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バグ持ちの壊れたキャラだった冒険者。ガチャ確変SSRとなり不具合仕様認定で【真の壊れ性能】に!〜ユニーククラスの知識で自然と共生する産業革命!  作者: 夜切 怜
死闘! 【城塞戦】

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全面戦争

「アーニーさん、ポーラさんが!」

「ポーラの【火球爆発】でわかったんだ。ポーラは?」

「殺され……」

「てないから! なんとか生きてるよ」


 ポーラがエルフ女性と小人(フロレス)の女性に支えられ、やってきていた。

 ウリカも慌てて駆け寄り、泣きそうな顔でヒールを行う。


「目を覚ました冒険者と司祭がヒールしてくれた。おっちゃん早く帰ってこないかな」

 腹部の血が痛々しい。


「それは……」

 腹部の出血が痛々しい。


「鉄靴でやられた」

「そうか。また迷惑をかけた。すまない」

「なんでアーニーさんが。私のせいです。いつも本当に…… ごめんなさい」

「なんであんたらが謝るのよ。私はいい。あいつらよ、あいつら。絶対許せない」

 憤るポーラだ。腹部が血に染まっているローブ。

 それだけで今からロドニーの首を刎ねにいきたい気分に駆られる。

 アーニーは拳を握りしめたり開いたりしていた。怒りをなんとか静めようと必死だった。


「テテもロミーも、みんなもありがとう」


 彼らがいなければウリカがどうなっていたか。想像したくもなかった。


「みなさん! ありがとうございます。私のせいでごめんなさい」

「何いっている、ウリカお嬢! 当然だ! もう前みたいなこと、させねえ!」

 ハイオーガが涙目で叫んだ。


 以前、サソリ型ゴーレムが襲撃したとき、自分らの無力を思い知った。

 今回もまた、間に合わないところだった。


「ウリカ様が無事で良かった」

「しかし、アーニー殿。単独であいつらとやりあうのはさすがに無理です!」

「そうですよ! 我らも戦います!」

 町の亜人たちがそれぞれ叫ぶ。


 ドワーフたちもやってきていた。


「話は聞いた。儂らも戦う。絶対許さぬ」

「みんな。気持ちは嬉しいが、だめだ」

「何故!」

「あいつら言っていただろ? ここを戦場にするというのも、いわば人質だ。復活するにしても、レベル1以下の者は【消失(ロスト)】する。つまり、そういう者から狙ってくるんだよ。あいつらだって普通の戦争なら子殺しはしないが、城塞戦はその大義名分を作る。赤ん坊を殺して『レベル1だと知らなかった』ってな」

