No.98 Side ユウ・テルジーナ②
「良かった、目を覚ました…」
それから、レンからちょくちょくディスられながら、色々と話を聞いた。
レンによると、あっちの世界で急に空間の歪みが発生し、そこにレンを含めた3人が巻き込まれたらしい。
何回聞いても意味が分からないが、レンが言うには、そういう事らしい。
但し、話で聞いた事象に関しては、全く心当たりが無い訳ではない。
先日、復興用に置いておいた木材が忽然と消えてしまった。
話を聞いていると、それらしきもんがレンの居る世界に現れたらしい。
時系列に若干差はあるが、同一のもんと考えていいだろう。
そして、さっき突然村に出現したワケわからん物体は、レンの世界で消えちまったもんの可能性が高いらしい。
「そっか、じゃあなんらかの原因で二つの世界が突発的に繋がってる可能性が高いみたいですね…」
「結構な騒ぎになってさ。何か良くねぇ事の予兆じゃねぇかとか、また轟狐が襲ってくるんじゃねぇかとか…。まさか、レン達の世界と関係があったとは…な…」
あれ…なんだこれ…急に意識が…。
クソ…体に力が…。
「ん?ユウさん?」
なす術なく、あたしはそのまま床に倒れてしまった。
何やらレンが慌てている様ではあったが、詳しくは覚えていない。
あたしが目を覚ました時には、既に日が沈み、夜になっていた。
「ん…」
まだ少し体がダルい…。
中々体を起こせない。
「あ、ユウさん気が付きましたか?」
顔を声がする方へ向けると、何やらレンが台所で作業をしていた。
「あれ、あたしは…」
必死に記憶を辿ろうとしたが、急に意識が遠退いた辺りからの記憶が無い。
まぁ意識が無いんだから、当然っちゃ当然だが…。
「ユウさん、急に倒れちゃったから驚きましたよ」
「うぅ…面目無い…」
何てこった、まさか看病していた相手に看病される事になるとは…。
「村長さんから話聞きました。村の為にスゴく頑張ってくれたって」
そう言って、レンは優しく微笑んでくれた。
どういうわけか、レンの笑顔を見た途端、体が火照っていくのを感じた。
「ん、んな事当たり前だろーが! お前らにこの村を頼むって言われたんだ、別に誉められるこっちゃないよ」
身体の火照りを誤魔化すために、ついぶっきらぼうな物言いになってしまった。
それでもレンは優しい笑顔を崩さなかった。
(やめてくれよ…そんな顔であたしを見つめんのは…)
「これ…ちょっと少ないですけど…」
そう言って、レンは眩しく光る神々しき物体を運んできてくれた。
「お、プリンじゃんか! レンが作ってくれたのか?」
「元々好きなだけプリンを食べさせるって約束だったし…」
そうだ、そういえば元々そんな契約だったんだっけ?
すっかり忘れてた。
「さ、早速食べても良いか!?」
「勿論!」
自分のプリン欲求が押さえられなかったあたしは、プリンを食らい続けた。
「はぁ…これこれ、この味だよ~♪」
口いっぱいに広がる、プリンの味があたしを天国に誘うかの様だった
「相変わらずプリンが好きなんですね」
「ったりめぇだろ? レンが帰ってからプリンが恋しくて仕方が無かったんだからよ」
「プリン欠乏症的な…?」
「お前、隙あらばあたしをバカにしてくんだな。この感じも久しぶりだよ」
そう…確かにプリンは恋しかった。
恋しかったけど…
いや、違う!
断じて違う!
あたしが恋しかったのはプリンだ!
…
そう、この気持ちはプリンオンリーだ!
うん、きっとそうだ!
…じゃないと…。
あたしがレンに会いたくて仕方がなかったみたいじゃんか!
「そういや、スーナ達は変わりないか?」
あたしは乱れた心を落ち着かせるべく、話題を変えた。
「んー、まぁスーナは変わり無く元気なんだけど…」
何やらレンは言い淀んだ様子を見せた。
何かあったんだろうか…?
詳しい話を聞いてみると、あろうことかレンは二人の泉狐族の子供を預かってる事を打ち明けた。
相変わらず、こいつはあたしの想像の遥か斜め上をいくな!
「泉狐族…今、泉狐族っつったのか!?」
「あ、はい。ユウさん知ってるんですか?」
対して、レンは呑気そうな顔で聞き返してきた。
スーから泉狐族に関する話は何も聞いてないのか?
泉狐族について、レンに簡単に説明すると、「あ~、そういえば聞いてたかも」みたいな反応をしていた。
だけど…確か、泉狐族はとっくに絶滅させられたって聞いてたけど…。
運良く生き残った奴等が居たのか…?
何にしても、今後の轟狐との戦いにおいて、重要な鍵を握ったって訳だ。
それから、あたしとレンは他愛の無い話に花を咲かした。
どうやら、スーは中々のヤキモチ焼きらしい。
意外にも独占欲が強いのか。
レンはレンでのろけやがって…。
……
…
「ユウさんでもヤキモチ焼いたりとかするんですか?」
急にレンが直球の質問を投げてきた。
「『でも』ってなんだ、失礼な。あたしだってヤキモチ位経験あるよ」
「プリンに?」
「プリンにヤキモチ焼くって何だ!? そんな複雑な感情でプリン食うわけねーだろうが!」
全くこいつはとことん人の事をバカにしやがって…バカ…。
「それって小さい頃の話ですか?」
「いや…違う」
あれ…?
なんで、あたし今否定した…?
一体何を言ってるんだあたしは…
頭で思っている事とは違うもんが言葉として出てきちまう…。
「最近の話ですか?」
「い、良いだろ、あたしの話なんか!」
我に帰ったあたしは、慌てて話題を変えようとしてしまった。
「自分から言っておいて…」
レンは訝しげにしながらも、それより先は触れようとしなかった。
これからどうするかについて、明日、ロジさんの所で、皆と合流して話をするつもりらしい。
気付けばもうすっかり夜も遅い。
「まぁなんでも良いけどよ。もう今日は夜も遅いし、お前も休めろよ!」
自分でそう言っておきながら、次の瞬間、あたしは自分の言動を後悔した。
ベッド一つしか無くね…?




