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第九話

「すごく今更なんだけどさ。」

「ん? どした?」

「召喚魔法ってどうやって使うの?」

「ほんっと今更だな。」


あきれたような言葉とは裏腹に面白そうな顔になったナオは、うーんと首をひねった。


「一応聞くけどあれだよな? 召喚するモンスターはどうやって調達するかとか、そういう話だよな?」

「うん。」

「ホームページ見ろよー、ったく。」


にやにやと笑いながら、ぽんっと音を立ててナオは一つの画面を表示した。

召喚魔法について、という項目が載っている。

公式ホームページかな。

ちゃんと説明してくれてるページがあるんだ。

でも、そのページを出して、読んどけ、では終わらないのがナオで。


「召喚はな、大きく分けて二つ方法がある。」

「うん。」

「一つは召喚魔法を使う方法。」

「え。ちょっと待って。」

「何だ?」

「どうやって召喚する相手を探すか、が二つあるんじゃないの? 召喚魔法以外にも召喚する方法があるの?」

「どっちから説明してほしい?」

「分かりやすい順番で。」

「了解。」


ナオは軽く画面を何度か突っついた。

召喚魔法についての詳しいページが開かれる。


「じゃあ召喚魔法の方からな。召喚魔法のスキルをセットして、MPを使って召喚する。」

「うん。」

「召喚するモンスターは、ほとんどがフィールドでエンカウントしたモンスターだ。」

「戦闘区域で出会ったってことだよね。」

「そう。倒したときにたまに仲間にするイベントが起こることがある。」

「その時に仲間にするを選んだらいいんだね。」

「あぁ。他にも戦う前に餌とかおもちゃとかをあげたら仲間になってくれる場合もある。」

「そんなのあるの。」

「ただそういうモンスター自体少ないし、確率も低い上に、弱いモンスターがほとんどらしいけどな。」

「そうなんだ。」

「次がクエストリワードだな。」

「クエストの報酬?」

「おう。詳しい説明はまぁいいだろ?」

「うん、だいたいわかる。」


クエストの展開上助けたモンスターが仲間になるとか、そういう感じだと思う。


「じゃあ省略な。次はなんか、珍しいモンスターの場合、それ専用のイベントが起こることがある。」

「イベント?」

「非公式クエストって呼ばれる奴だな。」

「非公式クエスト。」

「何かアイテムもってるとか、特定の人と話すとか、特定の日時が関係するとか、何かがきっかけになって起こるイベントだ。」

「ふぅん……?」

「とはいえ掲示板とかに載ってるわけじゃねぇし、クエストマークもでねぇから、情報は少ないな。まぁチャンスがあったら、だ。」

「わかった。」

「あとはイベント報酬だな。」

「……さっきのとは違う?」

「あー、言い方が悪かった。運営の方で設定された、例えばバトルロイヤルとかのイベントが開催されたとして、優勝者報酬でもらえるとかそういうやつ。」

「なるほど。レアだね。」

「レアだ。」


うんうん、と二人でうなずき合う。

まだ先にはなるだろうけれど、実際にそういうイベントが起こることは確実だろうってナオは言う。

他のゲームでも大規模なイベントは起こるものらしいし、何より開発者の息子が言うんだからそうなんだろう。

まぁとはいえその報酬がモンスターになるかアイテムになるかスキルになるかはたまた全く別のものになるかはわからないけど。


「で、今わかる情報では最後、店で買う。」

「……店で買う。」


なんか予想外の言葉。

店で買う……?