「なんてやつらだ……」

「連中に死んでも拠点で復活だ。やぶれかぶれになってこの町を直接襲うだろうな。十分予想できる。精鋭冒険者が200人、無限復活で襲ってくるんだぞ?」

「そんな連中がこの町を狙っているのに、黙ってみていろってのかよ!」

「あいつら、エルフは性奴隷に、それ以外は労働力って言い切ったんだぞ! 財産は略奪ってな!」

 町の人々の悲鳴に似た叫び声があちこちであがる。


「守りを固めろ。全力で。先生(イリーネ)の起こした図面から出来た城塞は、あいつらみたいな連中と戦うためにあるのだから。子供を、未来を守ってくれ」

「あんたたちを死なせるわけにもいかないんだよ!」

「もちろん、時間が無い。みんなに協力できることは依頼したい。各種族族長、今夜マレックのもとへ来てくれ。ただし、無理強いはしないでくれよ。希望種族だけだ」

「わかったよ! 兵站でも戦力もなんでも、俺らにいってくれ!」

 アーニーは頷いた。


 今、町の人間の心は一つになっていた。


「テテ、ロミー、そしてダークエルフの方。巻き込んで済まないが協力してくれないか?」

「俺の名はコンラート。好き勝手に暴れてパーティを追放され、この町に身を寄せていた身。そんな俺でよければなんなりとお申し付けを」

 心からそう思っているようだった。彼は恭しく頭を下げた。


「一緒に戦うよー!」

 妖精は元気いっぱいに飛び回っている。


「アーニーさんと戦えるとは! 身に余る光栄ですよ!」

 テテも同じくだった。もとよりウリカを助けるために死ぬ覚悟を決めていたところだ。


「明日家にきてくれ。あいつらに一泡吹かしてやるさ」

 三人は頷いた。




 自宅に戻った。

 ポーラはおっちゃんの治療を受けている。

 話を聞いていた全員憤慨していた。


「祖霊同士って…… そのわりにアーニーさんの祖霊でてこなかったね?」

 ポーラが疑問をぶつけてきた。アーニーの祖霊はポーラもよく知っている。こんなとき出てこないほうが不思議だ。


「ああ。ちょっとな」

「何か隠してる?」

「隠すようなことではないんだが。――怒りのあまり、俺と融合していた」

「え?」

「俺の意思は祖霊の意思であり、祖霊の意思は俺の意思だ。完全同調(シンクロ)って状態だ。普通はありえないよな」

 全員絶句した。アーニーの祖霊は特殊すぎるが、完全同調というのはアーニーと祖霊の怒りが限界を超えていた証拠だった。


「それだけ許せない、悪逆非道の敵」

 エルゼもまた怒りに駆られていた。許す道理はなかった。


「神の名において殲滅します」

 ジャンヌも怒気を隠していない。


「敵と話しながら祖霊は【城塞戦】のルールを逐一確認していた。祖霊いわく、こっちのペースだそうだ」

「それは心強いですね」

 ルール把握に関してアーニーの祖霊は、群を抜いている。その祖霊の思惑通りなら、間違いないだろう。


「祖霊様、ずっと私を励ましてくれてたんです。そして必ず手を打つ、と」

 祖霊はいつも抜けた感じだが、彼らを見守っていることことに関しては絶大な信頼がある


「アーニーさん。ひょっとして最初話し合いを提案していたのも、祖霊様のブラフ?」

「そうだ。今回の戦いは神々の法をお互いどうやってすり抜けるか、だ。まずはこちらの大義名分の確保。相手の無謀な要求と、こちらが停戦意思を示すための、な。しかし奴らはなお、闘争を望んだ。言質は取った」

