第二十九話
「お前は結構幸運に恵まれてるというか勘が冴えわたるというか、まぁよくやった。」
「ありがとう。」
「すごいっすね……。」
階段を前にとりあえずナオに連絡してみたら、飛んできてこのセリフ。
ちょっと話した結果、一階ごとを丁寧に探索していくより、見つけちゃった階段はさっさか登っていくことに決まった。
地図は後でも作れるし、せっかくだから、ということで。
同じモンスターは一階ずつでしか出ないってことはないだろうし、検証は登りながらでもできるだろう、とナオは言っていた。
もし出てくるものが変わるようなら、それはその時考えることにして。
見つけた階段を登りたくなるのは、仕方ないと思うんだ。
狭い階段を三人並んで登る。
先頭を上がっていったナオがちらりと周りを見て、手招きする。
アマレットさんも二階に到着したところで見たところ、階段をあがった先は小部屋みたいになってるみたい。
下は唐突に階段が現れたけど、上は小部屋なんだ……?
「上がってすぐの部屋のモンスターが来づらい設定になってるんだと。」
「そうなの?」
「一応オレもさっき索敵したけど、上がった瞬間に襲われたりしないために、ってことらしい。」
「優しいダンジョンっすね。」
「まぁまだ一層だし、この先変わっていく可能性はあるぞ。今でも出にくいってだけで出ないわけじゃないからな。」
そのころまでには索敵スキルをとっとかないとなぁ。
熟練度上げる必要もあるんだし、いつまでもナオやハクに頼ってはいられない。
ナオとはいつでも一緒にプレイできるわけじゃないし、ハクは俺の召喚もンスタ―ではあっても、神様から託されたモンスターだから、なんか、頼りっぱなしは気が引ける。
「さて、じゃあどうする? さっきと一緒でいいか?」
「組みわけのこと? いいよ。」
「私もそれで大丈夫です! クオン兄さんは、一人で平気っすか?」
「うん。ハクと小夜もいるし、問題ないよ。」
「驚けアマレット。クオンはこのタワーに入ってからダメージを一たりとも受けてねぇ。」
「えっ」
「そうだっけ?」
というかナオは何で俺の体力を逐一把握してるんだろう。
別に俺だって体力が減ったら回復薬飲むとかじっとして回復を待つぐらいできるんだけどな。
「よし、じゃあ行くか。クオン、階段見つけたらメッセージ飛ばしてくれ。」
「わかった。」
「クオン兄さんが見つけるって決まってるみたいっすけど、なんかそれはそれで納得っす……。」
「あいつは昔からああいう勘は働くからなぁ。本人に見つけようって意思が全然ないところがそれっぽいだろ。」
「確かに。」
後ろの方へ歩いてく二人が好き勝手なことを言ってるけど、俺別にそんな能力もってない……。
と、言いたかったんだけど、適当に歩いてスライムと毛玉をポリゴン片へ変えていたら、気付くと目の前には階段があって。
……これは……連絡したらしたで何か言われるかな……。
まぁいいか……みつけちゃったものは見つけちゃったんだし。
ちなみにだけど、毛玉は一階にでてきたのと変わらないみたいだった。
原っぱの毛玉よりも一回りくらい大きくて、牙が生えている。
そしてなんとスライムは、魔法を使ってきた。
真っ黒でつぶらな瞳で俺をじっと見つめること数秒。
なんだか嫌な予感がして一歩下がった瞬間、俺がいたところにぼっと火が灯ったときはびっくりした。
スライム青いから火魔法使うとは思ってなかった。
その後相手にしたスライムの数は決して多くはないけど、使う魔法は火魔法だけじゃないみたい。
見た目通り水魔法を使ってくるスライムもいたし、風や土や草やいろいろだ。
どれもじっと俺を見つめたあとに魔法を使ってたから、その見つめるって言うのが鍵になってるんだろうなぁ。
俺も見つめるだけで魔法使えたらいいのに。
とかいうことを、やってきたナオとアマレットさんに話す。
スライムの魔法のことは二人も気づいてたみたいで、見つめられた瞬間に移動して魔法を回避してたらしい。
率先して目をつぶしにかかる狐さんと猫さんがいるうちとは違うね。
スプライトだもん、素早さを生かさないとだ。
三階も二階と同じように上がった先は小部屋になっていて、気軽に登って行ったナオがひょいひょいと手招きするのについてあがる。
そしてまた同じように組み分けして、別々の方向へ歩いていく。
正直俺は全然戦ってないんだけど……。
ハクと小夜が前に戦ってくれてるし、そもそもモンスターの数も多くないし。
これじゃダメージ受けなくても当然だと思うんだよね。
っと……あれ。
「これは……蟹……なのかな……。」
ふと気づけば、ハクと小夜が襲い掛かっているのが蟹に変わっていた。
でも上がってきてすぐは毛玉とスライムだったんだけど……おかしいな。
一応後ろを振り向いて確認してみるけど、出合い頭にモンスターをポリゴンに変えていく二匹のおかげで影も形もない。
ある程度時間が経てばまた湧いてくるらしいけど、この短時間では無理みたいだ。
そうこう考えている間にもハクたちは蟹を倒して、貝の攻撃に取り掛かっている。
……たしか、行ってないけど西の方には蟹とか貝とかが出るんだっけ。
