着せ替え衣装はガチャの華
あの激闘の日々から二週間。
タリルの大森林も冬景色になっていた。
冒険者も活動は停滞する。
今日は自宅で催し物が開かれていた。
そう。ルートボックスの衣装アイテムお披露目である。
ルートボックスに衣装は多い。夏は水着、それ以外は可愛い衣装が多い。男性用衣装もあるにはあるが、女性用衣装が圧倒的だ。
アーニーは逃げようと画策し、四天王と共に旅立とうとしたが、すでに彼らはクエストに旅立ったあとだった。
明らかに誰かが手を回した。
今日は自宅待機と厳命されている。
自宅には女性陣、そしてマレックのメイド部隊が揃っている。
使っていない部屋を衣装部屋と着替え室に改造した。
彼女たちは本気だった。
「アーニー様」
女性陣が揃っている時に、エルフメイドであるテレーゼが切り出したのだ。
「こんなお宝を眠らているというのは、実にもったいないです」
「しかし着る機会が……」
「なければ作ればいいのです! 素敵な女性がたくさんいるのに! 本当にもったいない!」
テレーゼの提案に飛びついた十代三人、ウリカ、エルゼ、ジャンヌである。
「ルートボックスの有効活用ですね。アーニー様」
「私、着てみたいなあ」
ジャンヌがアピールする。
「私は浮くからいいよ。三人で」
ポーラは遠慮した。
「絶対だめ。ポーラさんも」
「似合う服ないよー。丸顔ぽっちゃりだし」
「ありますのでご安心ください。エルフメイドの名に賭けてわたくしが保障します」
そしてポーラの参戦も決定し、今日を迎えたのだ。
男性陣でいるのはアーニーとマレック二人だけである。
『実は俺もいる』
「いるのかよ!」
『祖霊だからな。男性陣にはカウントしないでくれ』
「明らかに男だろう、あんた!」
『いやー。女性陣のルートボックスの衣装、大変楽しみです。出資者ですから』
「あんたの世界ベースの衣装も結構あるんだよな……」
『うむ。のんびり待つか。最近は凄いんだぞ。別の世界では格好変更で冒険者性能まで変わるんだからな』
「神々にそういう要素いれてもらうか……」
『危険だぞ。露出が激しい衣装になったり、ダメージを受けると鎧や服が破けたり……』
「なにそれこわい」
『そして欠けたリンゴと人造人間の審査が…… っとそろそろはじまるぞ!』
テレーゼが姿を現し、一礼する。今日の進行役を兼ねている。
「では私、ウリカから! とう!」
軽やかに部屋の奥から出てきたのはウリカだった。
クラシカルなピンストライプの上下、スカートの丈も長い。清楚な感じである。
「ほう、これはなかなか。魔法学園の生徒みたいだ」
マレックが実に満足げだ。
『スクール系みたいだな! いいわー。新鮮だー』
「うん、これはいいな。普段着にしてもいいんじゃないかな……」
露出も少なく、清楚だ。彼好みである。
「やっぱりアーニーさんは露骨な露出少ないほうが効くんですね! アドバイスありがとうございます!」
「誰だよアドバイスしたの」
『ククク。俺だ』
「おい!」
思わず虚空を睨み付けてしまった。
「わ、私は着慣れてないから少し恥ずかしいですね」
次にエルゼがでてくる。
姿は――凜とした黒が基調のクラシカルなデザインのワンピース。胸元にはジャボをつけている。
確かに普段着慣れない衣装だろう
「実に良いな。本当に実に我ら好みだ」
吸血鬼らしい感想のマレック。
「色っぽい。似合う」
素直にアーニーも褒め讃える。
『おお、銀髪ポニテゴスロリエルフ……属性さらに盛り盛り。 アメ村久しぶりにいきたくなった。原宿はもう俺には厳しいからなあ。似合うぞエルゼ』
どうやら祖霊は知っている口ぶりだ。アメ村なるものがどこかはアーニー達にはわからない。
『やはりこの世界はいい…… こっちの世界はゴスロリ系はめっきり減ってしまって。アメ村も減ったなあ。ゴシック要素なしな甘ロリ系が今主流なんだよな……」
「落ち着け祖霊」
旅立ちそうな祖霊にツッコミだけはいれておく。
「次は私ですね! 私は皆さんとちょっと違いますが!」
幅色のブラウンの帽子にジャケット、シャツ。ラフなデニムジーンズ。
短髪のジャンヌに良く似合っていた。ボーイッシュスタイルで決めている。
「なんとこれは…… 女性陣のアプローチが凄そうだな。いやよく映える」
マレックが微笑んだ。
「普段と別人に見えるな。うん。格好良い」
『現代風で攻めてきたな。別の意味で破壊力が高い』
最後のポーラはなかなかでてこない。
エルフメイドたちに背中を押されてでてきた。
「やっぱりやだー。私は…… マレックさんまでいるー!」
思わず顔を覆ってしまった。
彼女はミニハットに白を基調にしたフリルデザインのドレス。妖精をイメージしたようなデザインだ。
可愛い系丸顔のポーラにはよく似合ってる。
小型のステッキを持っているが、魔法攻撃力ありなのは内緒だ。
「いっそ殺してー」
悲鳴を上げるポーラ。
「ポーラさん似合ってます!」
「可愛いなーポーラさん」
「とてもお似合いです」
女性陣が真っ先に反応する。
「素敵ですぞ! ポーラ殿! テレーゼでかした」
興奮するマレック。
眼が><になるポーラ。
テレーゼはドヤ顔だった。
「これはポーラの母にもみせてやりたいぐらい、いいな」
「魔法喰らいたいの! アーニー!」
顔を真っ赤にしていやいやする。
「褒めているんだよ!」
『いいよね! 甘ロリもいいものだ!』
祖霊も喜んでいる。
「皆様、夜は長いですよ。何せ衣装だけはたくさんありますからね。あと二巡はさせていただきます」
テレーゼが告げる。
「私はもういいよね? ね?」
「ポーラ様にお似合いそうな服はまだまだありますよ」
「うわーん」
ポーラは奥に連行されてしまった。
「どれだけルートボックスを回しているんだ」
マレックが思わず聞いてしまった。
「四人五巡は間違いなくできるな」
アーニーが虚空をみつめながら答えた。
『それ以上できるよなあ』
祖霊もそれを認めた。
まだまだ終わりそうにない。
一番張り切っているのは、メイド部隊なのかもしれなかった。
リセマラが終わらない…… いやちゃんと書いてもいるんですけどね!




