその道の王道は使えんぞ」

ガロウ師匠の言葉は、まさにその通りだった。

この世界の一般的な魔法体系において、魔法使いは特定の属性(火、水、風、土、光、闇など)の適性を一つ、あるいは持って二つ持ち、長い詠唱を経てその恩恵を受ける。武器に属性を纏わせるエンチャントも同様であり、専門の魔導士が時間をかけて行うのが常識とされていた。

しかし、私の頭の中では、すでに別の解決策――というか、前世の行政実務における「リソースの極限効率化モデル」を応用した独自の仮説が組み立てられていた。

(――大魔法の才能がない? むしろ好都合だ。派手な大魔法なんて、行政コスト……いや、魔力コストが高すぎるだけで、実務の現場においては何の役にも立たない。必要なのは、限られたリソースをいかに無駄なく、かつ最大のパフォーマンスを発揮できるように配分するか、その一点に尽きる)

私は前世で、潤沢とは言えない限られた予算と人員の中で、いかにして最大の行政サービスを提供するかという「コストパフォーマンスの極限追求」を毎日行ってきた男である。

魔力という目に見えないエネルギーも、本質的には組織のリソース管理となんら変わらない。

「師匠。一つ、試してみたい仮説があります」

私が静かにそう告げると、ガロウ師匠は興味深そうに眉を跳ね上げた。

「ほぉ……? 凡百の魔法使いなら絶望する壁に対して、お前がどんな答えを出すのか、見せてもらおうか」

私は広場の端に置かれていた、稽古用の木刀を手に取り、ゆっくりと息を整えた。

そして、自分の内側にある魔力の源泉――丹田の奥深くへと意識を沈めていく。

(――一般的な人間は、一つの属性の魔力を大きく引き出し、それをドカンと武器に流し込もうとするから制御が難しくなり、詠唱が必要になる。しかし、それではエネルギーのロスが大きすぎるし、相手の属性に対する耐性によって簡単に効果が相殺されてしまう)

私が目指したのは、その真逆を行くスタイルだった。

大魔法が使えないなら、すべての属性(火・水・風・土・光・闇)の魔力を、それぞれ極限まで細く、薄く、そして小さく切り分ける。そして、それらをバラバラに扱うのではなく、あたかも一糸乱れぬ行政組織の縦割りではなく横断的な連携プロジェクトのように、完全に同期させながら同時に引き出すのだ。

「全属性・同時圧縮エンチャント……、行くぞ」

私は小さく呟くと、全身の微細な魔力を一斉に活性化させた。

――瞬間。

私の身体の周囲に、肉眼ではかろうじて揺らめきが分かるほどの、信じられないほど微小で、しかし極限まで高密度に圧縮された六つの光の粒子が瞬いた。

赤く揺らめく微小な火の魔力、青く澄んだ水の魔力、緑掛かった風の魔力、重厚な土の魔力、そして眩い光と深い闇の魔力――本来であれば互いに反発し合い、混ざり合えば大爆発を起こして自滅するはずの全属性が、私の完璧なボディコントロールとインナーマッスルの微調整によって、完全に制御下におかれていた。

「なっ……!?」

少し離れた場所で腕を組んでいたガロウ師匠が、文字通り目を剥いて飛び上がらんばかりに驚愕した。

彼の琥珀色の瞳が、信じられないものを見るかのように大きく見開かれている。

「おい、アラン……! お前、今、何をした……!? 火と水、光と闇という本来相容れないすべての属性の魔力を同時に引き出しやがった……しかも、なんだその圧縮率は……!?」

ガロウ師匠の驚きなど気にも留めず、私はその極限まで薄く圧縮された全属性の魔力の粒子を、一ミリの狂いもなく手元の木刀へと流し込んだ。

詠唱は一切ない。言葉を発する必要すらない。

なぜなら、言葉による詠唱とは、人間の曖昧な意識を魔法に変換するための「杖」のようなものであり、前世の公務員として膨大な事務処理とロジカルな思考プロセスを脳内で瞬時に処理できる私にとって、そんなまどろっこしい手順は完全に不要だったからだ。

魔力が木刀の刀身全体にスッと馴染み、吸い込まれていく。

次の瞬間、木刀の表面が、ギラギラとした派手な光を放つ代わりに、まるでガラスのように透明に澄み渡り、その周囲の空間だけが微かに歪むほどの圧倒的な切れ味のオーラを纏った。

