建国の歓喜
マレックとセオドアが並んで、名も無い町の中央にいた。
時間は夕暮れ。だが、まだ明るい。
周囲に様々な亜人が集っている。町の総出といっていい。
「皆様に大事なお知らせがあります」
王子自ら壇上に立ち、宣言する。
「今日この日をもって、この町はマレック公国として、亜人の国として建国する!」
大歓声に包まれる。
口々に歓喜が漏れる。
その余韻が冷め切らぬころ、セオドアが片手を挙げた。
それを合図に、また静寂が支配する。皆がセオドアの言葉を待った。
「私とアーニーさんはかつて亜人戦争に参戦いたしました。かの一夜城、今でこそ皆様が真実と知っているはずです」
ドワーフが、エルフが涙する。
一夜城は彼らの町を守るために再び誕生したのだ。
「私達は貴族のために戦ったのではない。全ての種族の自由のために戦ったのです」
再び歓声が広間を占める。
皆が次の言葉を待つ。
「私は人間です。ですが、皆様と共に行生きます。力を貸してください。そして、この亜人の国マレック公国の国民として共に生きましょう!」
先ほどの劣らぬ大歓声が広場に響く。
「五年間は形上、グフィーネ王国の庇護下に入ります。五年後、我々は完全に独立国として主権を得ます。後日、各種族の長、そして独立の原動力となったアーネスト・アーリーを公国の貴族として、叙勲の儀を行いたいと思います」
さらに歓声が上がる。亜人の長たちが貴族になるという快挙。
そしてアーニーだ。彼が原動力になったことを疑う亜人はいないのだ。
エルフ族では、もうエルフになっているぐらいだ。
「ではマレック様。皆にお言葉を」
マレックと変わった。
再び沈黙が場を支配する。
この優しき吸血鬼公は、彼ら亜人を庇護し続けていたのだ。
「この日を迎えることができて嬉しく思う。ウリカの両親たちの努力が報われ、ここが村に過ぎぬ頃からいる者よ。我らの苦労が報われたのだ。誇るがいい」
エルフの一人が崩れ落ち号泣した。初老のドワーフがそっと肩を抱きしめ、お互い肩を抱き合わせる。戦争難民としてこの地に身を寄せていた二人だ。
それは苦労を重ねた、種族を超えた同士の抱擁。永い年月の慟哭だった。
マレックは優しい視線を送る。
「私は不死者だ。不死者の庇護のもと、生きることに抵抗があったものも多かろう。よく耐えてくれた。ようやく生者に返すことができる。私の役割も終焉したというということだ」
一部の者が蒼白になる。
マレックがいない名も無き町など考えることなどできない。
「待て。はやるな。私は、この町とウリカを命を賭して守ってくれたポーラ殿を妻とし、学び舎を作ろうと思う。私達は国民として、この国の未来を育むつもりだ。もちろん、セオドア公爵殿とアーネスト城伯の後見人も兼ねる」
安堵の声が方々から漏れる。
場にいたポーラはうつむいて顔を真っ赤にしていた。
「心外だったのは、マレック公国の名だが……」
方々から抗議の声があがる。もっとも相応しい国名という、意思表示だ。
彼がいなければ、町はとうに消えていただろう。
マレックは彼らの熱意を片手で挙げ、受け止めた。
「うむ。ありがとう。ではこれからも同じ国民として、マレック公国とその公王、セオドア公爵を支えようではないか!」
檄を飛ばし、広場に居る者たちがそれに応える。
今ここにマレック公国が誕生したのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます!
作中のセオドア君の台詞はポーランドの将軍かつ政治家、タデウシュ・コシチュシュコの言葉から。
「私達は貴族のためだけに戦うのではない。全民族の自由のために戦うのだ」
念のため記載しておきます。
今後ともよろしくお願いします!




