No.65 なんで
駿がこんな改まって俺に話し掛けてきたのにも驚いたが、一体話とは何だろうか?
「良いけど…なんかあったのか?」
「別になんかあった訳じゃないんだけど…蓮斗に知ってもらいたい事があって…」
どうにも話の要領は得ないが、どうやら真面目な話であるという事は理解できた。
ただ、まだ村長さんへ帰村の挨拶をしてなかったので、挨拶が終わったら、駿の話を聞く約束をした。
「レン君、どうしたの?」
「いや、別になんでもないよ。早く村長の所へ行こう」
そうして俺達は、現在村長さんのいる場所へ向かった。
村長さんの家も、駿の手伝いもあり、殆ど住める様にはなっているらしいが、まだ息子夫婦の家で寝泊まりしてるらしい。
「ごめんくださーい、村長さん居ますか?」
「あら、レンちゃんいらっしゃい! スーナちゃんも久しぶり♪ 無事に村に戻ってきたのね」
家から村長さんの義娘(村長さんの息子のお嫁さん)のメクアさんが出てきた。
「はい、お陰様で。村長さんはいらっしゃいますか?」
「お義父さんなら中にいるわよ。ここで立ち話もなんだから、家の中に入って」
「すみません、お邪魔します」
村長さんの息子のお嫁さんとは、これまでも何度か会って話した事があったが、とても若々しい顔をしており、俺と同い年位の娘がいるとは思えない程だ。
「スーナちゃんも元気そうね♪ あら、後ろにいるのは?」
「この人は俺達と一緒に旅する事になった、ユウさんです」
「は、初めまして、ユウです。よ、よろしく…です」
「ふふふ、随分と可愛らしい子ね♪ スーナちゃん、妬いちゃうんじゃない?」
「いや、メクアさん、そういうんじゃないですから…」
メクアさんからのからかいをいなしつつ、俺達は家の中に入った。
家の中には村長さんしか居なかった。
「おぉ、レント君にスーナ、無事に帰ってきたんだね! ホントに良かった…」
村長さんは心から安堵した様な表情を浮かべた。
「何事も無く戻って来られました」
「そうか、そうか! 何か手掛りとかは掴めたかい?」
「いくつか話は聞けました。あと、轟狐との接触もありました」
「轟孤と!?」
その後、俺達は村長さんに旅で遭遇した出来事や得た情報、そして旅にユウさんが加わった事を伝えた。
「グランルゴ…確かに国王が変わってからは、巨大カジノが出来たり、他国との交流を断ったりとあまり良い噂は聞かなかったが、まさか轟孤の連中が一枚噛んでいたとはね…。奴らは想像以上に我々の生活に溶け込んでしまっているみたいだね。しかし、アルフのグループに関しては、話を聞いても目的が見えてこないな。何のためにそんな義賊みたいな真似を…」
「とりあえず、次の旅ではグランルゴへ向かおうと思います。」
「そうだね、ただグランルゴは轟孤の影響かどうかは分からないが、かなり治安が悪くなっていると聞く。無理をしてはいけないよ」
一通りの話が報告と、俺達は他愛のない雑談をしていた。
すると、ビナが外から戻ってきた。
「あ、レン君にスーナちゃん、戻ってたんだね!」
「お邪魔してます。ビナはどっか出掛けてたのか?」
「うん、お爺ちゃんの家にね。でも、レン君達が無事に帰って来れたみたいで良かった♪」
例の如く、ユウさんの事をビナに軽く紹介したのち、俺達はお礼を言って、家を出た。
「じゃあ二人は先にスーナの家に戻っててくれ。俺はこの後駿と会うから」
「うん、分かった! じゃあユウさん、一緒に行こう♪」
「お、おう、よろしく頼むわ」
二人が歩いて行くの見送ると、俺は駿が指定した待ち合わせ場所に向かった。
着いたのは、村長さんの家の前だ。
何故、ここを待ち合わせ場所に指定してきたのかは分からないが…。
「おーい、蓮斗、こっちこっち!」
声のする方を振り返ると、駿は家の庭の中に侵入していた。
「お前、なに勝手に人の家ん中に入ってんだよ」
「それは一先ず置いておいて、お前に見て欲しいもんがあるんだよ」
何が一先ず置いておいてなのかは一切合切理解できなかったが、とりあえず駿について行った。
「確か、裏口の鍵が閉まってなかったハズ…」
「いや、お前、マジで何やってんの? これ、世間的には不法侵入っつー奴だからな」
「大丈夫、ロジさんには許可貰ってるから!」
「許可貰ってるってホントかよ…」
「いや、ホントだって! そこは信じてくれよ! お、開いた!」
駿は俺の心配など気にも止めずに中に入って行った。
「こっちだこっち!」
「二階…?」
「あぁ、今行方不明になってるらしいロジさんの娘の部屋だ」
村長さんの娘の話…スーナから前に聞いた事があるけど、なんで駿も知ってんだろう?
やがて、その娘さんの部屋の中に入ると、おおよそ長い間使われていなさそうな雰囲気が醸し出されていた。
「誰も使ってなさそうだな…」
「蓮斗、これってお前の家にある奴とおんなじだろ?」
そう言って駿はコップを俺に差し出した。
「あー、確かに同じ奴は家にあるな。確か、父さんがずっと使ってた気がする」
「やっぱりそうか! じゃあ後はこれを見てくれ!」
すると、あろうことか駿は人の家に飾ってある集合写真を写真立てから取り外し始めた。
「ちょ、お前、ホントに何やってんの!?」
「いいからこれを見てくれ!」
俺は渡された写真をじっと眺めた。
「これ、お前の父ちゃんだよな!?」
しかし、俺は駿の言葉など頭に入ってこない位に別の部分に衝撃を受けていた。
「なんで…ここに母さんが…?」