一階と二階、三階の一部には毛玉とスライムだから、南の原っぱのモンスターに似たやつが出てきて、三階の途中からは西の泉……。
となると。
「タワーは十階までって言ってたから、四分の一ずつそれぞれのフィールドのモンスターが出るってことかな。」
「オレもそう思ったとこだ。」
「うわっ、いきなり現れないでよ。」
「お前を驚かせるのがオレのゲーム内の一番の楽しみだ。」
「そんな楽しみ方しないでほしい。」
「師匠は足音が立たなくてすごいっす。」
「まぁリアルだと背後なんか絶対取れないけどな。」
「それで、何かあったの?」
「いや、なんかたまたま近くにいたっぽいから驚かせに来ただけ。」
しれっと大変迷惑なことを言われたような気がします。
まぁ、いいや。
ビックリしたけどそれ以上の害はないし。
「それはそうと、やっぱりお前も四分の一ずつだと思うか?」
「思う。」
「じゃあ早いとこ六階あがって検証しないとな。」
「西にも一回くらい行っとけば良かったね。」
「まぁそれは後でもできるからな。タワーのほうの情報を先に集めとくってことでいいだろ。」
「うん、そうだね。」
途中できょとんと首をかしげていたアマレットさんは、ハクと小夜と一緒に近くのモンスターを切り倒して時間をつぶしてくれてるみたい。
ごめんね、いつもいつも二人で話してばっかりで。
あと、今更だけどちゃんとソードスキル出せるようになっててよかった。
アマレットさんはだいたいナオと組んでるから、あんまり戦ってるところ見ないんだよね。
俺に関してはそもそも戦ってすらないけどね。
「じゃあクオン、階段よろしく。」
「よろしくされてどうにかなるものじゃないと思うけど、頑張るよ。」
「応援してるっす!」
「代わりに見つけてくれてもいいんだよ?」
「期待はしないでくださいっす!」
俺だって期待されても困る……。
けどまぁ、仕方ないし、頑張るとしますかね。
……。
うん、まぁ、予定調和ってやつ、と、いうことにしておこうよ。
「流石っすね。」
「四階行きの階段もこの調子で頼むぜ。」
「……がんばります。」
頑張りますとは言っても俺がどうこうできるものではない……はず、なんだけど。
というか前を歩いてるのはハクと小夜なんだから、見つけてるのは二匹だと思うんだけど。
まぁつまり何が言いたいかというと、その後も階段はすぐに姿を現し続け、俺たちは今六階にいるということです。
そして目の前に階段があるという事です。
「確か……」
「あぁ、トップでも六階までしか攻略されてないはずだな。」
「つまり……」
「おう、攻略トップ組に仲間入りできる……つーか最前線だな。」
はははは、と明るく笑うナオは、どこまで本気で笑ってるのやら。
まぁ俺達みたいに公開しないで先に進んでるやつらもいるだろうけど、と言いながら、ナオはすたすたと階段を上がっていく。
ちなみにだけど、六階から出てくるモンスターは予想通り、赤い犬と紺色の狼になっていた。
多分八階の後半からはコウモリと黒猫さんが出るんだろうなぁ。
……とすると、どうせ猫さんと契約するつもりなら森じゃなくてタワーの猫さんとしたほうが強いのかな。
俺は小夜と別れるつもりなんてさらっさらないから関係ないけど。
でも、この先誰かと契約したいと思ったら、少しは考えたほうがいいのかもしれないなぁ。
とはいえ誰かを仲間外れにするのは嫌だから、同時に召喚できる分しか契約するつもりはないけど。
「あ、やべ、連続ログイン時間の制限そろそろなの忘れてた。」
「えっ」
「あ、あぁ! 本当っす! どうしましょう!?」
「帰るぞ!」
小屋で唐突に動きを止めたナオが、踵を返した。
階段を駆け下りていくのを、というか飛び下りていくのを、慌てて追いかける。
先導するナオはさすがスプライト、地図を常時確認しているのか完全に地形が頭に入っているのか、迷う素振りもなくすごいスピードで洞窟を引き返していく。
アマレットさんも速度を求めるプレイヤーらしく、当たり前のようにナオについていくけど、つまりピンチなのは俺だ。
ハクと小夜は戻ってもらった。
真面目に飛ばないと足手まといになる。
ナオが俺を置いていくことはまずないと思うけど、俺のせいでログアウトが間に合わないのは嫌だ。
でもそれでハクや小夜に怖い思いをさせたり、万が一落としちゃったりして痛い思いさせたりするのも嫌だ。
それなら最初から戻ってもらってた方がいい。
結局ナオが一度も道に迷ったりしなかったのと、三人とも決して遅くはなかったことが幸いして、強制ログアウト時間をむかえる前には町に戻ることができた。
「ジェットコースターしてもらったのの次にいい特訓になった気がするっす……!」
「俺ももうちょっとagi振ったほうがいいかなぁ……。」
「今度からタイマーかけとくことにしよう……それか安全地帯を真っ先に確認するようにする……。」
それぞれ感想や決意を口にしながら、ステータス画面を呼び出す。
警告まであと数分。
連休はまだ終わってない。
次も一緒にプレイしよう、と約束して、俺たちはゲームの世界を離脱した。
かきためが、なくなりました。
来週は出せるかどうかわかりません。
書けたら、書きます。




