No.54 用心棒「ユウ」
「グランルゴ…?」
「あぁ、そこは町全体がカジノで成り立ってる。最も裏でカジノの舵取りをしてんのがリーダーのゲンガって話だぜ?」
「いや、結構具体的な話ですよね? 割と足着いて経営しちゃってますよね?」
成程、全く手掛かりが無い訳じゃないという訳だ。
しかし、こっからどん位離れた所にあんだ…?
「ちなみにここからだとどれ位かかるんですか?」
「そうさな…ここからだとロゴンチャとか船を乗り継いで、1ヶ月はかかるぜ」
「い、1ヶ月!?」
ダメだ、次の新月に間に合わなくなる…。
ひとまず今回の旅では無理か…。
「レン君、どうしよう、次の新月まで確か半月も無いんじゃないよね?」
「うーん、グランルゴって所に行くのは、次回の冒険の時って感じだな…」
「新月ぅ? にーちゃん達一体なんの話してやがんだ?」
「ユウさん…ほんっとに町長さんから何も聞いてないんですね…」
仕方なく、俺はイクタ村の神社の話、そして俺がこの世界の人間ではない事も話した。
正直、ここまで話していいのか分からなかったが、頭は悪いが人間性は悪そうではなさそうだと、俺とスーナで判断した。
「マジか、にーちゃん、あっちの世界の人間だったのかよ!」
「ユウさんは2つの世界が存在する事、知ってたんですか?」
「まぁな。表向きには隠された世界の秘密的な扱いらしいが、案外この事を知ってる連中は少なくない。勿論、詳しい経緯や1000年前のいざこざは知らねぇけど…」
成る程、俺はイクタ村の神社の範囲でしか考えてなかったけど、広い目でみたら、今までもそれなりに二世界間の交流はあった訳だ。
いや、轟孤の連中が躍起になって神社の破壊工作をしているのを考えると、現在進行形で行来があると考えるのが妥当か…。
「ユウさん、色々と有益な情報を頂きまして、ありがとうございます!」
「そうかぁ? 大した事教えられてねぇ気もするけど…」
「いえいえ、当面の目的地も分かりましたし、助かりました」
「そっか、なら良いんだどよ…」
「だけどあれだなぁ…町長さんが事前に事情を話してあるっていう割りには、ユウさん、全然俺達の事知らされてない風だったよな」
「そう言えばそうだね。私達が言って、初めて話してくれた位だもんね」
「ん? にーちゃん達、その話もうちょっと詳しく聞かせてくれ」
「? はぁ…」
俺とスーナはうまく事情が飲み込めなかったが、改めてミタの町長さんから紹介された事、そしてその旨は既にユウさんに説明済みである事を伝えた。
っていうか、今日俺は何回この人に説明をしてんだろう…。
「あーー!! って事は、にーちゃん達がレントにスーナかぁ!! そっかそっか、やっと話が繋がったぜ!」
「いや、今更かよ!! 町長さんから紹介されたって時点で普通気付くだろうが!!」
「だって気付かなったもんは仕方ねぇだろうが!! だったら、にーちゃん達こそ最初に名前名乗ってりゃ良かったんじゃねーのかよ!」
「そこに関しては俺達もすみませんでしたっ!!」
何はともあれ、やっと話が繋がって良かった。
どうやら町長さんから俺達のサポートをする様に話が来ていたらしい。
ただ、町長さんもプリン娘が借金まみれの無職である現状は知らないらしく、はたしてサポートなんてしている余裕なんてあるんだろうか…。
「で、あたしはどうにーちゃん達をサポートすりゃ良いんだ?」
「いや、そこは流石に町長さんから聞いてんじゃないのかよ!」
「いやー、サポートの仕方は全部任せるっつって丸投げされたかんなぁ…」
プリン娘は何やら考えながらウロウロして始めた。
そして、「あ、閃いたー」的な顔をして、俺達の方を向いた。
「うし、じゃあ今日からにーちゃん達の用心棒を引き受けてやらぁ! 勿論、金は要らねぇぜ!」
「えー…」
「えーってなんだよ、えーって!! ここは素直に好意を受ける場面だろうがよ!!」
「いや、自分で好意って言っちゃってるし…」
だけど…確かにこの町で危険が無いっていう保証はどこにも無いし、もし用心棒がいてくれるならかなり心強いし…。
何より、この町のいるっていう轟狐にまだ接触できていない事を考えると、この町の住人であるプリン娘の手助けは必須だ。
「分かった、じゃあご好意に甘えるとしますか…。どうぞ宜しくお願いします」
「よーし、任しときな!! 宜しくな、レン! スー!」
「えーっと…俺の名前、蓮人なんですけど。ちなみにこの子はスーナっていう名前で…」
「んな事ぁ分かってるよ!! こっちの方が呼びやすいだろぉ?」
「あ…はい、なんでもいいです、もう」
いきなり、名前を短縮されてしまった。
蓮斗って言う程言いにくいか…?
とにもかくにも、「元」用心棒という心強い(?)味方が加わった。
一先ず、この町の地理に疎い俺達の助けになってくれる…と信じて。




