特訓合宿編①
試験に合格できるのか!?
翌日
「以上な回復力、ぜひ研究したいんだが」
「すんません。予定があるもんで」
ニケはそう言うと、手際よく退院書類に判を押し、入院費の精算を済ませた。
「ほら、獅子! 自分の荷物持ちや。行くで!」
病院の玄関を出ると、獅子は眩しそうに目を細め、大きく背伸びをした。バキバキと全身の関節が鳴る。
「最高だな。新鮮な空気が筋肉に染みるぜ」
「アホなこと言っとらんで、行くで」
少し歩くと街の裏門に出た。
「この森抜ければ出るんだろ?体が鈍ってるしな、走るぞ」
「はぁ!? あんた今、退院したとこやで!待て! 置いてくな!」
獅子はニケの制止を無視し、走り出す。
森に入り数分。案の定招かれざる客が姿を現す。
ガザガザガザ
『リペアウルフ』の群れだ
「ちょ、獅子ここは‥‥」
ニケの言葉を遮り獅子が叫ぶ。
「邪魔だぁ、どけぇぇ」
獅子は一匹の腹目掛けてパンチを打つ。
ドゴゴォォ
吹き飛んだ一匹に巻き込まれ全員吹き飛ぶ
ものの10秒で片付いたが獅子は不満げに自分の拳を見つめる。
「‥‥なんにか違う。出力が逃げてやがる。筋肉がバラバラだ」
そこにニケが疲れ切った様子でやってくる。
「ちょ、早いねん。休憩しよや」
ニケが木の根っこに腰掛けた次の瞬間山の空気が一変した。
ゴゴゴゴゴォン
地面に亀裂が入り巨大なゴーレムが出てくる
「おぉ、これまたやべぇのが来たで、ここは俺が」
「いい、こいつで調整する」
獅子は一歩前に出ると、ゴーレムに向かって真っ向から拳を叩き込んだ。
ガキィィィィン!!
硬質な音が響く。だが、ゴーレムはビクともしない。
ゴーレムの右拳が獅子に向かって飛んでくる
クッ
紙一重でかわす
「筋肉の連動が鈍ってやがるな」
獅子は地面に着地すると深く腰を落とし、まるでスクワットのボトムポジションのような姿勢をとった。
(力量は変わってない、質を上げるだけだ)
「新技といこうか」
獅子はさらに腰を落とす
「全筋連動」
獅子の足が地面を猛烈に蹴り上げた。
その力はふくらはぎから腰へ、そして背筋を経由して広背筋へ、最後の一滴までが右拳へと凝縮される。
「フル・スクワット・インパクト!!!」
ズドォォォォォォォォォン!!!
ゴーレムの巨大な岩の体が、内側から爆発するように粉砕された。
「いいパンプアップになったぜ。さっさと行くぜニケ」
そういうと獅子は走り出す
「待たんかい」
ニケは核を慌てて拾い追いかける。
敵を倒しつつ森を進むと二人の目の前に巨大な石造りの建物が現れた。
ハンター協会第二本館。
「何だこの古いのは。他に建物なんかねぇしよ」
「ここは第二本館、館や。街でもなければ一般人なんていないで」
「何つったてハンターのトレーニング施設やからな」
「ここからは試験会場や。シャッキと‥‥」
ニケが言い終わる前に、獅子はゴーレムの巨大な核を肩に担いだまま、重厚なエントランスの扉を蹴り開けるようにして入っていった。
バァァァン!!
