表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
5章 みんなの日常生活
79/300

No.79 キロとテン

俺は二人のちびっ子を引き連れながら、歩いていた。

先程、家に電話をしたら、幸いにもじいちゃんが居たので、おおよその事情を説明した。

すると、俺の説明を聞くなり、大笑いしながらこの子達を家に連れてく事を承諾した。

全く他人事だと思って…。


「ねぇねぇ、リノイエレント、どこいくの?」


「ん~、俺の家だよ。とりあえず、そこで色々話も聞きたいし…」


「…? おはなしするの?」


まぁ分かる訳ないか。

そもそもこんな小さい子供と普段接する事がないから、どういう目線で話をしたら良いのか分からない…。


「ねぇねぇ、リノイエレント、あそこにおっきないぬがいるよ~」


前から歩いてくるご婦人が連れている大型犬を指差しながら、俺に話しかけて来た。


「あらー、弟さんと妹さんの付き添いかしら? 可愛らしいわね♪」


「はは…どうも…」


軽くおじきをしながら、愛想笑いをしてやり過ごした。

『この子達、異世界から来た、異世界の悪党集団のメンバーなんです~』だなんて、言ったって信じるわけがない。


そもそもこんな子供が轟狐の一員だなんて事あり得るのだろうか?

両親が轟狐の一員という事ならまぁ分からないでもないけど。


「さっきも聞いたけど、お前達、お父さんとお母さんは?」


すると二人はお互い顔を見合わせてしまった。


「そんなの、さいしょからいたことないからしらないよ」


「最初から? お前ら今までどうやって生きてきた?」


「轟狐のひとたちにごはんたくさんもらった」


あまり要領は得ないが、どういう経緯があったのはともかく、轟狐に拾われて(?)現在に至るという感じか…。


「ねぇねぇ、だっこして~」


「抱っこ? 家までそんなに距離無いから頑張って歩きなさい」


「やだやだ、だっこだっこ~!」


段々と女の子の方がグズリ出してしまった。


「なんだお前はわがままだなぁ…」


このままだといよいよ泣き出しそうだったので、仕方なく俺は女の子を抱き抱えた。

幾ら子供とはいえ、これを抱えて歩くのは若干しんどかった。


「ふぅー…。そういえば、お前達俺の名前を知ってたけど、一体誰から聞いたんだ?」


「いっちゃダメっていわれてるから、いわない!」


「誰に?」


「アルアスおじちゃん」


成る程、アルアスとか言うおっさんから聞かされたらしい。

でも、そんな奴会った事も聞いた事も無いな…。

何で俺のフルネームを知ってんだ?


「よし、着いたぞ~」


俺は女の子を降ろすと、二人を連れて家の中に入っていった。


「ただいま~」


すると2階からパタパタと階段を降りる音が聞こえきた。


「レン君、おかえりなさい♪ あ、その子達がもしかして…」


「あぁ、じいちゃんから話聞いてたのか。あっちの世界から迷いこんだちびっ子二人。とりあえず連れてきた」


「ふふふ、二人とも可愛らしいね、いらっしゃい♪」


男の子の方は元気良く「こんにちは!」と出来たが、女の子の方は恥ずかしいのか、俺の後ろに隠れてしまった。

仕方ないので、俺は女の子を抱っこしてスーナの方を向いた。


「ホラ、お姉ちゃんに『こんにちは』って」


女の子はとても恥ずかしそうにしながら、スーナの方を向くと、とても小さな声で「こんにちは」と呟いた。


「こんにちは♪ じゃあレン君も中に入って♪」


そう言うと、スーナは居間の方に消えて行った。

最近だと、ばあちゃんから貰ったエプロン姿もだいぶ板についてきた。

掃除だけはどうもまだ苦手らしいが、それ以外の家事については率先して手伝っているらしく、ばあちゃんもかなり助かっているみたいだ。


俺は2人をつれて居間に入ろうとしたが、2人がだいぶ汚れている事に気が付いた。


「流石にこのまま居間に上げんのはまずいな…。まずは風呂で綺麗にしちまうか」


「おふろってなにー?」


「お風呂を知らないのか。簡単にいうと、お前達を今から綺麗にする所だぞー」


俺は居間で準備をしているスーナの所に行った。


「あのチビ達、だいぶ汚れちゃってるから、先に風呂で綺麗にしてくるよ」


「うん、分かった! その間に準備してるね♪」


「そういやじいちゃんとばあちゃんは?」


「なんか2人でお散歩に出掛けたよ。おじいちゃんの方がおばあちゃんを誘ったみたい」


「へぇー、なんか珍しいな…」


俺は風呂場に2人を連れていくと、汚れに汚れた服を脱がせ、まとめて洗い始めた。


「なにこれ、あわあわするー!」


「目開けるなよー、泡が滲みるからなー」


「は~い!」


ホントに轟狐の元で育てられたのかと思う位に素直で良い子達だ。

いや、寧ろ逆に言う事を聞かせる為に厳しくされてきたのかもしれない。


あらかた綺麗になったので、前もって沸かしておいた湯船に二人を浸からせた。

溺れてしまうと不味いので、お湯はいつもより少な目にしておいた。


「あったかくてきもちいいー♪」


「しあわせ~♪」


どうやら2人とも湯船が気に入ったようだ。

と同時にお風呂も満足に入る環境じゃなかったのかと思うと、心苦しくも思った。


「よーし、じゃあ上がるぞ~」


「えー、もっとはいってたい~」


「ダメ、言う事聞きなさい」


「はーい」


どうやら「言う事聞きなさい」というのが、魔法の言葉の様だ。

二人の体を乾かしてやると、スーナから渡された服に着替えさせた。

どうやらじいちゃんが気を利かせて、俺と夏美が小さい頃の服を引っ張り出して用意してくれたらしい。


「お、見事にサイズがピッタリだな! よし、お前ら居間に行くぞ~」


俺は二人を連れて居間に入った。

中ではスーナがオレンジジュースとお菓子を用意してくれていた。


「あ、スーナありがとう。ほら、二人とも食べて良いよ」


「これなーに?」


「クッキー。甘くて美味しいぞ」


先に男の子の方がクッキーをひと口食べた。

すると男の子の顔がみるみる内に緩んでいった。


「これ、おいしい! もういっこたべていい?」


「あはは、食べて良いよ。余程気に入ったんだな」


「キロ…これおいしいの?」


「おいしいぞ! はい、テンもどうぞ」


男の子の方がキロ、女の子の方がテンっていうのか。

テンはキロから渡されたクッキーをひと口食べると、キロより控えめながらも嬉しそうな顔をしていた。


「おいしい♪」


「そっか、良かった良かった」


そう言い終わるかさなかの時、俺は目を疑った。


「お前ら…その耳は…?」


キロとテンの頭から狐の様な耳が生えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