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第二十四話「ボロキアという街」

私のボロキアでの、偵察活動も1週間が経とうとしていた。

この1週間というものの、なぜか腐肉漁の面々とクエストを受けていた。

彼らの戦いぶり・・というよりゲスっぷりは清々しいほどであり、騎士としての私にとっては耐え難い日々であったと言わざるおえない。


と言うのも、腐肉漁りどもは魔獣討伐であれば、身体中にすり潰したトリカブトを塗りたくり、木の上に潜みつづけ、お目当ての魔獣がナワバリ争いを始めるまで待ち伏せる。その仕掛けとしてわざと、縄張りの境界線付近に、血の滴る獲物を置いて抗争を誘発させるのだ。


そして弱ったところを、ズバッと襲いかかる。私も、毒魔法で援護した。

その結果、汗ひとつかかずクエスト達成である。


なんと恥知らずな蛮行であろうか。騎士道において、不意討ちは卑怯者の行いである。

騎士ならば正々堂々と・・・


そんな私の叫びは届くはずもなく、闇討ち、不意打ち、ほぼ詐欺、毒殺。何でもござれのオンパレード。

しかも、表面上はギルドからの依頼の為に合法スレスレ。


彼らは、いかに自分たちが楽をして稼ぐかに心血を注いでいる。


私が行動を彼らと共にしている理由は、単独の赤狼級冒険者が目立ちすぎる為だった。赤狼級ともなると、周りはパーティーを組んでいるものばかりで、単独行動の私は否応なく勧誘などの色目を使われてしまう。


そのため、ある程度為人を知っている彼女達と、目立たない為に行動をともにしていたのだが今では、、、



「ねぇ、何か臭くない??」


「え、あーほんとだ〜何か腐った匂いがする〜誰か窓開けてちょうだい!!」


「あいつらだよな。最近俺たちの、獲物を掠め取ってるっていう卑怯者は」


「あぁ、あいつら今度森で見かけたら殺す。こっちは、重症負った仲間までいたのに、最後に全て掠め取られたんだ。」



・・あぁ、なぜ悪目立ちしているんだ!!!


シラは、冒険者ギルドの丸テーブルに肘をついて頭を抱えていた。


「お〜シラッチどうした〜??」


「ほっといてやれよ。俺たちが、いつも受ける視線に慣れてないだけだ。」


「同意・・、シラ気にする事ない。最後に笑えばいいの。」


「笑い方がゲスなのよ〜」


「「「「ディヒヒひひひひひ」」」」


シラを除いた、腐肉漁り達はゲスな笑みを浮かべながらクエスト報酬の金貨を、アヘアヘしていた。


シラはその背中に痛いほどの怒りや殺意が刺さってくるのを感じていた。


彼女は、この1週間で集めた情報の詳細を一冊の手記に記していた。その日の終わりに必ず書き込むのが彼女の習慣である。


そして今日も、起きた出来事や情報を蝋燭の火に揺られながら、手記に記していた。


「開拓したばかりの土地だから、大した情報はないとたかを括っていたが気付けば七日も滞在してしまった。」


シーラは、湯上がりということもあり豊かな黒髪をおろしていた。彼女の寝巻きは肌が透けるほど薄いシルクの肌着で、豊かな胸に羽衣が引っ掛かっているようである。白い健康的な肌は、日頃の鍛錬によって鍛え上げられた代謝によって赤みを帯びていた。


「大きな偵察成果としては、三つある。一つはフレイム・ロックウェルという男は愚か者では無い。二つ、軍備の充実度が凄まじい。三つ、良い人材が揃っている。と言ったところだな。」


ロックウェル卿は、噂とは違い統治者として優秀な能力を持っている事は、認めざるおえないところだ。

この短期間で、魔獣ひしめくボロキアを開拓し、優秀な人材を抱え、すでに村人もそれなりに誘致している手腕には舌を巻く。

それに加えて、軍備の充実度には目を見張るものがあった。まず鋼の質が、私でもそうそうお目にかかれない程高品質であった事。そして極め付けは、魔獣の革鎧を配下にきさせている所だ。

魔獣の皮は、鋼では決して突き破れない代物だ。その為加工するには、貴重なレリック鉱石が多量に必要で金は、湯水の如く製作のために消えてしまう。その為、実用品では無いのが常識だ。


にも関わらず、この開拓地ではべらぼうではあるものの金を出せば、最高の革鎧が手に入ってしまうのだ。もしこの革鎧が帝都で売られれば即座に、皇帝陛下の宝物庫行きとなるだろう。

ここは、第一皇子アージハルト殿下の封地だから、問題ないのだろうか。これほどの軍備を一貴族が独占していいものではない。


そして、ロックウェル卿配下の従士の有能振りは、目を見張るものだった。

まず、魔術研究所、鍛冶場、衛兵、メイド、これらの役職につく従士は、主家の品位の高さを伺い知るのに最適なもの達だ。

魔術研究所では、さまざまな用途で助けになるゴーレム達が村の発展に貢献していた。これは恐るべき労力であり、軍事力でもある。魔石さえあれば疲れ知らずのゴーレムは、戦時には工兵や兵站を担い、平時には作物を育てる為の土壌を切り開く。


鍛冶場では、多種族を嫌うあのドワーフが、素晴らしい鋼の剣を鍛えているのだ。実際に私も手に取ってみたが、皇帝陛下の近衛騎士でも装備していない高品質なものばかりだった。偵察という任務が無ければ、私も買いたい所だ。

しかも、それをロックウェル卿の騎士は腰に佩いていたし、衛兵までもが装備していた。

そして、当然冒険者達も大枚叩いて購入していた。


あれほどの剣と、騎士を抱えているからこそ、名門メルボー家に一騎打ちを望む事も得心がいった。

ここで鍛えられる鋼の剣は、鈍が相手ではどうしようも無いほどの逸品だ。

メルボー家の剣もそう思われたに違いない。


確かに、稽古で使っている剣ではどうしようも無いだろう。しかし、私の愛剣はかつてのメルボー騎士国の宝剣。そう簡単に遅れは取らない。問題は、魔獣の革鎧だ。真面に斬りつけては、傷一つ付かない。対策は必要か・・・。


ふっ、いけない、いけない。私としたことが、直ぐに決闘の事に夢中になってしまう。


私の騎士道には反するが、この偵察は大いに成果があったと言える。


「明日、森を探索した後帰るとしよう。」


彼女は、羽ペンを机に置き、蝋燭の火を消し、手記を胸元に挟むと、身体をベッドに放り出し、すぐにすやすやと寝息を書き始めた。


彼女の部屋の窓にぶら下がっていたコウモリが、静かに飛び立った事には気付けなかったようだ。





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