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バグ持ちの壊れたキャラだった冒険者。ガチャ確変SSRとなり不具合仕様認定で【真の壊れ性能】に!〜ユニーククラスの知識で自然と共生する産業革命!  作者: 夜切 怜
城塞設計

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お風呂場で鉢合わせはお約束?

「ただいま」

疲労労困憊で帰宅したアーニー。まだ夕暮れ前である

クリスマス前の廃狩りを終え、滞っていた調査の追い込みに入っていたのである。


「おかえりー」

 イリーネが声をかける。現在建築設計図を描いていた。広域の計画プランを立てる【建築家】ならではである。

 居間に大きな製図用テーブルを用意してもらい、そこで図面を引いている。

 助手はロジーネだった。


「石切場候補地も確保しておいたぞ」

「調査お疲れ。やっぱりキミは便利だわー」

「ただの城壁じゃないよな、今設計しているの」

「内緒」

 ウィンクして誤魔化す。こういうときは大抵大事だ。


「早速ロートが死にそうになっているぞ」

「あの子は根性あるね! 見込みあるよー」

「連れて帰っちゃだめだぞ」

「わかってるわよ」

 マエストロに見込まれた者など、そうはいない。ましてロートはこの名前の無い町の重要人物だ。


「あれ? みんなは?」

「買い物-。風呂も沸いているから、あんたもさっさと風呂入って夕食に備えなさい」

「そうする」

 革鎧を外して、部屋の片隅に荷物を置く。それから彼は脱衣所に向かった。


「お約束って大事だと思わない? アーネスト君」

 アーニーの背中の向こう側で、イリーネがとてつもなく邪悪な笑顔を浮かべていた。





 彼の家には珍しく風呂がある。お嬢様であるウリカのために作られた家なので、配慮は色々されている。

 とくにこの魔法帝国式の湯船風呂は画期的だ。この町の有力者ぐらいしか持っていない、究極の贅沢品ともいえる設備だ。

 岩で組まれた浴槽は温水を流し込む形式だ。温水は温泉水を引っ張ってきている。地質的に硬水になる。

 三、四人ぐらい入ってものびのび出来る風呂で、紛れもなく一級品だ。


 彼が浴室の扉を開けて、中に入り閉める。浴室は湯気だらけだ。そして中に入った時、硬直した。


 椅子に座っている少女。ちょうどお湯を頭から被ったところだったろうか。

 水がしたたる金髪からも、その美しい白い肌からも全身湯気が立っている。祖霊にいわせれば湯気仕事しすぎ、と叫ぶだろう。

 赤い瞳が見開いて彼を見詰める。ウリカだった。


 目があって二人とも固まる。見つめ合う格好だ。


「ア、アーニーさん?」

 ようやくウリカが声をだした。


「ご、ごめん! くそ、イリーネの奴! 入っているのしらなかったんだ! おのれイリーネ!」

 先生の好きそうな悪戯だ。


「あ、あの私は大丈夫ですよ?」

「だめだろ。すぐ出るよ」

 といっても気まずくて後ろもなかなか振り返ることができない。


「いっそ一緒に入りましょ?」

「そ、そういうわけには」

 後ろを振り返って右手を扉に手をかけようとしたとき、


「わ、私のこと嫌いじゃなかったら、一緒に入って欲しいなー、なんて」

 左手を掴まれながら言われた。


 アーニーは顔が真っ赤だ。


「え、う、うん……」

 観念して振り返った。

 前をタオルで隠して、ウリカも全身真っ赤になっていた。


 

