チーム結成
翌朝、全員がアーニーの自宅に集まっていた。
アーニーを中心に、扇状に並んでいる。
「みんな。集まってくれて感謝する。これからチーム『無銘』を結成する」
アーニーが宣言した。
全員が頷いた。
「新しく今日から参加するメンバーもいる。自己紹介と職を名乗ってもらおう。まずは俺からだ。ついで右から順に名乗っていってくれ」
アーニーは一歩前にでる。
「俺はアーニー。【先鋒】という戦争職だ。建築特化のレンジャーみたいなもんか。特殊な古代語魔法と精霊魔法を使うことができる」
「ウリカ。【魔力治癒士】です。MP支援と回復支援を行います」
「ポーラ。【魔術師】だよ。攻撃魔法が得意だね」
「エルゼです。【吟遊詩人】で、呪曲を中心とする支援を行います」
「ジャンヌです! 【聖騎士】ですよ。みんなを守るね!」
「イリーネ! 冒険者の職は【戦士】。タフさが自慢ね」
「ロジーネです。冒険者の職は【絡繰士】ですね。鋼線を使った中距離攻撃や、罠を得意とします。敵を縛ったり操ったりもできます」
「俺はニック。【剣闘士】だな。タイマン特化のアタッカーだ」
「私はパイロン。【竜戦士】。跳躍を得意とする特殊アタッカーです」
「ラルフだ。【恐怖騎士】。集団用対人スキルを多く持っている」
「カミシロです。おっちゃんと呼んでください。【大司教】やってます。回復はお任せを!」
「テテです。【忍び】です。偵察、暗殺等の隠密活動を得意とします」
「ロミーだよ! 私はみんなにくっついて、支援するからよろしくね!」
「コンラート。【弓士】だ。長距離狙撃が得意」
「私はユキナっていう。【戦士】だ。接近戦でがんばるぜ!」
「レクテナです。昨日この町にやってきました。【付与術士】です。支援魔法が中心となります」
挨拶が終わったことを確認すると、アーニーは皆に告げる。
「力を合わせてがんばろう。俺の祖霊は人使いが荒いが勘弁してくれ。皆の特性にあった役割を今から一人ずつ説明していく」
「パーティ組んで集団行動とかはあんまりない?」
「あまりないかもしれない。ありがたいことに、皆戦略にあった職業だ」
「願ったり叶ったり、だ。どうもパーテイ組むのは苦手でね」
コンラートが言った。
「正々堂々とかけ離れた戦いになるのは、すまないと思う。単独行動は危険が増すからな」
「それこそ願ったり叶ったりだ」
「同じく」
コンラートとテテが同意する。
「共通認識は先に話そう。敵は精鋭冒険者C級、B級を中心とする精鋭冒険者。しかも【城塞戦】というルールを利用して俺たちを抹殺しようとしてきている」
「抹殺ですか?」
「ああ。こちらの【城塞】を占拠し、復活ポイントを抑え虐殺、陵辱、完全制圧を狙ってくるはずだ。男はロスト、女は嬲りものってところか。200人の精鋭がいるんだ。やりたいほうだいだ」
「本当に最低な奴らですね」
エルゼが呆れた。
「ルール上は可能なんだ。祖霊がいう【仕様】だな。しかも【城塞戦】で死んだ【選手】、つまり冒険者はデスペナも苦痛も五分の一。気軽に死ねる」
「ルール上であればなんでも許される、と」
「そう。だから、手痛いしっぺ返しを受けてもらう」
アーニーがにやりと笑った。
「ルールを自分たちだけが理解していると思い込み、精鋭の数に任せて暴れる連中に一泡吹かす、これが狙いだ」
「いいね!」
イリーネが意気込んだ。
「初手は制圧狙いでくるだろうと予測。そこは普通に【城塞戦】をしてやろう。皆思う存分暴れてもらう」
「楽しみだ!」
「こちらの狙いを気付かれては困るからな。そこからが本番だ」
「というと?」
「それ以降は、今から一人一人で説明する戦略で、暴れてもらう」
アーニーは確認するように考え込み、話を再開する。
「ウリカ、エルゼ、パイロン。三人から話していこう。他の人間はその間、適当にくつろいでくれ」
「へ? 私?」
パイロンが目をぱちくりさせた。
「そうとも。今回の戦略の核となる」
「私たち支援職が? 支援の方法ではなく?」
「攻撃の要だ」
「わかりました。話を聞かせてもらいましょう」
アーニーが三人を引き連れて自室に消えた。
「あー。なんか凄そうな戦いになりそう」
ジャンヌが言う。
「想像つかない戦いになるよね。私たちもそうだったし」
「今回のほうがぶっとんでそう」
ドワーフ姉妹もアーニーの戦略を楽しみにしていた。
「先生。お久しぶりです」
ポーラがレクテナに声をかける。
「やっぱりポーションのポーラさんですよね。こんなところで再開とは」
「あはは。アーニーは幼なじみなんです。あいつが急に失踪しやがって。探しにここまで。せっかく再開できたら、あんな可愛い美少女と同棲ですよ?」
「――あの子、本当に変わってないのね。ウリカちゃんは私もびっくり。悔しいけど可愛いですね」
「そうですよ。そういう意味でここは居心地がいいですよ。アーニー被害者の会ですから」
「!」
その言葉にレクテナが息を飲んだ。周囲はにやにやしている。
「いえてるね!」
「そうですね!」
「私の席は空いてるかしら?」
「もちろんですよ!」
「私も入っていいですか?」
ジャンヌも参戦してきた。
まったく関係ないところで、大変な盛り上がりを見せていた。




