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二世界生活、始めました。  作者: ふくろうの祭
4章 ふたりの冒険生活
50/300

No.50 プリンと借金

遠くの方から、何やら騒音が聞こえる。

人の声…だろうか?


「なんか…聞こえるな」


「行ってみる?」


「いや、なんか巻き込まれそうだからやめとこう」


一先ず、俺達はその場から離れて別の船着き場に向かうべく、歩き出した。


「ねぇ、レン君、なんだか声、近付いて来てない?」


「…確かに…声のボリュームが大きくなってきてるな」


すると後ろの方から、男二人と女一人が追走劇を繰り広げていた。


「ゴラァ、バカ女ァァ!! 今日までに金用意すんじゃなかったのかぁ!?」


「うっさいな、無いもんは無いっつってんだろ! 今度返すって!」


「お前、そのセリフこれで何度目だ!! 魔法の言葉みたく言うんじゃねぇ!!」


「私は魔法の言葉だと思ってるけど!?」


「てんめぇ、そもそも返す気ねぇじゃねぇか!」


どうやら借金娘が借金取りに追われてるらしい。

まるで漫画の様な光景だ。


「なんだってあんな女の子が借金なんざしてるんだろう…?」


「レン君、どうする? 助けてあげる?」


「いやいや、俺達正義の味方とかじゃないんだから。それにあんまりここで騒動起こす訳にもいかないし…。って、あいつら真っ直ぐこっち向かってないか?」


いや、間違いなくこちらへ向かっている。


「おい、お前らそこどけぇー!」


借金娘がものスゴい勢いで走り抜けて行った。


「わぁ!」


走り抜けて行った拍子にスーナの足元が若干ふらつき、よろけた。

そして息つく間も無く、男二人組も走り抜けて行くと、そのうちの一人の腕に、スーナがぶつかってしまった。


「きゃあ!」


そのまま、水路のある方へよろけてしまった。


「危ない!」


咄嗟にスーナの体を抱き抱え、間一髪水路への転落は免れた。


「ありがとう、レン君♪」


何故だか、スーナは若干嬉しそうだった。


「あんの野郎共、よくもスーナを…」


俺が立ち上がろうとした時、スーナが俺を止めた。


「ん、どうしたスーナ? もしかしてどこか痛むのか?」


「う、ううん、ただもうちょっとこのままでいたいなぁ…なんて」


「い、いや、今はそれ所じゃ無いだろ! 後でまたしてやるから」


そう言って、スーナから解放してもらうと、俺は魔石をとり出し、イメージを込めた。


「スーナを危険な目に遇わせやがって…。覚悟しろよ!」


ありったけのイメージを込めると、魔石からは過去最大級の暴風が発生し、連中に向かって真っ直ぐ突撃していった。


「なんじゃこの風は!?」


突然の暴風に気付いた男達は、パニックになっていた。


「ちょちょちょちょ、たんまたんま!! 何この風! ああああああああ!」


そしてなすすべなく、暴風に巻き込まれ、悲鳴を上げたままそのままどこかへ飛ばされて行った。


「あらら、ちょっとやり過ぎたかな? どっか行っちゃったよ…」


あまりの威力に自分でもびっくりしてしまった。


「レン君、大丈夫だった?」


「俺は大丈夫、それよりもスーナこそさっきので怪我とかないか?」


「私も大丈夫だよ、レン君が助けてくれたし…」


「そっか、良かった。さて、これからどうしよっか…。船にも乗れないし、プリン娘は居ないし…」


「とりあえず、別の船着き場まで行って、船に乗ろうよ!」


「そうだ、船着き場を探してるんだった。じゃ行こうか」


するとまた遠くの方からやかましい声が聞こえてきた。


「おぉぉぉぉぉぉい、そこのにーちゃん達ぃぃぃ!!」


「次から次へと…喧しい町だなぁ…」


うんざりしながら声をする方を眺めてみると、先程男達に追い掛けられていた借金娘だ。

とっとと今の内に逃げりゃいいのに、なんでこっちに戻って来たんだか…。


「なんですか? わざわざこっちまで戻って来て…」


「いやぁぁ、兄ちゃん達のおかげで助かったよ!! 危うく馬鹿共に捕まる所だったよ!」


「なんだって、借金取りなんかに終われてたんですか?」


「バッキャヤロウ、借金取りに終われる理由なんざ唯1つだろうが! あたしがいつまでも借金返せないからに決まってラァ!」


「いや、決まってラァじゃないでしょ。なんで借金してんだって聞いてんですよ」


「バッキャヤロウ、なんでんな事赤の他人なんざに言わなきゃなんねんだ…と言いたい所だけど、まぁ助けてもらった出前もあるしな、答えてやるよ!」


…なんだろう、実際に面と向かって喋ると、100倍うるさい。


「それはな…プリンの買い過ぎでちーっと金にだらしなくなっちまってな…」


「…は?」


「いや、だからプリンの買い過ぎで…」


「おーい、スーナ、こんな脳みそプリンの借金バカ娘の相手なんかしてないで、とっとと船着き場に行こうぜ」


「おい、なんだその呼び名、ちょっと酷いぞ! お前、プリンを前にして正気でいられるか? いられないだろ!」


「なんなのこの町、プリンにどんだけ翻弄されてんの? プリンで家出したり、プリンで借金して追われたり…」


「ね、ねぇレン君、プリンってそんなに美味しいの…?」


「コラコラ、スーナ、洗脳されない。まぁなんでも良いけど俺達先行くんで」


「おい、待てお前ら! 確か船乗り場を目指してるっつってたな?」


「まぁ…ちょっと人探しをしてて、船で町を色々移動しようかなって」


「よーし、任しときな! あたしが船に乗せてやる!」


「いや、良いですよ…ってか、船に乗せるってどういう事…?」


「あたしは、こう見えてこの船着き場の船頭も任されてんだ! まぁ大船に乗ったつもりでいてくんなぁ!」


なんだろう…スゴいめんどう事に巻き込まれた気がする…。

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