ロビーに響き渡る衝撃音。
そこにいた数十人のB級ハンターたちの視線が一斉に突き刺さる。どのハンターも、地方ならエースを張れる実力者たちだ。
ざわつく周囲を無視して、獅子はロビーの中央まで歩を進めた。
「おいニケ、どこでこれ換金すんだ?」
ニケは呆れ切った様子で手招きする。
「こっちや」
ニケについていくと受付のような場所に着く。
「訓練に参加するニケと獅子です」
そういうとハンターライセンスを見せる
「間違い無いですね。こちらが本試験で着用していただく時計です」
ニケは時計型のデバイスを受け取るとゴーレムの核を出して言う。
「これ、換金して振り込んどいてや」
「かしこまりました」
手続きが終わるとニケは早速デバイスの電源を入れマップを開く
「会場はこっちや」
「外から見るよりでけぇな」
「何十、何百のハンターが寝泊まりするとこやからな」
「ところで試験はいつからだ?早くぶっ飛ばしてぇ」
「アホか、会場についていっときしたら説明がある。それを聞かんと内容はわからへん」
「昇格できるのは何人なんだ?」
「1組や」
「組?ペアでやんのか?」
「そうやで」
獅子は不満そうな表情を浮かべる
「しゃーないやろ、ハンターは連携が命や」
やりとりをしてる間に会場へと着く
二人が会場の大扉をくぐると、そこにはすでに数組のペアが集まり、異様な殺気を放っていた。
試験開始時刻
会場の大型モニターが突如として起動し、会場に集まった412名(206組)のハンターたちが静まり返った。モニターに仕立ての良いスーツを完璧に着こなした男が映る
ハンター協会代表取締役、第二本館館長・龍崎
「諸君、よく集まった。これよりA級昇格合宿を開始する」
龍崎の冷徹な声が響く。
「今回の合格枠は、最終的に最も多くの『昇格ポイント』を保持した1組、あるいは、他の全組を叩き潰して生き残った1組のみだ。‥‥では、第一種目の説明に入る」
モニターに巨大な文字が映し出された。
『第一種目:デュアル・バリュエーション(身体能力&頭脳検査)』
内容: 各ペア、一方が「頭脳」、もう一方が「身体能力」の試験に挑む。
ルール:合計スコアの下位30組はその場で即脱落(失格)。
上位5組には、特別ボーナス50ポイントを付与。
生存組(通過者)には、一律25ポイントを付与。
※試験中の暴力行為及び能力の使用は厳禁。 発覚した時点で脱落とする。
「迷うまでもないな。あんたが筋肉、俺が頭や」
ニケが即座にデバイスを操作し、担当を登録する。
「‥‥あ? 頭脳の試験って何すんだよ。あいつら全員ぶっ飛ばした方が早いだろ」
「暴力禁止って言うとるやろ! あんたは自分の筋肉でスコア叩き出してこい。俺は俺でこの会場の連中を計算で出し抜いてやるわ」
獅子は不満げに鼻を鳴らしたが、周囲のハンターたちの値踏みするような視線に気づき、口角を上げた。
「暴力禁止か、見せつける分には問題なさそうだな」
「それでは、試験開始だ」
龍崎の合図で2つの扉が開く
「試験終わったら合流やからな」
「1以外取ったらぶっ飛ばすぞ?」
「わかっとるで」
ニケと獅子はそれぞれの扉をくぐった。
身体能力と書かれた扉を進むと広大な試験会場に出た。
そこには魔法を無効化する特殊な結界が張られていた。無論獅子には何の意味もない
「えー、能力の使用は一切禁止。純粋な肉体の力のみを測定する。違反者は即失格だ」
教官の声が響く中、206人のハンターたちがざわつく。
「能力抜きかよ‥‥」「マジか、強化魔法使えないのか」
そんな弱音を無視して、獅子は軽く屈伸をした。
「能力?そんなもんに頼ってるから甘ぇ体になるんだよ」
第一検査 50メートル走
スタートラインに並ぶ獅子。合図と共に爆発的なキックで地面を蹴る。
「‥‥ッシャァ!」
記録:3.8秒。
検査員が目を疑う。同時に周りのハンターがざわつく。
第二検査 握力
獅子が計測器を握りしめた瞬間、メキメキ‥‥パキィィィン!