 アーニーが薄く、冷酷に笑う。


 初めてみるアーニーの表情にウリカとエルゼは身を強ばらせる。


「向こうは向こうで言質を取ったと思っているだろう」

「どれだけ先を見越して話をしてるのよ、あんたたち」

「当然だろ? 祖霊同士を含めた戦いとはそういうものなんだ」

 ポーラが呆れた。


「大変だったんだぞ。俺はポーラの火球爆発で気付いた。祖霊が激怒していて話が通じない。いつのまにか完全同調だ」

「ちょっとまって。私の祖霊から交信が…… アーニーへの全面協力への同意? 何これ!」

 ポーラの祖霊が話しかけてきたらしい。アーニーのように直接冒険者に語りかける祖霊は希だ。


「我らの祖霊からも同じく来ていますな。よほど相手の祖霊は横暴らしい。くっそはしゃいでますな、私の祖霊」

 おっちゃんがのんびり言う。


「祖霊が手を打っているというのは、みんなの祖霊への協力要請だ」

「私が役立てる日が遂に。あ。俺の祖霊も怒りが有頂天とかいってますので、ご心配なく」

 恐怖騎士が呟く。こんな要塞戦こそが彼の真価を発揮できる。


「もちろん私を忘れないでくださいね」

 竜戦士パイロンも言う。


「ジャンヌ」

「はい」

「お前も今日から俺の指揮下だ」

「指揮下って。今もそうですよ?」

『「俺の指揮下といったほうがいいか」』

 アーニーの声と祖霊の声が重なる。


「え? ちょっとまって。私が祖霊の加護持ち? 【城塞戦】では加護無しでも生き返ることができるんですよね」

「そうだ。つまり【城塞戦】は関係ない。俺を助けてくれ」

「ありがとうございます――つまり、私も家族と認められて?」

「遅れてすまない。俺のなかではとっくに家族みたいなもんだったんだけどな」

「泣いていいっすか?」

 ジャンヌはそういってすでに涙目になっていた。とても長い、待機時間だった。


「話は聞かせてもらった。相手チームは滅亡する!」

 扉をばんと開け、イリーネが入ってきた。


「ようやく町について、酒場にいったら驚いたぜ。すげえことになってんな。冒険者たちも怒り狂ってたぞ。――のけ者は勘弁な!」

 ニックが苦笑した。


「亜人を奴隷? 私と姉さんが作っている要塞とウリカさんを横取り? 絶許です」

 ロジーネも目が据わっていた。


「先生、助けてくれ」

「そういうとき、素直なのはいいことよ、アーネスト君。おねーさんに任せなさい!」

 イリーネは胸をどんと叩いた。


「根絶やしにしましょうか。あのときみたいにね。(みなごろし)ってやつです」

 ロジーネが暗い笑顔でぼそっと言う。


 ドワーフ姉妹たちも参戦する気満々だった。


「俺はチームを作る。俺の戦略は、皆に過度な負担をかけるかもしれない。外道な戦術かもしれないし、普通に死ぬかもしれない。それでもお願いだ。協力してくれないか?」

「私とエルゼ、ジャンヌさんはアーニーさんと同じ祖霊を有する身。そんなことで臆するような者はいません」

「私に聞かないでくれる? あの糞野郎を百回殺すためならなんでもするよ」

「私たち姉妹は常にアーネストさんたちとあります」

「四天王代表して、おっちゃんが。あの邪悪な者たちを懲らしめるため、断罪の剣と化しましょう。それはいかなる手段も取るということです。例え敵に鬼畜外道といわれようが、本当に悪鬼を倒すために」

 四天王で一番激怒しているのは、間違いなくカミシロだった。


「ありがとう。あいつらは許さない」

 アーニーが暗い顔でいった。


「暫定だが、チーム名は『無銘』。ここにいるメンバーと、巻き込まれた人たちのチームになる。ウリカと名前の無い町を守るために、銘などいらない」

「ついに我ら全員同じチームか…… 終わっても解散しないでくれると嬉しいんですが」

 おっちゃんが笑いながら言った。他三人が首をぶんぶん振っている。


「継続は、終わったら考えるか。いつもみんなに頼りっぱなしだ」

「チーム継続のため! みんな、がんばるぞ!」

「おう!」

 四天王も盛り上がっていた。


「いつも私が原因で、もう本当に泣きたい」

『「姫属性だ。諦めろ。俺は受け入れた」』

「祖霊とアーニーさんが同時に受け入れちゃった?!」

「ウリカは愛されてるね。私も安心できる」

 マレックが言った。


 いつの間に?


 全員が愕然とした。


 幽鬼のような――凄まじい鬼気を放ちながら。


「もちろん私も最大限の助力は惜しまないよ?」

 夕暮れ前だが、吸血鬼の彼はかなり無理をしているはずだ。


「寝てろよ。今のあんた、すげえこえーよ」

 ニックが思わず声をかけた。


「はらわたが煮えくりかえって眠れなくてね。ふふ」

「マレックさん、やばいやばい。このメンバーじゃなかったら、ガチでバッドステータスになるほど鬼気でてる」

 ポーラがなだめる。

 彼女の言っていることは本当だ。レベルの低い冒険者なら脚が竦んで動けないだろう。


「ポーラ殿、ありがとう。何度もウリカを助けてもらい言葉も無い。そして私の大切なポーラ殿を傷付けた、あのよく囀る虫けらども。まさに百回殺しても飽き足らない。千か万か。 必ず殺してくれる」

「知っているか」

「町の真ん中で起きたことだ。経過も全部知っている。夜になったら総力戦を仕掛けたいぐらいだが、考えがあるんだろ?」

『「もちろん」』

 アーニーの声と祖霊の声が重なる。


『「俺から、あなたに戦略的な相談がある」』

「ウリカの祖霊と戦略談義か。夢にまでみたシチュエーションだな」

『「ああ。ご期待に添えると思う。主に目的の面で」』

「私の期待に添う、と? 楽しみだ。ああ、これは実に楽しみだ」

『「奇遇だな、俺も本当に楽しみなんだ」』

 アーニーとマレックの視線が絡み合う。

 二人の笑みがより深くなっていった。それはとても冷酷な笑みだった。


「これあかんやつや」

 ポーラがぞっとして呟いた。恐怖で鳥肌が立っている。

 

 視線の先にウリカがいた。ウリカもまた、青い顔で頷いた。


「アーネスト君、こういうときは強いよ! 安心してね。闇墜ちしたわけじゃないから」

 イリーネがウリカに声をかける。ウリカはうなずいた。


「そのかわり、敵は悲惨な最期になりますけどね」

 ロジーネの予言が、皆の心に強く残った。

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