No.53 アルフとゲンガ
成程、家を借りるお金が無いのも、プリンを買うのに借金までしているのもこういう理由だったのか…。
ただ…。
「クビになったって…一体なんで…?」
するとプリン娘は訳あり気に俯いた…。
「あ、別に言いたくなけりゃ大丈夫です…」
「いや、大丈夫だ、別に言い辛い事じゃねぇからな!」
そう言ってプリン娘は顔を上げた。
「あれはあたしが借金取りに追われている時だった…。その時、あたしはとある貴族の用心棒をする予定だった…」
「貴族…? この町のですか?」
「いや、ここからもっと北に『ポルカルット』っつー国があんだけど、そっから来賓として来た貴族でさ。あたしはそいつの護衛を頼まれたのさ」
「フーン、貴族ねぇ…。で、その護衛の仕事でなんかやらかしたんすか?」
「ばっきゃ野郎、自慢じゃねぇが俺は用心棒の仕事の最中にへました事ぁねぇんだ!」
「ん? じゃあクビになんてならないんじゃ…」
「当日、あたしは予定通り護衛の仕事に出るつもりだったんだが、タイミング悪く借金取りの野郎どもが押し掛けて来やがったんだ。そいつらから逃げ回っているせいで、護衛の仕事をすっぽかしちまって、結局即日クビとなった訳だ」
俺はとても頭が痛くなってきた。
「じゃあ…なんだ、あんたはプリン欲しさに借金したせいで、借金取りに追われて、用心棒の仕事もクビになったって事…?」
「まぁ…端的に言えばそうだな!」
「いや、そうだなじゃないわ!! 何が『大丈夫だ、別に言い辛い事じゃねぇからな』だ!! よっぽど言い辛い程に恥ずかしいクビのなり方じゃないか!! もうプリン禁止な!」
「ば…ばっきゃ野郎、あたしからプリンを取ったら何が残るってんだよ!」
「むしろプリンのせいで何も残らなくなってんだろーが! どんだけバカなの!?」
ダメだ…このプリン娘、とんだダメ人間だ…。
ギャンブルとか酒とかやっちゃいけない部類の人間だ。
「まぁいいや…ここであんたを罵っても話が進まない。とりあえず、ここで話をしよう」
「そ、そうだな! これ以上言われ続けてたら、流石にあたしも泣く寸前だったぜ…!」
「泣きそうだったのかよ! まぁ良いや。実はあんたの叔父さんから話を聞いていて…」
俺とスーナは、今まで起きた大まかな出来事、そしてミタの町長さんから聞いた話を簡単に話した。
「成程、おっちゃんに言われて、あたしに会う為に遥々ミタの町から来たっつーわけだな?」
「そういう事です。轟狐の情報を知ってるとかで…」
「まぁ…知ってるっちゃ知ってるけど、にーちゃん達の力になれるかどうか分かんねーぞ?」
「いえ、どんな些細な事でも大丈夫です。轟狐について教えてください」
「そっか…じゃあまず最初に、轟狐の連中はまだこの町に潜んでやがる」
思いもよらぬ発言に、俺とスーナは顔を見合わせて驚いてしまった。
「この町にいるんですか…? 被害とか出ていないんですか?」
「いや、この町にいる轟狐の連中は基本的に殺人と民間から盗みを働いたりはしねぇからな。まぁ多少気が荒いのは居ると思うけど…」
「へぇ…轟狐っていうとろくでなしの集まりだと思ってたけど…そういう訳じゃないのか」
「多分、おっちゃんから轟狐に関する基本的な話は聞いてると思うけど、轟狐ってのはいくつかのグループに分かれていてな。ここに潜んでる奴らはアルフのグループに属している」
「アルフって…?」
「今言ったグループのリーダーだよ。なんつーか…冷静沈着で、寡黙、そして無駄な殺生や盗みを好まない奴だ。なんで轟狐なんてやってんのか分からない位だよ」
「ユウさんは、そのリーダーと会った事あるんですか?」
「一度だけな。かつてあたしが別の来賓の護衛をしてた時に、轟狐の連中が襲ってきてさ。まぁ返り討ちにしてやったし、事なきを得たんだけど、こっそりリーダーが来て、謝罪してきやがったんだよ」
うーん、益々その人が轟狐に属している理由が分からないな。
「じゃあその…アルフさんが属しているグループが人や村を襲う事は無いんですか?」
「あぁ、基本的にはな。もし襲った事がバレたらリーダーからきつーいお仕置きがあるからな」
「そう…ですか」
「ちなみに…ねーちゃんが言っている村っつーのは、イクタ村の事か?」
「は、はい! でもどうしてそれを?」
「あたしの情報網を舐めんなよ! 全部おっちゃんから詳細は聞いてるんだ」
「いや、それ町長さんから教えてもらっただけですよね?」
「うっせーな、細けぇ事ぁ良いんだよ! で、今回イクタ村を襲ったのと、この町に潜んでいる轟狐が同一の連中かって事についてだが…恐らく別のグループだろう」
やはりというかなんというか…予想通りの結論を言われたな。
って事は、轟狐を追う旅は降り出しに戻るという事か…。
「そのグループがどこのどいつかっていうのは分かったりするんですか?」
「うーん、確証は無ぇが…恐らく、ゲンガのグループだろうな」
「ゲンガ…?」
「ゲンガ率いるそのグループは、神出鬼没に現れては人や村を襲い、時には人や動物を殺める事も厭わないっつーろくでなしの軍団だ」
「成程、アルフのグループとは対極ですね…」
「それに、ゲンガのグループは何故か神社のある村や町ばかりを狙っているらしい…」
「それって…」
俺とスーナは顔を見合わせた。
間違いない、イクタ村を襲ったのはゲンガというグループの連中だ。
「それで…そいつらはどこに…?」
「今言ったろ? 奴らは神出鬼没、決まった根城も持たず、自由気ままに移動して悪事を働く。まぁそれが奴らの足が着かない要因にもなってんだがよ」
「闇雲に探しても奴らにはたどり着けないって訳か…」
「いや、奴らを叩く方法ならあるぜ。金の集まる場所に行ったらいい」
「金の集まる場所…?」
「そう…カジノの町、『グランルゴ』だ」




