No.99 Side ユウ・テルジーナ③
「ん? どうかしましたか? ユウさん」
動揺するあたしの心の内など露知らず、相変わらずレンは呑気な発言をしている。
「な、な、な、なんでも無い…なんでも無いんだよ、コノヤロー!」
「なんで急に喧嘩腰…?」
お、お、お、落ち着けあたし!
そんな別に意識するもんでもねーだろ!
二人でベッドを共有するだけだし?
なんなら3人で仲良く同じベッドで寝た事もあったし?
誰かと一緒にベッドで寝るのなんて慣れてますみたいな?
いや、それじゃただのビッチじゃねーか!
そうじゃなくて、今回は仕方なく一緒に寝るんだ!
何も意識する事ねーんだ!
うん、大丈夫、平常心平常心…。
「じゃあ俺、床で寝るんで。おやすみなさい」
「いやいやいや、ちょっと待てーい!」
「? どうしたんですか、変な声出して」
あたしが一人葛藤していたのに、あっさり床で寝る選択肢選ぶか!
二人でベッドを共有するもんだと思って、あれこれ悩んでたあたしがバカみてぇじゃねーかよ!
っつーか、床て!
「変な声て! いや、そこは別にいいんだよ! 何怪我人が床で寝てんだよ! お前が布団で寝ろ!」
「いや、ユウさんだって病人なんだから、ベッドで寝てくださいよ」
しばらくお互いの主張は平行線を辿り、結局、当所の目論み通り、二人でベッドを共有する事になった。
いや、なんだ目論みって。
あたしが最初から二人で寝たかったみたいじゃねーか!
仕方なくだ、仕方なく!
っていうか、さっきからあたしは一人で何と戦ってんだ…?
「じゃあおやすみなさい」
こうして、あたしはレンと一つのベッドで寝る事にした。
最初は緊張で「寝れるかボケェ!」と思ってたが、段々とウトウトしてきた。
あれ…あんなに緊張してたのにスゲー眠くなってきた…。
やっぱりまだ疲れが溜まってんのかな?
違う…
この温もりのせいだ…
レンから放たれる温もり…
決して体温だけじゃない、優しい温もり…
3人で寝た時は隣がスーだったから分からなかったけど…
ホントに温かいな…レンは
そっか…この温もりが、辛い境遇だったハズのスーを笑顔にしてんのかな…
その温かさは今日のあたしに対してもきっと向けられていたんだと思う。
レンはそういう奴だ。
でも…出来れば…
今だけは…
この温もりを独り占めしていたいなぁ…
…
……
心地好い温もりに包まれたあたしは、いつの間にか眠りについていた。
気が付くと夜明け前になっていた。
(んん…もうすぐ朝か…)
うっすら目を開けると、レンの寝顔が眼前に現れた。
(うお!?)
思わず声が出そうになるとこをなんとか堪えた。
正直、心臓が止まるかと思った。
「ホントに気持ち良さそうに寝てんなぁ…」
すると、あろうことかレンが寝返りを打って、こちらに寄ってきた。
「ちょちょちょ、ちょ!!」
非常にマズイ状態になってしまった。
あたしが寝てた方は壁側なので、逃げ場が無い。
(顔!顔近ぇって!)
レンの寝息がダイレクトで耳もとに掛かってくる。
動揺しまくりながらも、あたしはというと、レンの温もりを再び噛ましめていた。
ダメだ…
自分が保てなくなる…
でも…
レンの温もりに触れていたい…
包まれていたい…
いつからだ…?
いつからあたしは…
気が付くと、あたしはレンの顔に手を触れていた。
(バカ… あたしは一体何やってんだ…)
慌てて手を引っ込めようとしたが、理性とは裏腹に手が動かない。
動かせない。
いや、動かしたくなかった。
レンの温もり
優しい寝顔
男なのに男臭くない、でもどこか逞しい不思議な匂い
そのがあたしの理性を麻痺させていった
ダメなのに…なんで…
スー…ごめん…
何がダメなのか
何に謝っているのか
正直それすらも分からない位に
あたしは…
レンを…
好きになっちまったんだ