それは、どの特定の属性の色にも染まっていない。すべての属性が極限まで混ざり合い、一つの究極的なエネルギーとして均質に圧縮された結果生み出された、美しくも不気味な「無色のエンチャント」だった。

「これが……私の独自構築した、無詠唱・全属性エンチャントの基礎です」

私は木刀を軽く振るってみた。

ぶおっ、と。

風を切る音が遅れて響き、数メートル離れた場所にあった頑丈な練り木の的が、音もなくスパリと綺麗に両断されて地面に崩れ落ちた。木刀自体には何の刃もついていないただの木であるにもかかわらず、纏わせたエンチャントの密度と切れ味だけで、分厚い木材をバターのように切り裂いてしまったのだ。

ガロウ師匠は崩れ落ちた的と、静かに木刀を下ろした私の姿を交互に見つめ、しばらくの間、完全に言葉を失っていた。

「……すべての属性を極限まで薄く圧縮し、お互いの反発を相殺させながら、一つの刃に同時に纏わせるだと……? そんな馬鹿なことが……魔法理論の基礎を真っ向から叩き壊すような、いや、それ以前に人間の脳の処理能力を遥かに超越した芸業だぞ……!」

ガロウ師匠は自分の頭をガシガシと掻きむしり、信じられないというように何度も首を横に振った。しかし、その顔の底には、驚愕を通り越した圧倒的な称賛と、得体の知れない恐怖に似た感情が渦巻いていた。

「お前は本当に……人間の枠組みを完全に踏み外しているな、アラン。大魔法の才能がないからといって、すべての魔力を極限まで圧縮・効率化して実用レベルに落とし込むなんて発想、普通は一生かかっても思いつかんぞ」

「ありがとうございます、師匠。行政において非効率な手続きをスリム化し、最小限のコストで最大の効果を出すのは、私の得意分野ですので」

「……なんの話だそれは。まぁいい」

ガロウ師匠はふっと大きく息を吐き出すと、これまでにないほど真剣で、そして鋭い目を私に向けた。

「いいか、アラン。お前が今作り上げたその『無詠唱・全属性エンチャント』は、間違いなくこの世界のどの剣士も、どの魔法使いも到達していない領域だ。それを使いこなせれば、文字通りいかなる堅い装甲も、いかなる強敵の障壁も紙くずのように両断する最強の凶器になる」

ガロウ師匠の言葉に、私の胸のなかで熱いものがこみ上げてきた。

前世の限界突破したオタク生活と激務の中で培った執念が、この異世界の辺境の地で、かつて誰も到達しなかった「最強の剣聖へのロードマップ」として確実に形を成し始めている。

「はい、師匠! この技術をさらにブラッシュアップし、いかなる実戦でも一瞬で展開できるように完璧に自分のものにしてみせます!」

「その意気だ。……ふっ、お前の成長スピードには毎回度肝を抜かれるが、ここから先はさらに地獄のメニューになるぞ。そのエンチャントを実戦の剣技と完全にシンクロさせるための、容赦ない手合わせを始めるから覚悟しておけ!」

ガロウ師匠の口元に、野性的で不敵な笑みが深く刻まれた。

こうして、辺境の森の隠れ家における修行は、ついに「魔力付与(エンチャント)の深化と実戦剣術の融合」という新たなステージへと突入したのだった。

元・公務員の徹底した効率化脳と独自の魔力制御によって生み出された「無色の刃」は、少年がやがて世界のすべてを揺るがす「剣聖」へと駆け上がるための、確かな第一歩となったのである。

第11話をお読みいただき、ありがとうございます!

今回は、大魔法の才能がないアランが、自身の効率化脳(行政のコスト削減発想)をフル活用して「無詠唱・全属性同時圧縮エンチャント」を独自開発するエピソードを描いてみました。

既存の魔法理論を完全にハックし、全属性を極限まで圧縮して木刀に纏わせるアランの姿と、それにドン引きしつつも深く感心するガロウ師匠の掛け合いを楽しんでいただけたなら幸いです。

いよいよ次回からは、このエンチャント技術を実戦の剣技に完全にシンクロさせるための泥臭い手合わせと、肉体改造の激しいフェーズへと進んでいきます!

引き続き、アランの勘違いと最強へのロードマップをどうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。