「あー、教官。これ壊れたぞ。もっと丈夫なのはねぇのか?」
記録:計測不能(針が振り切れて破損)。
第三検査 反復横跳び
全筋連動」による超高速移動。
残像が見えるほどの速度に、隣で飛んでいたハンターが風圧で転倒する。
記録:320回(30秒間)
第四検査 立ち幅跳び
軽く膝を曲げただけに見えたが、次の瞬間、獅子は会場の壁際まで飛んでいた。
記録:15メートル。
第五検査 シャトルラン
他のハンターたちが肩で息をし、一人、また一人と脱落していく中、獅子だけは汗一つかいていない。
記録:無限(終わる気配がなく、教官が止めた)
第六検査 腕立て伏せ
早すぎて検査員が数えられなかった
記録:推定700〜800(30秒間)
:
:
:
全検査終了
「‥‥化け物かよ」
会場のB級ハンターたちが、戦慄した面持ちで獅子を見つめる。
獅子はタオルで軽く汗を拭いながら、モニターに映った自分のスコアを確認する。
全種目ダントツ1位だ。
その頃ニケはの静かな教室にいた。
配られたのは、辞書のように厚い問題冊子。
「試験時間は60分。ハンターに関する全300問。歴史、法規、魔物の解体法から魔力回路の計算まで。‥‥なお、平均正答率は8%だ。始め!」
教官の合図と共に、会場にペンを走らせる音が響く。周りのB級ハンターたちは、開始5分で「‥‥は? こんなの習ってねぇぞ」「この魔物の弱点、諸説ありすぎてどれが正解なんだよ!」と冷や汗を流し始めた。
(‥‥フン。甘いで)
ニケは不敵な笑みを浮かべ、爆速でペンを動かす。
問12:ランクB以上の「ゴーレム」を解体する際、最も高値で売れる『核』を傷つけずに取り出す角度は?
(さっき獅子が素手でぶち抜いとったな。あの角度が最適解や)
答え:左第3肋骨相当部位から、角度42度で穿孔。
問85:ギルド規約第14条「緊急時の民間人保護」における、ハンターの報酬返還義務が発生する条件は?
(これ、去年の改定で引っ掛けになったやつや。俺は全部暗記しとるで)
問155:魔物の生態と弱点
「フレイム・サラマンダー(C級)」と「アイス・リザード(C級)」が同時に現れた際、魔力消費を最小限に抑えて同時に無力化するための、環境を利用した攻撃手段を記述せよ。
( 両者の魔力核の波長を干渉させるため、中間地点に高純度の水魔法を極小で撃ち込み、水蒸気爆発(蒸気爆破)を誘発。熱膨張の衝撃で両者の外殻を同時に内部崩壊させる。これが正解や)
問182:地形と戦略
閉鎖空間(洞窟等)において「超音波」を用いる魔物と対峙した際、耳を塞ぐ以外に有効な、魔力回路を用いた防御方法を答えよ。
( 自身の魔力を体表で極薄の「多層振動膜」として展開。逆位相の振動をぶつけることでアクティブノイズキャンセリングを行い、脳への直接攻撃を遮断する。本で読んだわ)
問210:魔力回路構成式における、抵抗値Rを最小化するための数式を記述せよ。
(計算するまでもない。3秒で終わるわ)
問300:A級ハンターに最も求められる資質とは何か?
ニケは一瞬、窓の外に広がる演習場――そこで暴れているであろう相棒のことを思い浮かべた。
(‥‥『運』と『折れない筋肉』。って書きたいけど、模範解答はこれやな)
事態を掌握し、生存率を1%でも上げるための『判断力』。
そこまで! ペンを置け!」
教官が告げたとき、ニケはすでに全問を解き終え、優雅にデバイスの充電を確認していた。
周りを見渡せば、真っ白な答案用紙を前に魂が抜けているハンターばかり。
「‥‥さて。獅子のスコアと合わせれば、1位はもらったようなもんやな」
ニケは自信満々に、試験会場を後にした。
一時間後。全組の試験が終了し、中央ホールの巨大モニターにリザルトが映し出された。
『第一種目:通過者リザルト』
第1位:獅子&ニケ組
身体能力:測定不能(上限突破)
頭脳スコア:298/300点
獲得ポイント:25(生存)+50(特別ボーナス)=計75pt
「‥‥おい、なんだあの点数」
「物理と筆記、両方のバケモノが組んでるのかよ‥‥!」