 背中を流し合い、今は仲良く並んで湯船に浸かっている二人。

 それでもちょこんとアーニーの隣にいるウリカだった。


「本当ごめんな」

「気にしてないですから。ロジーネさんとエルゼが買い物いっている間に、風呂入ってしまおうと思って」

「イリーネ先生、こういう悪戯大好きなんだよ。よく振り回された……」

「誰も損はしない悪戯でいいじゃないですか」

「あー、うん……: 俺は得すぎて……」

「私も得ですよ?」

 顔を真っ赤にして無言になる二人。


「エルゼから聞きましたよ、アーニーさん」

「何を?」

「【使徒】にいったそうですね。ウリカもエルゼも指一本手出しはさせない。大切なものは独り占めする、って」

「――うん。言った」

「嬉しいです。エルゼなんて泣いてた」

「本音だよ」

 そしてまた二人は無言になる。


「私、大切にされているのに知らないことばっかり。たまには教えてください」

「隠してないよ」

「アーニーさんがくれたネックレス。守りたいって意味が込められているって、聞きました」

「ロジーネか。――そうだよ。そういう意味は込めた」

「教えてくれてもよかったのに」

「言い忘れた」

「もう!」

 ウリカは甘えるように拗ねた。


「――ロジーネさんがもう一つ、意味が込められていると言っていました。本人に訊け、と。教えてください」

「ロジーネ?! 何言っているんだ!」

「あるんですね?」

「……あるよ」

「教えてください」

「ここじゃ、俺が死ぬ」

 恥ずかしさで。アーニーの顔が今までにみたことがないぐらい真っ赤だ。


「教えてください」

 ウリカはひたむきな赤い瞳を向けてきた。その真摯な視線が、よりアーニーを口ごもらせる


「あとじゃだめか?」

「今聞きたいです」


 なおも口ごもるアーニーに、ウリカが抱きついてきた。柔らかい感触。密着して形の良い双球が潰れている。

 アーニーが固まる。


「……今聞きたい」

 耳元で囁く。


 甘い囁きに、アーニーも色々限界だった。


「――ガラス細工だけど、一つだけラピスラズリを混ぜてあるんだ」

「はい」

「それは、星を意味していて、あのネックレスだと北極星を意味するんだよ」

「はい」

 ぐっと肩に回された腕に力が入る。


「だから、その……贈った人に対して『貴女を見失いません』『どこにいても貴女の場所へ向かいます』みたいな意味が……あります……」

「私?」

 耳元に触れんばかりの近い距離で。

 言葉で言って欲しかった。


「ウリカだよ」

 その言葉を聞いて、ウリカは顔を移動させ、そっと唇を重ねる。

 そのまま脱力するように、体重を彼の体に預けた。


 アーニーがそっと肩に手を回す。


 恥ずかしくて顔を上げられないウリカだった。


「ウリカ。のぼせるぞ」

「誰のせいですか」

 軽口も力がない。


「それにさっきから俺との距離が……」

 零距離だ。


「……先あがりますね」

 恥ずかしさで死にそうになりながら、そそくさと風呂から出て行った。


 アーニーはそのまま湯船に口下まで沈んでいった。




「ウリカちゃん、あがったの? のぼせたのかな? 顔真っ赤だよー」

 風呂上がりのウリカが、今に入ったところにイリーネが声をかけてきた。

 幸いなことにエルゼとロジーネはまだ帰ってきてなかった。


「わかってるくせにー」

 今言える軽口はこれが限界だった。


「なんのことかなー? おねーさんわからなーい」

 朗らかに答えるイリーネ。


「……ありがとうございました」

 小声でウリカが礼を述べた。


 イリーネはニカっと笑っただけだった。


「落ち着くまで布団のなかに潜って膝を抱えて丸まってるといいよ」

「そうします」

 ふらふらと自室に戻るウリカ。


「ウリカちゃん可愛すぎ。アーネスト君にはもったいないねー。いつまでもあがらない双六してるんじゃないよ」

 良い気分で製図にも捗る。


 しばらく立つと、幽鬼のようなアーニーが後ろにいた。顔は赤い。

「アーネスト君。顔真っ赤だよ。上せた?」

「誰かさんのおかげでな!」

「なんのことかなー。あ、ウリカちゃんが風呂入っているのいい忘れたね。ごめんー」

 棒読みで先に謝られた。


 何か言おうとしたアーニーだったが、力なくため息をついた。こういう悪戯でイリーネに勝てたことはない。


「そういえばウリカちゃん、のぼせたから外の空気吸ってくるってー」

「そうか」

「エルゼちゃんたちが帰ってくるまで、あんた部屋で横になってきなよ。朝より疲れ果ててるよ」

「先生がそれをいうのか」

「なんのことかなー?」

「飯時になったら起こしてもらうよ」

 ふらふらと自室に戻るアーニー。


 それを見届け、さらに邪悪な笑顔を浮かべるイリーネ。


 猫のように小さく布団の中に丸まって寝ているウリカと、頭が働かないアーニー。二人が布団のなかで鉢合わせするのも時間の問題だった。

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