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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
4章 ふたりの冒険生活
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No.64 さぁ戻ろう

その後も俺達は三人で色々な所を回った。

週に一度開催されるというボートレースや、半年に一度行われる夜のお祭り。

そして旅芸人がこぞって披露する華麗なステージ。

色々な顔を持つワガマタの町を存分に楽しんでいた。


勿論、観光を楽しむだけでなく、轟狐に関する調査や情報収集も忘れずに続けていた。

しかし、これ以上の情報というのは中々得られず、結局みんな既に知っている様な情報ばかりだった。

そして、あっという間に二週間が過ぎ、いよいよこの町を離れる時が来た。


「この町とも今日でお別れだなー。ホントに良い町だったな、ワガマタ」


「うん、またいつか訪れてみたいよね♪」


「はは、そうだろ? なんてったってあたしの自慢の町だかんな!」


「あと…俺達から誘っておいてなんですが、ホントに良かったんですか?」


「まぁ一度用心棒の仕事を引き受けたからにゃあ、契約が切れるまで雇い主に同行するのが筋ってもんだろ? それかあれか? あたしが一緒に旅に付いてくんのが嫌になったんじゃあるめぇな?」


「いえ、そういう訳じゃないんですけど…また、ユウさんとお父さんが離れ離れになっちゃうなって思って…」


「なんだよ、あたしに気を使ってんのか? つい最近まで喧嘩して家出したんだ、今更離れ離れもねぇだろうよ」


「そりゃまぁ…そうなんですけど…」


「まぁ気ぃ使ってくれてんのは嬉しいけどな。心配要らねぇから大丈夫だ! とっとと行こうぜ!」


「とっとと行こうぜ」の言葉の裏には、「迷いが生じない内」というユウさんの気持ちが見え隠れしてるように思えた。


「しかし、今からロゴンチャに乗って間に合うのか? ミタからここまで来るのに5日かかんだぜ? どう考えても…」


「あ、ロゴンチャには乗らないですよ?」


「はっ?」


上手く話が飲み込めていない様子のユウさんをよそに、俺は荷物からまだ未使用の移紙と、半分千切られた移紙の2枚を取り出し、未使用の方の紙を千切り、地面に同化させた。


「よし、これでワガマタまでのセーブポイントは完成だ」


そして、俺は今千切ったの片割れを荷物にしまうと、元々千切れていた方の紙を手に持った。


「よし、じゃあ帰るぞ。スーナ、ユウさん、こっちに来て」


そう言って、俺は二人の手を持ち、目を閉じた。


「お、おい、レン、一体何をして…」


ユウさんの声にも気付かずに、俺は静かにイクタ村のスーナの家の前をイメージした。

一瞬、体が軽くなったかと思うと、気付いたらイクタ村のスーナの家の前に戻っていた。


「!?? 一体何がどうなってんだ!?」


ユウさんは自分達の身に何が起きたのか全く理解できていない様子だった。


「あぁ、この移紙っていう紙を使ってイクタ村に戻ってきたんです。実際に試すのは今回が初めてでしたけど」


「レン、そういうのは先に言ってくれよ! 軽くパニックになったわ!」


「あ、すみません」


すると遠くの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ここまで声が聞こえるって、どんだけバカでかい声で叫んでんだ…」


やがて、発信源の男がこちらに近付くにつれて、どんどん声が大きくなってきた。


「おーい、蓮斗おぉ!! ついに帰ってきたのか!! 俺ぁ寂しかったよぉ~!!! スーナちゃんもおかえりぃ~!」


駿が真っ直ぐにこちらに突っ込んできたので、俺は駿の顔面に足を差し出し、靴の裏で駿を止めた。


「うるさいし、危ない。突っ込んでくんな」


「か…帰ってきて早々荒々しいな…」


そうつぶやきながら、駿はヘロヘロとその場に倒れこんだ。


「シュンさん、ただいま♪」


スーナが地面で寝転がっている駿に優しく声をかけた。


「いや~、スーナちゃんはいつも優しいなぁ! 蓮斗とは大違いだ…ん?」


駿は俺の後ろにいるユウさんの存在にようやく気付いた。

駿がユウさんの事をガン見していると、ユウさんは俺の後ろに完全に隠れてしまった。


「おい、蓮斗、お前の後ろにいるのは誰だ?」


「この人はユウさんっていって、俺達の旅に用心棒として同行してもらうことになったんだ」


「え、何、お前ら3人で旅してたの? それ本気で言ってんの?」


「えっと…うん、そうだけど…どうした?」


「お前、ふっざけんなよぉ!! 俺、蓮斗がいない間どんだけ辛かったか分かってんのか!? 毎日毎日お前のじいさんに朝から晩までこきつかわれて、死にそうになってたってのに、その間お前はあれか? スーナちゃんと仲良く旅するだけじゃ飽き足らず、そんな可愛いねーちゃん連れて、両手に華の旅の旅をしてただぁ!? おっかしいぃだろ、この不公平っぷり!! 神様、俺、何か悪い事でもしましたか? してないよね!? 毎日毎日頑張ってこの村の復興目指して働いてたもの! なのにこの無慈悲な現実ですか!! 」


…何言ってるのか分からないが、とりあえず大変だったんだろうな。


「お、おい、レン、あのバカは一体なんなんだ…?」


案の定、ユウさんは意味不明な言動をしている駿に若干…いや、だいぶ引いてしまっている。


「意外にユウさんって結構人見知りなんですね」


スーナは悪意無しにユウさんの痛い所をついてしまった。


「な、なんだよ悪ぃかよ!」


「初めて会った時の私達にはあんなに積極的に話し掛けてくれたのに…」


「うるせぇな、その時々の雰囲気とかあんだろ!? あの時はなんか喋れたんだよ!」


よくは分からないが、勢いで喋りかけたとかそんな感じなんだろうな。


「おい、そこぉぉ! 何イチャイチャ喋ってんだコラぁ! 俺も混ぜろやぁ!」


「おい、駿、ユウさん人見知りなんだから、びっくりしちゃうだろ!」


「おい、レン、その言い方なんかムカつくからやめろ!」


「なんだなんだ、なんかうるせぇと思ったらお前らか」


じいちゃんが首にタオルを巻いて、やって来た。


「あ、じいちゃん居たのか」


「居たのかじゃねぇだろ、ずっとここで村の復興作業してたわ」


「レン君のおじいちゃん、ただいま♪」


「おぅ、スーナちゃんも無事に帰って来れたみてぇだな。で、蓮斗の後ろでコソコソ隠れてる嬢ちゃんは一体なんだ? 新しい愛人でも拾ってきたか?」


「愛人じゃねぇよ、俺らの用心棒だ」


「用心棒だぁ? こんな若ぇ嬢ちゃんがか?」


「も、勿論だ! あたしをそこら辺の小娘と一緒にしてもらっちゃ困るぜ!」


威勢が良い台詞を吐いているものの、声が上ずっており、残念ながら説得力がない。


「まぁ…なんでも良いんだけどよ。それとちゃんとロジの野郎にも帰ってきた事伝えとけよ。あいつ、毎日毎日心配で仕方なかったみてぇだしよ」


「分かったよ、後で行く」


すると駿が真面目な顔で俺に話し掛けてきた。


「蓮斗、ちょっといいか? 話があんだ」


「話…?」

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