ざわめく会場。下位30組は、代表取締役・龍崎の冷徹な声と共に、警備ロボットによって即座に会場から摘出(強制送還)されていく。
残ったのは、176組。
獅子とニケは、圧倒的な「標的」として、他の全ハンターから睨まれることになった。
「‥‥獅子、あんた身体能力の欄『測定不能』ってなっとるで。何したんや」
「あ? 普通に動いただけだ。それよりニケ、なんで2点引かれてんだよ。詰めが甘いんじゃねぇか?」
「うるさいわ! あの2問は問題が間違ってたんや、あとで協会に文句言うたる!」
「ところで、2、3位確認しよや」
第2位:ゼノ& リク
身体:95点 / 頭脳:278点
合計:373点
特徴:「エリート双子ペア」。リクは、ニケの点数に「計算外だ…」と激しい対抗心を燃やしている。
第3位:ニク&リュウヤ
身体:92点 / 頭脳:260点
合計:252点
特徴:モニターを見つめ不適に笑っている
モニターがリザルトから切り替わり龍崎が映る
「第2次試験を開始する。‥‥ルールは至って単純だ。『略奪』と『迅速』。この二つを両立させてみせろ」
第2次試験:プレッシャー・ラビリンス(生存と略奪の迷宮)
身体担当:広大な地下迷宮のランダムな地点に落とされる。
司令担当:管制室で迷宮の全マップと、敵・味方の位置、ゴール済みの組数を確認し、マイクで相棒を導く。
通過条件: 先着50組がゴールした時点で終了。
ポイント: 奪った『デバイス』1つにつき10pt。順位による報酬なし
特殊ギミック: 通路には難解な「パズルロック扉」があり、これは司令側も答えを知らない。二人の通信による協力が不可欠。
なお司令側はゴールへの道筋が表示されたマップを持つ。そこには敵の位置がうつる
しかし、『パズルロック扉』の位置は表示されない。敵を倒すと相手が所持していたデバイスも獲得出来る。相手への攻撃及び能力の使用は解禁される。
ただし殺人は禁止とする。
脱落条件 殺人の発覚、戦闘不能
「試験開始は1時間後。それまでは自由時間とする。各自用意された部屋に戻っても構わない。1時間後にはここに集合完了。遅れたものは脱落とする。試験開始までは暴力行為及び集合への妨害を禁止とする」
モニターの電源が落ちるとざわめきが広まる。
獅子は肩を回しながら、ニケと共に割り当てられた個室へと向かった。
宿泊エリア677号室
「よし、敵の情報は大体頭に入ったで」
「そっちはどうや?」
「ああ。パンプアップは完璧だ」
獅子は逆立ちの状態から軽やかに着地し、支給された戦闘服の袖を捲り上げた。筋肉が血管を浮き上がらせ、いつでも爆発できる準備を整えている。
部屋の時計が、集合10分前を指していた。
「‥‥ちょうどええ時間やな。あんたの脚なら、今出れば5分前にはホールに着くわ。よし、行くで」
「おう。長居するような部屋でもねぇしな」
獅子がドアノブに手をかけ、ニケが荷物を肩にかけ直した、その瞬間。
ドォォォォォォォォォン!!!
「なっ‥‥!?」
鼓膜を震わせる爆音と共に、ドアが内側へ向かって吹き飛んだ。
爆風と土煙が部屋を包み、ニケは咄嗟に腕で顔を覆う。
「‥‥ケホッ、ゲホッ! 何や、テロか!?」
煙の向こうに、二人の人影がゆっくりと現れる。
「‥‥やあ、1位じゃに相応しくない君たちを壊しにきたよ」
リクの声が、部屋全体の空気を震わせるように響く。
「‥‥テメェら。暴力禁止のルール、忘れたわけじゃねぇよな?」
獅子が低く唸り、拳を握りしめる。
「暴力? 心外だな。これはただの『点検』だよ。君たちの筋肉と脳が、この絶望(空間)の中でどこまで耐えられるかっていうね」
リクの瞳が怪しく光った瞬間、獅子の平衡感覚が消失した。床が天井になり、壁が迫りくるような錯覚。
「‥‥っ! ニケ、目眩がしやがる‥‥!」
「おそらくリクの感覚阻害や! 獅子、そいつらの術中にはまったらあかん!」
「‥‥ッ、この野郎‥‥!」
獅子がいら立ち、強引に拳を振るう。しかし、感覚を狂わされた一撃は空を切り、そこをゼノの見えない糸が狙い打つ。
シュッ、シュパッ!!
