No.97 Side ユウ・テルジーナ①
この村に来てから、早10日。
村も日に日に活気を取り戻しつつあり、皆の顔にも笑顔が増えた。
なーんつって、他所もんのあたしが偉そうに言えたこっちゃねーんだけどさ。
レンとスー、元気でやってるかな?
いや、元の世界に戻るんだから、別に普通か。
「ユウちゃん、こんにちは」
「あ、ロジさん、こんにちは」
「どうだい、この家の住み心地は?」
「なんかすんません、わざわざこんな立派な家を貸してもらっちゃって…」
「ははは、誰も使ってない空家だったし、こうやって使ってもらえる人が居て良かったよ」
「あの…家を失った村の人は、この家を使ったりしないんですか?」
「いやね、村の皆が是非、ユウちゃんにこの家を使って欲しいって言うんだ。この村に来てから、村の為に色々してくれてるだろ?」
「そ、それはその…レンの奴との約束だし、別に…」
「皆、君に感謝してるんだよ」
「はぁ…」
うぅ…いつまで経っても人に褒められたり、感謝されたりすんのは慣れねぇ。
「じゃあ何かあったら、いつでも声かけてくれよ」
「あ、はい、どうも…」
そう言って、ロジさんは出て行った。
「何かあったらか…」
家を貸してくれたのスゴく有難いんだけど、ぶっちゃけ遠いんだよな…。
正直、あたしは村の端っこ辺りに、適当に木材並べて、雨をしのげりゃそれで十分だったんだけどな。
結局、そんなの申し訳ないって言われて阻止されちまったし…。
「っと…」
なんだか最近、たまにふらつくなぁ…。
寝不足かなぁ。
いや、でもレンの約束があるし、頑張って村を守らねぇと…。
バテてる場合じゃねーな。
すると、外から突然物凄い音が聞こえた。
「な、な、なんだ今の音は!」
物音に弱いあたしは、不意にあたしの耳をつんざく爆音に思わず怯んでしまった。
慌てて、外に出るとそこには、気を失って倒れているレンの姿があった。
「えぇぇぇぇぇぇぇ!? なんでこんな所にレンが倒れてるんだ!?」
…と、驚くのは後だ。
どうやらあちこち怪我をしているっぽい。
すると、再びロジさんが現れた。
「ユウちゃん、理由はよく分からないが、突然リンタロウとシュン君が道端に倒れた状態で見つかって…って、そこに倒れているのは、レント君か!?」
「ロジさん、レン達が次にこっちに来るのって、次の新月の日じゃなかったんすか!? なんか様子もおかしいし…」
「何やらトラブルに巻き込まれた様だね! とりあえず、レント君を家に運ぶんだ!」
「あ、はい!」
あたしとロジさんとでレンを抱えて、なんとか家のベッドに運んだ。
「見たところ、致命傷ではないが、身体の至る所に怪我をしているみたいだ…」
「敵にでも襲われたのか…?」
「いや、分からない…。とりあえず、命に別状は無さそうだが、流石に私の家まで運ぶのは厳しいから、一先ずここで安静にさせておこう。ユウちゃん、頼めるか?」
「わ、分かった!」
「じゃあ私はリンタロウとシュンの様子を見に行ってくるよ」
そう言って、ロジさんは再び出ていった。
それにしても、まさかこんなに早くレンと再会する事になるとはなぁ…。
大体なんでスーは一緒じゃねんだ?
一体全体何があったんだろう…。
あたしは簡単な手当てをレンに施した。
要心棒時代に、簡単な手当ての手解きを受けていたお陰で、動作も無い事だった。
「ふぅ…とりあえずはこんなもんか…」
しかし、レンて見かけによらず、結構引き締まった良い身体してんだな…。
「いやいや、あたしは何考えてんだ!バカじゃないのか!」
一旦冷静になって、再びベッドに横たわるレンをまじまじと眺めていた。
改めて見ると、レンって結構色白だよな…。
あんまり外とか出ねぇのかな?
というか、普段レンは何してんだろう。
でもこうして見ると、レンの顔って色白も相まって、結構整った顔してるし、美形かも…
「だーかーらー!! あたしはさっきから何考えてるんだ!! どうしたあたし! 何があった、あたし! さっきからレンの事ばっかり見てて、変態か!!」
意識すんじゃない、ここで寝てんのはじゃがいもだと思え!
じゃがいもが寝てると思え!
いや、じゃがいもが寝てるってなんだ?
違う、余計な事考えんじゃねー!
「うぅ…」
あたしが自分自身と戦っている間に、レンが意識を取り戻したのか、微かに声が聞こえた。
「おい、レン! しっかりしろ!」
「ユウ…さん…?」
レンはゆっくりと瞼を開き、目を覚ました。