ペットショップみたいなのがあるってこと、かな。


「この層にはまだないけど、しばらくすると一階層に一つ卵屋ができるらしい。」

「たまごや……」

「店で買うって言っても、買えるのはモンスターが生まれる卵なんだ。何が生まれるかのリストはあるけど、実際は運だな。」

「いわゆるガチャってやつだね。」

「そういうやつだ。で、召喚魔法を使わない方法なんだが。」

「うん。」

「店で買う。」

「……うん。」


さっきもきいたセリフだけども。

さっきとはまた違う衝撃というか、その。


「買えるの?」

「一人につき一体まで、MP消費はない代わりに常時出しっぱなし。戦闘能力・補助能力共に低め。」

「……うーん?」

「いわば愛玩動物だな。スキルじゃないから、攻略に有効なものじゃなくて、プレイヤーの娯楽というか。」

「なるほど?」

「ちなみに、スキル持ってるやつもそれとは別に一体はこの枠で管理できる。」

「へぇ、それはいいね。MPなくなっても一体は出しておけるんだ。」

「戦闘の補助にはならないけどな。」

「頑張ろうって思えるかもしれないよ。」

「そういう効果もあるか。ちなみに、一体持ってて新しく卵を買う場合、買った時点で前のモンスターとは別れることになる。」

「一体しか持てないから……。お別れは悲しいね。」

「あぁ、しかも、前の方がよかったって思っても戻れないからな。」

「そっか、生まれた時、じゃなくて、買ったときだから、どっちが良かったって選べないんだ。」

「そういうこと。ま、お前は愛着持っちまってお別れできないタイプだから関係ない話だろうけどな。」


それは、そうだと思う。

自分の都合で仲間にしておいて、それで自分の都合でお別れなんて。

たとえそれがプログラムされた、本当は心のないポリゴンの塊……いや、脳に送られる信号に過ぎないのだとしても。

あ、でも、お別れっていえば。


「……あのさ、もしモンスターが倒されちゃった場合は?」

「召喚魔法を使って呼び出してる場合は、再召喚までのクールタイムが長いペナルティがつく。」

「だけ?」

「だけ。出しっぱなしのやつはー……なんだっけ、たしかアイテムが必要だった気がするけど、倒されたからお別れってことにはならなかったと思うぜ。」

「それは良かった。」


自分の力不足で死別ってすごく悲しい。

出しっぱなしなら、危なくなったから一回戻ってろって逃がすこともできないし。


「ま、とりあえずスキル入れとけば? ないとは思うけどイベント起こるかもしれないし。」

「非公式クエスト?」

「そうそう。ま、一応。どっちにしろいつかとるなら、早い方が熟練度も上がるだろ。」

「う、ん。わかった。」


ナオのいう通り、いつかは入れるものだし。

それに、いざ仲間にしたいモンスターがいた時に、スキルをもってなかったら残念どころの話じゃないだろうし。

ナオに見守られながら、空の箱みたいなスキルスロットに召喚魔法を入れる。

これで所持スキルは片手直長剣と召喚魔法、空いてるスロットは残り一つ。

あと一つに何を入れるかは後々考えることにして。


「じゃ、行くか。討伐クエ。」

「うん。今日も索敵、お願いします。」

「おう、任せとけ。」





それから数時間後。

三十分早く入っていたナオがログアウトしないといけない時間。


「俺そろそろ出るけど、クオンはどうする?」

「えー、と……」

「お使いクエストするんだったよな? ちょっとガイドしとこうか?」

「夜食は机の上にあるし、布団はいつもの所にあるし、」

「おいクオン、オレのガイドはいいって。」

「え?」

「お前変に心配性なんだよ。お前の家のどこに何があるとか全部知ってっから、三十分ぐらい余裕だって。」

「スープとサンドイッチあるから。」

「楽しみにしてるな。あー、もう時間ねぇや、ログアウトするわ。クエストは掲示板で。」

「ん、ありがとう。先に寝ててもいいからね。」

「おう。」


じゃ、と一言言い残して、ナオの姿が掻き消えた。

ばいばい、と降った手を数度振り続けて、降ろす。

一人っきりのゲームの世界。

ナオと待ち合わせしてて落ち合うまでの数分、とかなら経験はあるけど。

でもさすがに、ずっと一緒に行動できるとは限らないわけだし。


「お使いクエストくらい、自力でクリアしないとダメだよね。」


よし。

掲示板を見上げる。

今あるお使いクエストは全部で三つ。

時間も遅いから少ないのかもしれない。

とりあえず一つ受けて挑戦してみる。

町のお店に入荷してる商品をおうちまで届けてほしい、ってやつ。

お店の場所も届ける先の家もちゃんと場所が書いてあるから、迷って時間がかがかることは有り得るかもしれないけどクリアできないってことはないだろうし。


と、最初っから苦戦する前提で始めたクエストは予想外にも数分で終わってしまって、残り二つのお使いもあっという間だった。

最後のどこかに忘れてきたらしい荷物を探して届けてほしい、というのは少し迷子になりかけたけど。

残った時間はどうしようか。

ログアウトしてもいいけど……。

ちょっとフィールドに出てみようかな。

索敵は持ってないけど、少しくらいなら一人でも戦えるだろうし。

……剣さえちゃんと抜いていれば。


そんなわけでやってきた、東の森。

数も少なくて一体一体が強くない程度の赤い犬を十分ほどやっつける。

あと十分くらいでログアウトしないといけない。

町へ戻ってログアウトしないとアバターがやられちゃうんだっけ。

忘れそうだし、もう帰ってログアウトしようかなぁ。


「あのぅ……今、お時間よろしいですか……?」


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