「が‥‥っ!」
獅子の頬と肩から血が吹き出す。ゼノは指を振るだけで、空間を切り裂く糸をムチのようにしならせ、獅子の筋肉を容赦なく削りにかかった。
「無駄だよ。リクの術中では、君の自慢の筋肉もただの動かない肉の壁だ」
ゼノの糸が、獅子の首筋を狙って斜めに走り抜ける。
ニケが叫んだ。
「感覚をバグらされてるんなら、『別の衝撃』で上書きするしかない! 獅子、全力で床を叩け!!」
「‥‥言われなくても、そうするつもりだったぜ!!」
獅子は狂った感覚を無視し、全神経を右足に集中させた。「全筋連動」。
「フル・スクワット・スタンプ!!」
ドォォォォォォォォン!!!
床が砕け、部屋全体が激震する。
凄まじい振動と爆音。それがリクの繊細な魔力干渉(感覚阻害)を物理的に叩き壊した。
リクが態勢を崩す。
視界がクリアになった瞬間、獅子は目の前で糸を構えるゼノの懐へ爆速で踏み込んだ。
「糸なんてまどろっこしいもん使ってんじゃねぇ。筋肉で語り合おうぜ」
「なっ‥‥速‥‥っ!」
ゼノが防御のために糸を何層にも重ねるが、獅子はそれを無視して、糸の層ごとゼノの胸ぐらをつかみ取った。
獅子はゼノの体を引き絞り、そのまま隣のリクに叩きつけるようにして、二人まとめて部屋の「壁」に向かってぶん投げた。
ドガァァァァァァン!!!
「カハッ! 嘘だろ、生身の、力だけで‥‥」
双子が重なって壁にめり込み、意識を失う。
「‥‥ふぅ。ニケ、あと何分だ」
「3分や、階段じゃ間に合わへん」
「‥‥集合場所のホールって、この真下あたりだよな?」
「え? ‥‥せやけど、何‥‥まさか‥‥」
「最短ルートで行くぞ。ニケ、俺の首にしっかり捕まってろ。舌噛むなよ」
獅子はニケを背負うように引き寄せると、全身の筋肉をかつてないほど怒張させた。「全筋連動」。脚、腰、背筋、そのすべてのエネルギーを、右足の踵一点に集中させる。
「‥‥筋肉に不可能はねぇ。『全筋連動』――ジャックハマー・スタンプ!!」
ドォォォォォォォォォン!!!
凄まじい衝撃波と共に、901号室の床が巨大な円形に陥没した。
だが、それでは終わらない。
ドォン! ドォン! ドォォォォン!!
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!」
ニケの悲鳴が轟音に消える。獅子は着地の衝撃をそのまま次の階を撃ち抜く力に変え、8階、7階、6階‥‥と、分厚いコンクリートの床を次々と踏み抜いて「垂直落下」していく。
モニター越しに龍崎が時計を見上げ、静かに告げようとしていた。
「‥‥残り1分。ここまでか」
その時、ホールの天井が激しく震動し、ピキピキと亀裂が入った。
ズドドドドドォォォォン!!!
凄まじい砂埃とコンクリートの破片と共に、ホールの天井が崩落した。
落下してきた影は、着地の瞬間にホールの床さえもクレーター状に叩き潰し、爆風を巻き起こす。
砂煙がゆっくりと晴れていく。
そこには、全身粉塵まみれながらも、ニケを背負ったまま仁王立ちする獅子の姿があった。
「ふぅ。30秒‥‥余ったな」
獅子は肩に付いたコンクリートの粉を払い、呆然と立ち尽くす龍崎と他のハンターたちを、不敵な笑みで見渡した。
ニケは獅子の背中で白目を剥きながらも、執念でデバイスのスイッチを入れた。
「‥‥セ、セーフや‥‥。‥‥修理代は、ツケといてな‥‥」
龍崎は一瞬の沈黙の後、口角をわずかに上げた。
「‥‥手段はどうあれ、時間内にここに間に合ったからな。双子に関してはルール違反で脱落だ。それでは司令担当は上の司令室へ身体担当は迷宮の各自入り口へ向かへ」
「全員の準備完了が確認された。それでは試験開始!」
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