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追放された悪役令嬢、宇宙に飛ばされたら最強でした ~中身は35歳社畜なのに、口が勝手にお嬢様になるんだが~  作者: 多々太
【第2部】辺境の魔女

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「やめておきますわ(どっちも)」

 レイ・ヴァン・クロウゼルが蓮華マテリアル商会に入会することになった。肩書きは採掘場チームの専属パイロット。


 ナイラが操船の腕を確かめた結果、「使える」の一言で誰も文句なしの採用となった。


 レイは実は男装令嬢で、転生者でもあり、この世界の主人公であることは、みんなには伝えていない。


 これはレイと相談して決めたことだった。余計な心配を与えるより、今のままの距離感で過ごしてもらった方がいい。そう判断した。


 三日間ストーカーしてきた熱烈な蓮華マテリアル商会ファンで、何度も面接をしてやっと入会できた、腕のいい元傭兵という、本人にとっては複雑すぎる設定で通している。


 実に盛りだくさんな奴だ。


 ただ、俺はレイに自分が転生者だとは伝えていない。言おうとした瞬間、何故か口が話すのを拒否したからだ。


---


 三日目の夜。


 レイの歓迎会を兼ねた夕食が終わり、食堂にゆるい空気が流れ始めた頃、レイが姿勢を正した。


「あの、一つ……情報があって、聞いてもらえますか」


「何かしら?」


 俺は扇を開き、軽くあおぐ。


「信頼できる筋からの話なんですけど……この宙域で私の名前が広まってるみたいで。近々、商会に二つの組織からスカウトが来るはずなんです」


「どこから?」


 リンが首を傾げる。


 彼女が知らないというのが珍しい。それだけで、レイの言葉に重みが生まれた。


「連邦と、レジスタンスです。で……どちらかを断ると、断った方と蓮華マテリアル商会が必ず戦闘になります」


 ジャンクがコーヒーカップを置いた。その音が妙に大きく響く。


「どっちを断っても戦闘って物騒だよね。断り方次第だと思う。それに……リンが知らない情報源って、僕は信用できないかな。裏取りできない話は危ないから」


 その一言で、レイの背筋がぴんと伸びた。


「そ、そうですよね。私なんかの情報じゃ信用できないですよね。でも、本当なんです」


「落ち着きなさいな。わたくしは信用しておりますわ。続けて」


 俺が宥めると、レイはほっと息をついた。


「レジスタンスのリーダーは、ガーツ・ガーツっていう人で。わたし的には、連邦よりレジスタンスの勧誘を受けた方がいいかなって……」


「ガーツ・ガーツ」


 ナイラが低く呟いた。


「……知ってるんですか?」


「知ってるも何も」


 ナイラの表情が険しくなる。ナイラが、みんなの顔を確認するように見て頷く。


「ヴォイド・カルテルの重役だぞ」


「えっ」


 レイの目が丸くなる。


「ヴォイド……カルテルって、あの……」


「この宙域の犯罪組織だよ」


 ジャンクが静かに告げる。


「ドルドもそこの人間だし」


「ドルドも……!」


 レイが椅子から乗り出す勢いで前のめりになった。


「じゃあ、ガーツ・ガーツがレジスタンスのリーダーってことは……レジスタンスって」


「ヴォイド・カルテルの組織、ということになりますわね」


 食堂に、重い沈黙が落ちた。


「……そんな設定なかった」


 レイがぽつりと呟く。


 (みんなの前で余計なことを呟かないでくれ……)


 レイは頭を抱えたまま、続けた。


「連邦に対抗する正義の組織だと思ってたのに」


「わたしも……そう思ってました」


 リンまで肩を落とす。


「なら、レジスタンスは信用できないってことか」


 ジャンクが淡々と言う。


「……じゃあ、連邦のスカウトを受けるのはどう?」


 レイが提案するが、ジャンクは即座に首を振った。


「反対。連邦なんて、取引相手ならともかく所属するもんじゃない。ナイラもそう思うよね」


「……まあな」


ナイラの顔は渋い。どうやら連邦に良い思い出はないらしい。


「あそこは、面倒ごとの種だ」


「でも、断ったら戦闘になるんですよ……?」


 レイが不安げに言う。


「なったらなったで対処しますわ。どちらかに与する方が、よほど危険ですもの」


「……まあ、いいか。どうせどっちに転んでも面倒だしな」


 ジャンクが肩をすくめた。


 その言葉に、レイが前のめりになる。


「……何?」


「ジャンクさんの、生『まあ、いいか』いい!」


「え、口癖だよ」


「その口癖がいい!」


 ジャンクが困ったように眉を寄せ、ナイラが小さくため息をつく。


 食堂の空気は、ほんの一瞬だけ軽くなって、すぐに戻った。


 俺は扇で口元を隠し、笑いをこらえた。


---


「P-0、リン。連邦とレジスタンスの動向を最優先で監視なさい。スカウトが来たら即報告をお願いするわ」


「承知しました」


「やってみる」


 ふと、俺の口が勝手に喋り出し、扇で口元を隠す。


「……いえ、やっはりガーツ・ガーツの居場所を特定してくださいまし」


「蓮華姉さん?」

 

 リンが不思議そうに首を傾げた。


「わざわざお越しいただくまでもありませんわ。選んでやるなどと傲慢な勘違いをする前に、わたくしの方からお断りして差し上げますわ。それが、わたくしが示せるせめてもの礼儀というものですわ」


 優雅に扇をパチンと閉じる。


(平穏が遠のく音がする……)


「さて。準備を始めますわ」

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